ガエル記

散策

『マッドメン』諸星大二郎 その3

ネタバレします。

 

森からの脱出

 

アエンの仮面を奪い取ろうとした峰隼人を制したコドワ。

だが峰は波子を盾にして逃げ出す。

やむなくコドワは「森から出られると思うな」と叫ぶのみだった。

 

手を引かれ仕方なく走る波子はコドワからもらった首飾りを落としてしまう。

それを見つけたコドワはふたりの足跡を追う。

峰は波子のヘアバンドを外して谷間に投げ落とした。

これを見つけて気を取られたコドワはふたりを見失う。

コドワはマッドメンに助けを求め彼らはこれに答えた。

 

カウナギとナミテ、という人類最初の男女で兄妹、コドワと波子が兄妹であるということにつながる。

この話を聞いた峰は神話にのっとって森を脱出できると考えた。

呪的逃走説話によれば主人公が物を投げつつ逃走する。投げる物は必ずといっていいほど石と櫛と水の三つである。

峰の場合、アエンの仮面を持っていて立場は逆なのだが神話の構造が重要なのだという。

櫛の代わりにヘアバンドを投げ、次に石を投げた。

最後は水だ。あの谷を越えればぼくの勝ちだ、と峰は言い切った。

コドワは最も強い矢を峰目がけて放ったが峰の頭から離れた帽子がその矢の勢いをそらした。

峰は帽子が最後の呪物になったと察した。

 

 

森のマリア

峰隼人と波子は近くの村でカヌーと漕ぎ手を雇い麓の村まで下ろうとした。

だが途中で何者かに襲われ土偶と仮面を入れたリュック、そして波子を奪われてしまう。

 

ジェームズ・マオリという政府の地区担当官が村を訪れたがカーゴ運動の騒ぎはなかった。ボーレン神父が向かえ出た。

ガレワという男そして預言者のチングイが人々をそそのかしカーゴの時代が来ると信じさせているという。

その証にオンゴロの精霊は聖母をつかわした、と言って見せたのは波子であった。

何故か意識を失い座りこんでいる。

マオリは波子に声をかけたがボーレン神父はこれを止めた。

 

一方、峰は力なく村にたどり着いたが自分の小屋には数人の男たちが待ち構えていた。

淡路で共に土偶を見つけた教授や佐土原という地質学者出資者のふたりの男たちであった。

 

マオリ氏はボーレン神父と話し合っていた。

キリスト教はこの国の伝統的な風習や信仰をすべて打ち壊してしまった。

祖霊崇拝は禁止され精神的基盤を失くし不安なのだ。

技術文明の遅れた社会がより発達した社会の文化を受け入れようとする時そこにはいろいろな形で社会運動、宗教運動が起こってくる。

中国の太平天国の乱、日本のええじゃないかなどもその一つである。

ニューギニアでは「カーゴ秘儀」という形で知られている。

預言者は「十日後に大きな飛行機が富をもたらす」と話していた。

それが実現されなければこの騒ぎも収まるだろうと踏んでいた。

 

だがその前に「アモク」が起きる。

技術文明の浸透とともに表面化してきた一種の社会的軋轢による精神的発作だ。

彼は何日も一人でふさぎ込んでいるかと思うとふいに森の中へ入っていつまでも出てこない。

そして森から出てくると突然暴れ出し槍や斧を振り回し誰彼の見境なく斬りつける。

取り押さえるか力尽きて倒れて死ぬまでやめないのだ。

 

コドワはカーゴ運動の人々を観察しアエンの仮面をつけ人を惑わす者を許さなかった。

 

チングイの預言した「カーゴの日」まであと三日。

 

 

 

カーゴの時代

「カーゴの日」が近づき国中から人々が集まってきた。

同時に普段目にしないヘビやワニまでも出現したきた。

ヘビは悪霊アエンの象徴であった。

 

マオリとボーレン神父の前にコドワが姿を現し「手を出すな、波子はおれが助け出す」と告げる。

 

「カーゴの日」となった。

大きな飛行機があらわれる。

しかしコドワとその仲間たちが次々と矢を放つ。

波子は立ち上がり大きな声で告げた。

「マサライたちに道を開けよ。みんなコドワとマサライに道を開けよ。偽物の飛行機を引き下ろせ、あの倉庫を打ち壊せ」

波子は次々と命令を下し人々を従わせた。

 

コドワはアエンと戦っていた。

アエンはコドワの胸を裂いた。

が、コドワは斧をアエンに額に投げつけた。

 

波子は聖母の布を被ったまま森の中へと走り込んだ。

「コドワーッ」

 

村では騒ぎが収まり集まった人々は夢から覚めたように帰っていった。

けれどもコドワと波子はついにどこにも見つからなかった。

 

ここまでが持っていたマッドメンシリーズ『オンゴロの仮面』一巻です。

 

この一巻の重さ、濃密さは多くのマンガ作品の数十巻にも相当するのではないでしょうか。少年コドワの美しさに誰もが魅了されることでしょう。

作品が続くことに疑問と怖れも感じます。

悪霊アエンを倒すために胸を引き裂かれたコドワと自分の危険も顧みずコドワの名を叫びながら森へと分け入った波子の一途さに心打たれたのです。

これ以上続かなくてもよかったのでは、とさえ今思っています。

 

しかしまたこの素晴らしい作品ともっと寄り添いたい気持ちもあります。

明日からの未読部分が楽しみです。