ガエル記

散策

『マッドメン』諸星大二郎 その2

「ペイ・バック」

 

父が惨死し母が療養のため実家に帰る(たぶんかなり精神を病んだのだろう)という衝撃を体験しているのに割と涼しい顔をしている波子。

あの父にして、という気がする。

とにかく波子はおじ夫婦の家に住むことになっていて一樹という青年が登場するのだが(親戚関係の説明と呼び方がしっくりこない)(まあ関係ないのでスルーする)この一樹氏もちょっとねじ外れてる。

 

波子のところへミス・バートンが訪ねてくる。

その理由は「ガワン族の村にインフルエンザを持ち込んだ調査隊へのペイバック(復讐)が続くのを怖れて」というものだった。

これに関係した者がコドワとその仲間によって次々とペイバック(復讐)されているというのである。

ミス・バートンはニューヨークでコドワの姿を見たのだった。

 

ミス・バートンと一樹の行動とは別に波子はコドワにもらった首飾りの誘導でコドワに再会する。

そしてミス・バートンと一樹は例の関係者たちと会おうとするがそのひとりである新聞記者はその前に荒川の土手で惨殺されたのだ。

それを捜しにいった同僚も「ワニに」食い殺されてしまう。

 

一樹はひとり、もう一人の関係者である人類学者の寺西博士に会うが「ペイバック」という言葉を一蹴した。

 

ミス・バートンはコドワの話をまったくしようとしない波子に疑問をもち彼女の部屋に入り精霊の面を見つけて驚く。それはガワン族の精霊堂にあった神聖な仮面だったのだ。

バートンは波子がコドワと会ったのだと察知した。

しかし問いただしても波子は動揺もしない。

「水のあるところにワニあり。仮面のあるところに精霊あり」と波子が口にした途端仮面が飛び上がり部屋を回った。

「ミス・バートン、コドワの邪魔をしないで」

そこに現れたのはマッドメンだった。

 

 

そして一樹が来訪している寺西博士は同時刻コドワの襲撃を受け死亡した。

コドワは一矢で博士を仕留めると窓から飛び降り精霊たちと共に東京の街を駆け抜ける。

一樹はその後を追ったが繁華街に木立が並び彼らの姿を消した。

 

一樹はニューギニア奥地の原生林の中を彷徨っていたところを助けられた。

 

コドワはミス・バートンに「おれたちもニューギニアへ帰りもう一度戦ってみる。文明という怪物と」と告げた。

 

第一話で牽引役だった波子は二話目ではすっかりコドワ側になっていて目が虚ろである。

今回の語り手はミス・バートンである。

 

 

昨日諸星大二郎『マッドメン』は萩尾望都ポーの一族』だ、と書いたがこの執筆発表形式も短編読み切りで続く形で似ている。今回の波子はまるきりメリーベルだなあ。

 

 

「オンゴロの仮面」

淡路——島内には伊弉諾神社があり縄文時代の遺跡も多く発見されている。

 

ニューギニアで発見救助された一樹氏を迎えに波子はひとり向かった。

飛行機内で彼女は比較民族学を勉強しているという青年に出会う。

彼は縄文式土偶を持参しており古代日本とニューギニアの民俗の不思議な類似点を説明したのだった。

 

ポート・モレスビー空港で波子を出迎えたのはミス・バートンだった。ふたりはすぐにマウント・ハーゲン行きの飛行機に乗り換える。

あの青年も同じ便でミス・バートンと縄文の話で盛り上がった。

青年の名は峰隼人。彼はとうとう目的の村まで行くセスナ機にまで乗り込んでしまった。

 

峰隼人(たぶん谷隼人から連想された命名?)かなり胡散臭いキャラクターで面白い。なんで考古学とか民族学とかやってるのにこんなにチャラいのだ?

一行が村に到着すると「カーゴ運動」というものが起きておりセスナ機に村人たちが群がってきた。

峰隼人が拳銃を空撃ちして脅したのを村人たちが激怒するがこれをコドワが槍で阻止し峰の拳銃を払い落した。

コドワに寄り添って波子は一樹を見舞うが一樹は波子がわからないほど精神錯乱していたのであった。

 

ここで「カーゴ・カルト(積荷崇拝)』の説明がされる。

これは無知な迷信とみるべきではなく異質な文化との急激な接触の結果起こる一種の世直し運動なのだという。

 

そしてその夜、一樹は姿を消した。峰が持ってきた土偶の一つを持って。

 

その土偶は山奥で発見された。一樹がいるのだ。

一行は一樹捜索を開始する。

通訳兼コックのクマルさんを雇い一行は山奥へ向かう。川を船で遡るのだ。

峰は置かれていた人形の文様から地形を推測した。

が、一行が向かう船が襲撃される。

オンゴロの精霊の命令だという。

波子はコドワとはぐれ峰やクマルと共に一樹おじを探し続けた。

ポーターたちも逃げ出し三人だけが進み続ける。

鬱蒼とした森の中で波子は恐怖を感じ陽気なクマルさんに呼びかけようとして振り向くとそこにはクマルの頭を咥えた大きな仮面があったのだった。

「コドワ、助けて」波子の声に呼ばれたかのようにコドワが現れ大きな仮面の一つ目を射抜いた。

仮面が倒れるとそれは見る影もなくやつれ果てた一樹おじだったのだ。

 

仮面はオンゴロの岩の中に隠されていた悪霊アエンのものであった。

一樹は森の中を彷徨ううちにアエンにとり憑かれアエンを解放してしまったのだ。

峰がコドワの姿を見てつぶやく。

「その全身の模様、あの土偶と同じ。そうか、それが悪霊に勝つ力なのか」

 

読むすすめるうちにみるみる、オンゴロの森の中に引き込まれていくようだ。

コドワの美しい姿。

波子が魂を奪われてしまったのもわかる。