ガエル記

散策

『海神記』諸星大二郎 その3

2巻に入る。

 

 

ネタバレします。

 

 

「筒之男之巻」

 

四世紀古代日本

海底火山の爆発、津波、不漁、さらに南方の凶暴な隼人族の北上

次々と起こる災害に多くの海人たちが海を追われ北へと移動していった。

 

そこに登場した巫女オオタラシと海から来た謎の海童ミケツは急速に海人たちの心を捕らえバラバラだった海人たちを集結させ、彼らはオオタラシとミケツが言う「常世」を目指した。

津波で村を失った磯良はいつしかそのうねりに飲み込まれていく。

 

大陸との交易で勢力を持つ航海海人・息長がミケツのバックにつくと大部族安曇も傘下に入り、百済の亡命将軍もこれらと結んだ。

 

ところで「四世紀」といえば中国では三国志はとっくに終わり次の晋も過ぎて五胡十六国時代という戦乱の時代だ。

三国志よりも百年後の日本はまだこのような古代な感じだったのだなと感慨深い。

 

 

第1章 神懸かり

 

奴の国ー奴ノ津

 

オオタラシ・ミケツ率いる人々の群れは膨れ上がり行く先々で地元民との小競り合いを引き起こしてしまうのがオオタラシの悩みであった。

さらに幼い海童ミケツは百済の亡命将軍の大きな船に興味を持ちミケツに好意を持つ将軍はミケツを船に誘い愛らしい子犬で喜ばせる。

オオタラシはその様子にも心が騒ぐのだ。

磯良は今はもうミケツの舵取りとして仲間になっていた。

 

一巻でミケツは男児とも女児ともつかぬように描かれていたように思う。

それが二巻の最初あたりで自分を「ぼく」と称し息長の剣に興味を示して「男の子はそうでなくては」と言われているところから男児であると明示されたということだろう。(短いひらひらのスカート的な衣服しか着ていないので男児女児はすぐわかるはずだ)

しかしこの会話の時、神懸かりをしていたオオタラシはミケツに気を取られてしまう。

が、オオタラシが神より伝えた言葉は絶対であった。

オオタラシは海人たちへ筒之男の和魂を御船の鎮とし荒魂を御船の先鋒として東へ進めと告げた。

 

その磯良のかつての仲間のひとり浜子は流されて小島へたどり着いていた。

 

 

第2章 東進

亡命将軍、息長らは新しい奴国王を定める話し合いをする。

 

戦が始まる。

百済将軍木羅の圧倒的な強さが際立つ。

 

ワニ(鮫)に食われず小島にたどり着いた浜子はその島にひとり住む少女トヨに出会う。

島は潮満球といった。

トヨは自分の魂を空に飛ばすことができた。

 

 

2・3巻とざっと読んで書いてしまおうと思っていたのにいざ書き始めるとそうはいかなくなる。

 

勝手な思い入れかもしれないが四世紀古代日本の世界の波音が聞こえてくるような気がする。

この何もわからない不安定な時代の人々はどんな思いで生きていたのだろうか。

そんな時に神の声を告げる巫女がいれば信じたに違いない。

常世へ行こう」と誘われればついていったに違いない。