1973(昭和48年)年2/14号~74年4/10号「ヤングコミック」
上村一夫の批評をするのならまず絵の上手さ美しさを讃えるべきなのだろうけどここまでほとんど書いてない。
なのでまず書いておく。この表紙絵を見るだけでも卓越したものだとわかる。
すばらしい。
それはもう揺るぎない。
さらに今の私は昭和という近代日本史的な読書が目的なのだが上村一夫の絵そのものが近代史である。
ネタバレします。
作品後の解説文で「信濃川は著者双方にとって縁深い土地だったわけでも思い入れがあった場所というのでもない。上村一夫のふとした思いつきによって選ばれただけの舞台にすぎない」とある。
私も「信濃川」とその地域になんの知識もないけれど本作に描かれる荒れ狂う吹雪の中を行く女性の姿を見ているとこれは女性の人生のイメージとしての「しなの川」なのだろう、と思わせられる。
美貌と業を抱えた雪絵というひとりの女性を描くための誂えの背景なのだろう。
そして登場する男たちはみなひ弱くかっこ悪い。
男たちは雪絵の身体に翻弄され雪絵自身はそんな男たちに失望していく。
男だけではなく母の姿にも失望する雪絵。
若い男に狂っている父親の醜い姿。
父の焼死体を見て「ばかなおとうさま」と心の中でつぶやく。
刹那的に情動だけで生きて行く雪絵の姿を描いていく。
現在の感覚で見ていると感動というよりちょっとおかしくて笑ってしまう作品なのだ。
もし彼女が今存在していたら「生きている男」ではなくマンガやアニメの男性キャラにはまっているのではないだろうか。
それらを「推し」として狂い続ける「おたく女」になりそうだ。
たぶんBL系の腐女子であろうと想像つく。
それら作品の舞台に行ってはなりきる女性として長く生きていける気はする。
しかしこれは昭和の話。
雪絵の「推し」はつまらない現実の男たちなのだ。
ともかくも激烈に美しい絵を見ろ、と。