
ネタバレします。
第7話「椅子になった男」
「椅子になった男」が美女に座ってもらって喜びを得る、という展開は淫靡な江戸川乱歩だけどそもそも椅子になった理由がガミガミと煩いお母さんから逃れるため、という殺伐とした理由なのは諸星流というべきか。
そのうえ息子だけじゃなく家人が皆何かになってしまうという。
「椅子になった男」じゃなく「家具になった一家」というべきか。
第8話「スピード大好き!」
ホームズシリーズでも「美しき自転車乗り」(翻訳の違いはあれど)という一篇があった。
タイトルに示されるように(翻訳によって意味は違うらしいが)若き女性が自転車に乗って家庭教師の仕事に就く物語である。
その若々しい姿は当時の男性たちの眼を惹いたであろう。
本作でもアリスとシェエラザードが自転車に乗っていると冷やかしの声をかける男性と眉を顰める女性たちが登場してくる。
ところがさすが諸星マンガはそれだけにとどまらず目の前を女性の下着姿の下半身だけの幽霊(?)が自転車に乗っていくのだ。
ところでこの作品を諸星氏が描いたのは当時の自転車が現在とあまり変わらないものが存在したためではないのだろうか。
というか私だけが知らなかったのかもしれないが19世紀末の自転車といえばペニー・ファージングしかないように思えていたのがほんの数年後にはローバーという形的には今とほぼ変わらないものがあったのだ。(乗り心地はちがうだろうが)
本作ではある夫妻の娘が自転車に乗りたくてたまらないが禁止されてしまったために下着姿の下半身だけが自転車に乗って走り出すという不可思議な出来事が起きてしまう。
(つまり当時はズボンをはくのもいかがわしいものだったので娘はドレスを着用していた。それが下半身だけ走ることになれば下着着用ということになる)
これを知ったアリスとシェエラザードは自転車をこぐ娘の下半身を捕まえるために最初はローバーでさらにはシェエラザードがもっと早く走れるペニー・ファージングを乗りこなして捕まえたのであった。
そして捕まえた途端足は娘のもとに戻ったのである。(生霊だから)
「あとがき」
諸星大二郎氏によって『アリスとシェエラザード』の誕生秘話が語られる。
最初は「悪趣味クラブ」という変態シリーズをやろうかと思ったらしいのですが趣味の好い諸星氏には悪趣味がそれほど思いつかずこのふたりの正義派シリーズになったらしい。
ほんとうによかった。
ファンならば英国版「栞と紙魚子」と思える本シリーズ。
年齢も青年域になったせいもあり大人の話もできるようになった。
なんといっても19世紀末英国の面白さ、大好きなのだ。