ガエル記

散策

『二都物語』上村一夫

1979年10月10日号~1980年9月24日号「ヤングコミック

こうして上村世界を見ていくと人生を深く考えるのは意味がないような気がしてくる。

ヒロインは常にひとところ、そしてひとりの男に留まることなく流れ続け変身していくのだから。

 

 

ネタバレします。

 

 

というか上のがネタバレではある。

昨日読んだ『しなの川』の雪絵とはまたちょっと違うヒロインである竹野久美子。

時代が違うからではある。

とはいっても昭和ではある。

雪絵の時代は昭和の太平洋戦争前から戦後数年後ほどの間。

久美子の時代は日本の高度経済成長期である。

それでも現在から見れば遠い昔なのだ。

 

物語は二十歳の久美子が生まれ育った京都から東京へ行こうと思い立つところから始まる。

久美子の父は西陣織の図案絵師なのだがその図案を盗まれたことで失意し仕事ができなくなった。

久美子は「出稼ぎ」のつもりで東京で働こうとしていると父に告げる。

 

そこに絡んでくるのが東京の個人経営出版社の神崎だ。

神崎は学友だった下条からの遺言である手紙を京都に住む久美子に渡してほしいと頼まれる。

神崎はそこで久美子に出会う。

久美子の美貌が下条を狂わせたと知るのだ。

久美子は登場する前に一人の男を死へと追いやっていた。

 

さて東京へ出た久美子は次々と出会う男の心を狂わしていく。

まずは政治家、そして神崎もさらにヤクザと出会う。

仏門の老女との出会い。

父の死。

そしてヤクザ男との再会。

ヤクザの名は尾形。尾形の刺青の身体に抱かれ久美子は尾形についていくと告げる。

しかし尾形は組のものに連れ去られ、尾形を助けようと思った久美子は太腿に尾形と同じ桜の刺青を入れられる。

 

再会した神崎は久美子の太腿の刺青を見て逆上し久美子のスキャンダルを自らの週刊誌で暴露した。

 

その後久美子は尾形と再三の出会いを逃亡する。

逃亡先は尾形のかつての弟分の雑貨店の二階だった。

弟分新治はその店の養子婿となっていたのだ。

とはいえ働くのは妻の役目で新治は働きもせず博奕を打っては遊んでいる。

転がり込んできた尾形と久美子に妻はうんざりしていた。

 

弟分新治は尾形と肉体関係を持っていた。

やがて妻がそして久美子がその現場を覗き見てしまう。

 

久美子はその小さな町の小さな酒場の女給となる。

尾形は再び組につかまった。

新治の妻が通報したのだ。

 

久美子はまたも神崎と出会い心中しようという話になる。

久美子は助かるが神崎は投身自殺を果たしていた。

 

久美子はオリジナルの織物をしている若い男・深井のもとで織物の勉強を始める。

その一方で酒場で働くのだがママに頼まれタコ焼きを買いに行った先で出会ったのは片腕になった尾形であった。

 

ママの酒場に戻った久美子はタコ焼きを渡して泣く。

ママはタコ焼きを久美子に渡して「深井さんと食べなさい」という。

 

タコ焼きを食べながらむせてしまう深井の背中を撫でながら久美子は尾形の背中にある桜を思い出していた。

 

ここで完結となる。

だがこの調子でやっていくなら久美子が死ぬまでやっていける。

久美子が娘を産んだのならまだ続けられそうだ。

 

久美子は終わる女ではないのだ。

上では省いたがこの話に幼馴染の女・京子が絡んでくる。

目標だった歌手になれた彼女だったが好きになった男から捨てられお腹の子を失ってからおかしくなってしまうのだ。

ある意味彼女も久美子によって狂わされてもいる。

 

久美子と関係した人間はみなどこかおかしくなってしまうのだ。

そんな人間たちを久美子は醒めた目で見ている。

 

久美子がこれからどうなってしまうのか。

その美貌は少しずつ薄くなっていくのだろうがそれでもまったくなくなってしまうのはいつのことやら。

たぶん一生流れながら人を狂わしていくのだろう。

おもしろい。