
ネタバレします。
第七章「盗作」
深草あき子は富裕な夫とふたりの子に恵まれながら「小説家になりたかった」という夢を見続けている。
その思いは様々な小説が自分の作品の盗作だと疑うことにさせていた。
そして昔の仲間だった伊丹緑郎が直木賞を取った受賞作『瞑想都市』はまぎれもなく自分の作品だったと訴え出たのである。
ところが伊丹は深草あき子が昔の恋人だったことを記者会見で発表し「小説家になりたいけど小説が書けない」彼女のために自分が書いた作品を彼女の名前で同人誌に発表したものだった、と打ち明ける。
これで伊丹への疑惑は消え代わりに深草あき子は離婚されてしまう。
アリスは深草あき子に寄り添いながら伊丹緑郎にも近づいていた。
作戦がうまくいった伊丹はアリスにすべてを打ち明ける。
「あの小説は本当に深草あき子が書いた唯一の小説だったんだ」
アリスは伊丹の声を録音していた。
なぜ僕を裏切るんだと問う伊丹にアリスは答える。
「人間が嫌いだからだ」
第八章「花いちもんめ」
ぼくが姉だと思い続けていた女性は母だった。
13歳の少年は事実を知り実の父母から「意味のない十年を送らされた」という言葉を聞く。
自分が生まれたことで彼らは十年間を無駄にしたというのだ。
ではぼくの十年間は?
姉である母は別の男性と結婚することとなった。ぼくは性を売ることである男から爆弾を手に入れ結婚式場に仕掛けた。
ところがいつの間にかぼくは数十年も未来の世界へと飛ばされていた。
すべてはアリスの仕業だった。
彼女はぼくを母殺しの罪から救ってくれたのです。
第九章「情欲の幻影」
陽子という女性を愛しながら別の女性順子と結婚した男はアリスの呪文によってセックスの途中で陽子と順子がくるくる入れ替わることになる。
優柔不断な男への罰として。
最終章「アリスの履歴書」――アリスはいかにしてアリスとなったか――
原作ものでありながら上村一夫が繰り返し描いてきたものの集合であるような最終章である。
アリスの父と母は「一卵性双生児」だったという。
ちょっと待て。
双生児において一卵性は必ず同性であるはずで男女で生まれるはずはないのだ。
だがその不条理が上村世界では成り立つのだろうか。
もしかしたら男女だと思い込んでいて実は女女だったのかもしれない。
もうひとりの女が男として成長しふたりは結ばれたのかもしれない。
だから父は死ぬ前に女性となったのだろう。
ちょっと待て。では子供はできんだろう。
しかし不条理にも子供はできた。
しかもまた一卵性の男女の双生児だったのだ。
おまえたちはこの世に憎悪と怨恨と絶望をはびこらせる
読み応えある短編集だった。
爬虫類ぽい顔立ちのアリスキャラがとても良い。
『関東平野』の銀子がほんとに女子になったらこんな風というか。
どうしてもアニメ化求めたい。
「ℵ」が今となっては無理っぽい気もするが。ここからとったのか?
どれも甲乙つけがたいが「盗作」気になる作品である。
伊丹緑郎は伊丹十三からなのか?深草あき子さん、どうなっただろう。いそうで怖い。