ガエル記

散策

『百日紅』杉浦日向子

1983年「漫画サンデー

本作を原作とするアニメ映画は鑑賞済みだが本作は初読みです。

 

 

ネタバレします。

 

 

そのアニメ映画に対する感想はもう記憶が定かではないが主人公のお栄のキャラクター造形(外見も内面も)をはじめストーリーも世界観も「悪くはないけどなんだかもうひとつ入り込めない」という感じで再鑑賞したくなるものではなかった、という印象であった。

その原作たる本作を読んで「これこれ、これが本物だよ」と原作だから当然なのか、杉浦日向子だから当然なのか、ものすごい納得感を得られたのであった。

(これ原作読んでからのあのアニメ映画鑑賞だったら怒りが凄まじかったであろう。その体験者は気の毒だ)

 

特に主人公お栄のキャラクターはアニメであの眉毛ばかり印象的なデザインが奇異だったが原作ではしっくりとくる「お栄」である。

だいたいがお栄は父である北斎から「アゴ」などと呼ばれているのだがアニメでは顎が目立っていなかった。

なぜ「アゴ」をやめて「マユ」にしたのだろうか。

アニメのほうはそのくらいしか覚えてないから比較もここまでだ。

 

娘お栄もいいが父の北斎も素晴らしく良い。

といってももしかしたら北斎上村一夫『狂人関係』の北斎デザインに影響されているような気もする。

とはいえ現在の目で見るとあの上村北斎の太ぶとしい造形より杉浦北斎の軽い爺さんぶりのほうがしっくりくる、気がする。

「ほんとうの江戸時代の江戸の町」を見ることはできないがさて果たして上村一夫の世界と杉浦日向子の世界のどちらが江戸の町に近いのだろう。

私の勝手な思い込みでは杉浦日向子のぺたんとした描き方の方が江戸っぽい気がしてしまうのである。

 

私は杉浦日向子マンガ作品読みは『合葬』のみで正直言ってあれだけでよいかなと思い込んでいたのだけど本作を読んで才能を再認識した。

これは確かに「凄い」と言われる才能であった。

とにかく江戸時代が楽しいと判った気がする。

今までそう思っていなかった。