
3巻に入ります。
ネタバレします。
「阿加流比賣之巻」
第1章 豊玉姫
磯良はトヨと相対し互いが相容れぬと解する。
トヨはサイモチの神こそ古より海を支配してきた、と説き磯良はワニなどが神ではない。海神の御子ミケツが常世への海道を開くと答える。
だがトヨは常世は生きた人間が行くところではない、と言いミケツを偽りの海童だと断じた。
そして潮満球を掲げ潮を押し出せ、荒魂よ、海人を食い殺せと祈る。
これに応対してオオタラシは海神に助けを求めた。
トヨの魂が宿った鵜がミケツを狙い持っていた七枝刀を取り落とさせる。
ミケツは「あの鵜をとって」と叫んだ。
オオタラシとトヨの戦いである。
だが海神の力は勝り鵜が風に吹き戻されたところを海人が投げた銛が鵜を貫きトヨは叫び声をあげた。
磯良がトヨに投げつけた銛を払い落としたのは躍り出てきた浜子だった。
海で離された友がここで再会したのだ。
だが海神の怒りはすさまじく波は打ち寄せた。
磯良はかろうじて逃げ延びサイモチに突き刺さっていた逆矛を抜き取り再びサイモチにとどめを刺す。
これでホムタチも豊玉姫も終わったと皆が叫ぶ。
武振熊はすっかり戦う意力を失くし百済将軍にむかって「海童に仕えて東の海までの道案内をしたい」と言い出す。
穴門は落とされた。
第2章 嵐
浜子は気を失い眠ったままのトヨを運ぶ。
凧をあげる珂是古と出会いトヨの魂を呼び戻してほしいと頼む。
戦に勝った海人ではあったが多くの人が死んだ。
オオタラシは人々を慰めたが夫を失った女たちはこれでは子供を食べさせられないと言って泣いた。
オオタラシは海人たちの長らを集め水揚げの十分の一を今度の戦で死んだ者の子供や寡婦の取り分にするとした。
武振熊はミケツに建造したばかりの大船を献上した。
この様子に息長は苛立ったが百済将軍は鷹揚だった。
女島(ひめじま)で浜子はトヨの魂を呼び戻そうと珂是古の凧に頼った。
珂是古はトヨの魂を呼び寄せその魂はトヨの体に入る。
浜子は急いで櫛笥の蓋をすると珂是古は凧の糸を手放した。
トヨは起き上がった。
駆け寄ろうとする浜子を珂是古が止める。
トヨは静かに海の中に入っていった。ワニ(鮫)たちがその周囲を守るように進む。
浜子は追おうとしたが珂是古は再び止めた。
「豊玉姫はすでに神のものだ。人間の手の及ばぬものなのだ」
トヨは常世へと行ったのだろうか。
オオタラシ・ミケツのもとに集まった海人たちは新しい水門に移ろうとしていた。
武振熊の大船にオオタラシとミケツは乗り込む。
だが行先の沙麽は戦の準備をしているらしい。
これを聞いたオオタラシは戦を厭い元の浜へ戻れと命じた。
直後海は時化となりミケツの乗った大船は沖へと流されていく。
オオタラシは海神に祈った。
「怒りを鎮めたまえ。原因が私にあるのなら私一人を海にお引き入れください。まことに海人たちを常世へお導きくださるのなら海をお静めください」
オオタラシの祈りが通じたかのように海は静まる。
これはちょうど船が台風の目に入っただけであったのだが人々には海神の怒りが解けた、と思わされたのであった。
第3章 一柱騰宮(あしひとつあがりのみや)
海は静まったが大船は莵狭の莵狭津彦に見とがめられる。
オオタラシは正直に事の次第を話す。
だがここでも隼人の襲来が怖れられオオタラシ一行はその矢面に立たせられようとしていた。
ミケツは一行を離れ名草たちと地元の巫女がいる場所へと向かう。
そこは一柱騰宮でありそこに莵狭津媛がいた。
がここでもミケツの母神の素性が問題となる。
オオタラシは急いでミケツを救いに行くが速見の村の速津媛という巫女に「盟神探湯(くがだち)をしてもらおう」と迫られる。
そこに現れたのは磯良だった。
磯良は「おれが代わりにやる」と言い速津媛の手を取るやともに煮えたつ湯に手を入れさらにその頭を湯に抑えつけたのだった。
速津媛は死んだ。
オオタラシは女島で誓約をすると決意した。
その島では珂是古が幡(凧)を飛ばしておりミケツは欲しがった。
ミケツは糸が切れた凧を掴むと風でその身体が飛ぶ。
オオタラシは珂是古と会う。
珂是古は「天の下すべての者がおまえの誓約に注目している」と告げる。
浜子は磯良に顔を合わせたくない、と舟を出す。