ガエル記

散策

『夢師アリス』上巻 上村一夫/原作:岡崎英生

1974(昭和49年)年5/8号~12/11号「ヤングコミック

ここまで読んできた上村一夫とはちょっと違うSFテイストでありました。

が、ねっとりとした食感は変わらない不思議世界です。

 

 

ネタバレします。

 

 

そもそもアリスという名は(一部音楽関係を除いて)不思議世界へ誘う少女の名前である。

「ℵ(アレフ)」と唱えることでアリスは「無限」の扉を開く。(まさかℵと出てくるとは思わず)

「無限」は「夢幻」でもあるのだろう。

 

第一章 「夢殺し」

元侯爵嵯峨野またの名を時計侯爵嵯峨野行道。

「コック・ロビンを殺したのはだあれ」

「わたしだわ」って雀がいった。

嵯峨野は最も大切にしていた時計で妻と親友を殴り殺す。

 

第二章「夢みる家族」

夫婦と姉弟の四人家族はある日、父の提案で家族を辞め再出発しようとする。

だがアリスの「ℵ」の呪文で彼らの家は23世紀2248年に飛ばされてしまう。

その時東京はすでになく(というか20世紀の終り頃になくなったようだ)砂漠の中にぽつんと彼らの家は建っていた。

これから10年はどこにも行けないのだという。

 

どうやらアリスのいたずらで一家はもとの場所に収まっているようだが、彼らは普通の家族に戻れたのであろうか。

 

第三章「傷つきやすい少年少女たちのための童話」

スプーン曲げをしている少年。

コイン・ロッカーに赤ん坊を捨てる。

カップヌードル

と当時の世相が次々描かれる。(たぶん)

そしてアリスは不幸な少年少女たちに超能力を与える。

 

 

第四章「アリス町アリス小路13番地」――或いは「養殖アリスの作り方」――

こんどは23歳女性を救う。売春で生活し苦悩して身を投げたその女性を救ったのだ。

ここでアリスは「今は18歳だけど10年前は35歳だった」と語る。

連れて行ったのがアリス町アリス小路13番地。

死ぬほど苦しんだ女たちがそこに集まっているという。

そこで彼女はアリスのひとりになったのだった。

 

「不思議の国の上村一夫

章は無くとうとつに上村一夫氏の話。

仕事を中断して夜の街に出かける上村氏は高校時代につきあっていた女性と出会う。

そういう女性がいた、という話になるのがそもそも他の漫画家たちと違うところ。

 

第六章「母殺し奥の細道

自分と同じような女であった母を殺してほしいと男に頼む女。

(男はなぜかブルース・リーぽい顔)

しかし女には孤児院に捨てた子供がいた。

 

アリスはその子供を連れて女が男と乗った列車に乗り込んでいた。

「仙台」につくとそこは何もない草原でアリスは連れてきた子供・ヒロシを母に会わせる。

アリスたちを見て動揺する男と女。

男は拳銃をアリスたちに向ける。

が、アリスは怯えることもなく拳銃を取り上げヒロシに渡した。

ヒロシはそれを母である女に向けた。

母は死んだ。

 

夢だった。

 

母である女は松島湾に浮いていた。

 

 

あまりにおもしろくて上巻下巻に分けることになった。

これは上質だなあ。

どうしてアニメに作ろうとしないのか、という理不尽な怒りが沸き起こる。

これはアニメで観てみたいなあ。