ガエル記

散策

『マッドメン』諸星大二郎 その5

しばしの寄り道から戻ってきました。

そのまま映画の方へ進もうかとも思ったのですが、現在の私はどうしても映画を観ることができないようです。

 

 

ネタバレします。

 

「鳥が森に帰る時」

一台のセスナ機がセピック川上流から西部管区へ抜けようとして乱気流に巻き込まれ墜落した。

森の中を彷徨ううちにふしぎな精霊小屋を見つけた私はその中でひとりの老人に声をかけられる。

「帰ってきたのか。鳥が帰ってきたのか」

恐怖に襲われた私は外へと飛び出し不気味な仮面の男に誘われ村へ行く。仮面男は「二度とここへ来るな。”森の老人”のことを誰にも言うな」と私に告げた。

 

ポート・モレスビーへとたどり着いた私の話に興味を持った動物学者スミス博士はニューギニアを調査しようと意気込んでいた。

 

スミス博士は日本から戻ったコドワに会いに来た波子とミス・バートンに挨拶し調査に乗り出そうと話した。

その話を聞き「”森の老人”には近づかない方が良い」と言ったのはコドワだった。

 

博士はコドワを通訳にしたがった。

ミス・バートンは難色を示したが波子はコドワと一緒に行きたいと望んだ。

スミス博士、マオリ、ミス・バートン、コドワ、波子、そして”森の老人”と出会った私=ワトキンス一行は山奥へと向かう。

 

とある村で一晩を過ごした一行はそこでマオリの話を聞いた。


その直後、一行は森の老人が吹く笛の音を聞く。

そして翌朝村人たちが皆いなくなったと知る。

ポーターを雇おうとしていた博士やマオリは困り果てるがそこでコドワが別の人々を連れてきたのだ。

 

道中、博士はミス・バートンに動物相について話す。

ニューギニアを含むオーストラリア区の動物相は非常に特殊なのだ、と。ニューギニアの西を境にくっきり違うものになっているのだ。

「それは大昔、海からやってきた男のカヌーからそれらの動物が逃げ出したのだ」とコドワは説明した。

スミス博士は「ほんとうはオーストラリアやニューギニアがかなり早くからアジア大陸と切り離されたからだよ」と笑う。

 

しばらく行くと飛行機の残骸のようなものがあった。

が、それは木や竹に木の皮を張って作った物だという。マオリは「いまだにこんなことをしているのか」と苛立ちを見せる。

ミス・バートンは「飛行機を祖先の霊がつかわした鳥だと思って模型を作り呼び寄せようという“積荷崇拝(カーゴ・カルト)”のひとつよ」と説明した。

 

夜となった。

途中で極楽鳥の巣を見つけてはぐれたスミス博士はまだ来ない。

探しに行こうとしたコドワは波子に声をかけた。

「ナミコ、おれたちの一族になるか?」

「ムリよ、そんなこと」

「おれ、ナミコが好きだ。これから何が起こっても心配するな。ナミコだけはきっと守る」

(やっぱり『ポーの一族』だったか)

 

帰ってこないコドワを待っている波子はコドワの体に施された刺青が彼を動かしていると話した。

そして「他部族に見せてはいけない刺青」を写真に撮った父は祟りで死んだのだと。

その時また笛の音が聞こえだした。

マオリは飛び出しその音色を聞くうちに昔のことを思い出していた。

すべてが幸福でいたるところに精霊がいたあの頃を。

 

スミス博士は森を彷徨いいつしか精霊の小屋にたどり着いていた。

そしてあの老人が現れた。

「鳥が帰ってきたのか。カヌーの男は鳥を見つけたのか」

カヌーの男は世界で恐ろしい災いが起こっているから一番高い山の上でじっとしていろと言ったという。

災いが過ぎたら使いにやった鳥が帰ってくると。

だから老人は山の上で今も鳥を待っているのだ。

スミス博士は問うた。「その男の名は?」

「ノア」

 

ミス・バートンは探していた。いなくなったマオリとナミコを探して。

波子は仮面の男に抱きかかえられていた。

マオリはマッドメンを見つけその中に死んだ父の霊の声を聞く。

追いかけようとしてマオリは森の中から恐竜=バギの上に乗った仮面の男を見た。

恐竜の口には死んだワトキンスがくわえられていた。

マオリは逃げようとして精霊の小屋から飛び出してきたスミス博士と出会う。

博士は錯乱し「ニューギニアの動物相がノアの方舟から逃げ出した動物だなんてそんな馬鹿な」と喚きそのまま死んでしまった。

恐竜の頭の上に立つ仮面の男は仮面を取った。それはコドワであった。

「白人の宣教師がはじめて村に来て聖書のノアの洪水の話をした時、おれたちはすぐに伝説のことだとわかった」

ノアの箱舟の話でノアは去ったがおれたちはずっと鳥を待っていたのだ。

ノアが去ってからここでは時が止まった。時の止まった世界はユートピアだ。おれたちは外から隔絶された楽園にいた。

鳥が帰ってくれば楽園は終わる。

嘘や金や騙し合いや・・・そして白人の奴隷になるのだ。

老人は再びコドワに問う。「鳥は帰ってきているのか」

「老人よ、鳥は・・・」

波子が駆け寄りコドワを止めた。「なぜ嘘をつくの。なぜ森から出てこようとしないの」

「おれは東京やメルボルンで文明国を見た。あんなものはおれたちにはいらない。鳥が帰ってくれば別の災害がくる」

マオリが叫んだ。「だが我々はそれを学ばなければならないんだ。もうと黄は動き始めている」

 

だがコドワは答えた。「鳥は帰ってきたぞ」

恐竜=バギは骨となって消え老人も消えた。

マッドメンは告げた。「マオリ、わしらは森へ帰る。おまえはおまえの新しい国へ帰れ」そしてコドワもその中へと交じり森へ帰ったいったのだ。

「コドワ」

波子の声は森にこだました。

 

この事件の後、コドワは森の中へ入り姿を消した。

コドワの消息がわかったのは翌年アメリカや日本で「ペイ・バック事件」が起こった時だった。

 

その結果波子は再び叔父を探してニューギニアへ行くこととなる。

そこで起きた様々な事件。アモク、カーゴ・カルト、悪霊アエンの復活。

そしてついにアエンを倒したコドワは自らも傷つき森の中へ倒れた。

波子はマッドメンに導かれコドワのもとへと駆け付けたのだった。

 

 

冗談半分で諸星大二郎『マッドメン』は萩尾望都ポーの一族』だ、と書いたのですがここまで読むとほんとうにそうだったのだ、と思わずにはいられません。

コドワのいう「ノアの箱舟の伝説を信じて山奥の村で鳥が帰ってくるのを信じ続け時を止めた人々」というのは『ポーの一族』で「時が止まった薔薇の咲くポーの村」と同じ説明になっています。

そしてなぜか「ポーの村」はその後戻ることができずエドガー達はその村への入り口を探し続けているわけですが。

「コドワ」と「エドガー」という名前が音が似ている、というのは言い過ぎでしょうか。

現在、宝塚では『ポーの一族』が上演され人気のようですが同じように『マッドメン』も演劇化もしくは映画化できない・・・でしょうかねえ。

 

これらも「世界の伝説は似ているのだ」ともいえるのかもしれませんが。