ガエル記

散策

『アリスとシェエラザード』諸星大二郎 その2

ネタバレします。

 

第3話「眼球泥棒」

「人探し」を家業とするアリスとシェエラザードの元へタイラー夫妻が訪れる。

今回の「探しもの」は妻オリビアの眼球であった。

犯人は眼科医のモートンだと判っているという。

 

ある時、知人から良い目薬だと言われて点したオリビアは翌日から目が痛みだし眼科医のモートン氏の診察を受ける。

モートンはジョージ・タイラーの学生時代からの友人だったのだがオリビアの目を見て「美しい。あなたの目はどんな宝石よりも」と言って痛み止めを与えた。

気を失ったオリビアが目覚めた時、両眼には包帯が巻かれ往診するので良いというまでは取ってはいけないと言われたのである。

だがモートンはやって来ず、心配になったオリビアが包帯を取ったところ両眼が無くなっていたというのだ。

アリスが「モートン先生はなぜそんなことをしたのでしょう」と尋ねるとオリビアは答えた。

「でも私の眼をモートン先生が持っているのは確かなのです。時々見えますから」

 

驚いたことにオリビアの眼球に映し出されたものを彼女は感知できるのだ。

そしてアリスは手をつなぐことによってオリビアが感じている景色を読み取ることができた。

周囲の風景と時折モートンがオリビアの眼球を覗き込んで話しかけることで唇の動きで言葉が読めた。

こうしてアリスたちはモートンの居場所へと向かう。

 

アリスとシェエラザードそしてタイラー夫妻はスコットランドグラスゴーへと向かう。

そしてアリスとシェエラザードはふたりでモートンの故郷の実家に乗り込む。

が、不思議なことにふたりがモートンと戦うことになった時すでにオリビアの眼は持ち主の元へ戻っていたのだ。

それはモートンが彼の母の肖像画を見て「母の眼は美しい」と言った時だった。

リビアの眼はモートンがその眼の美しさを絶賛している間彼と共にあったが「母の眼」に心を移した時眼球は失望したのであった。

 

日本人が創作する西洋舞台のホラーは眼球にまつわるものが多い気がする。

やはりあの眼の美しさには驚いてしまうのだ。

 

第4話「海から来た男」

交霊術を行うことで有名なミセス・アーバンはアリスの親しい叔母なのだが今回彼女はアリスとシェエラザードを呼んである人物を呼び出そうとしていた。

何も知らされず叔母の家を訪れたアリスたちはその話を聞かされて呆れるがまんまと利用される運びとなる。

叔母とその友人たちが確かめたいその人物は海から来たらしく潮の香を漂わせ船長の風格を持っていた。

そしてごぼごぼと水の中で話しているような声を発しわずかに「メアリー」という言葉が聞こえたのだ。

ここでアリスの出番となる。

アリスは意識を集中し船長の後を追う。

船長の持ち物らしい船に上がりそこでの惨劇を目の当たりにする。

 

この船は有名な「メアリーセレステ号」であった。

事件は1872年のものなので本作舞台のおよそ百年以上前のことである。

 

本作にはコナン・ドイルも交霊会に参加しておりこの後小説として発表する予定となる。

 

第5話「首を探す幽霊」

叔母から勧められクーネル伯爵の大きな城チューリング城を訪れたアリスとシェエラザード

そこには夜ごと首のない鎧の男の霊が出るという。

おかしいことに誰もその霊を怖がっていないのだがその霊が出るたびに真夜中大きな鎖を引きずる音がうるさくて眠れないというのが伯爵の悩みの種だった。

どうにかしてその霊が鎖を引きずるのを止めさせたいという。(出てもいいから)

 

アリスとシェエラザードは幽霊が何故鎖を引きずりながら真夜中歩き回るのかを探り出す。

それは自分の首を捜すためだった。

のだが、その時分の首というのは自分が引きずっている鎖の端に付けられた鳥かごの中にあったのだ。

つまり自分の首を引きずりながら探していたわけだ。

アリスたち、というか今回はシェエラザードが鎧男の霊に探す自分の首を教えてあげた。

これでもう真夜中の騒音はなくなるだろう。

 

第6話「紅玉(ルビー)の首飾りの女」

引き続きクーネル伯爵チューリング城に滞在中のアリスとシェエラザード

アリスは恐ろしい夢を見た。

それは紅玉の首飾りをしている美しい女性の夢だった。

 

ふたり(特にシェエラザード?)に近寄ろうとしているグーリン博士は城を案内し前話にも登場した”血の籠”公爵の肖像画を見せかつてこの公爵が夢中になったマルガリータという女性の話をする。

公爵はマルガリータを大きな籠に閉じ込め眺めては愛人になることを強要したが言うことを聞かないため籠を小さくしていき最後には首を斬って小さい籠に入れたのであった、という。

 

これを聞いていた伯爵の息子であるジェラード子爵が「その女性がつけていた紅玉の首飾りが城のどこかにあるはずだ」と言いだしアリスにそのルビーの首飾りを探してほしいと頼む。

アリスは捜索に協力したものの見つけ出したマルガリータの柩の遺体には何もつけられていなかった。

が、アリスは紅玉の首飾りの謎を解く。

そして手をつなぎジェラード子爵とグーリン博士にもその証拠を見せてやった。

マルガリータの幽霊には斬り落とされた時にあふれ出た赤い血の塊が首回りを飾っていたのである。

 

話はここで終わらずアリスは再び夢を見る。

マルガリータを殺した公爵が狩りをしている。

その時、鳥かごに入れた彼女の首から翼が生え公爵を追いかけている、という夢だった。

翼のある顔、という諸星大二郎お気に入りのイメージである。