
ネタバレします。
其の十六「火焔」
アニメ映画でも使われていたこのエピソード。
「火事と喧嘩は江戸の華」の「火事」のほうである。
お栄は「火事」と聞くと矢も楯もたまらず駆け出してしまうのだ。
最初のコマ、この鐘は「カンカンカン」だと思ってたら「ザリンザリザリザリザリ」だった。
よく見たら半鐘の中を叩いてる?どういうものなんだろう。
で検索したら火事が近い時は「すりばん」という鳴らし方になるという。これは「続けざまに激しく叩く」ことらしいがこの描き方だと中を擦っているように見える。これが「すりばん」ということ、なのかなあ?
「お栄いたって火事を好みて夜中と言えど十町二十町の場へ見物に往くことしばしばなり」と書かれる。
火事をじっと見ているお栄の後ろ姿が色っぽい。
慌ててきたので下駄を片っぽしかはいてない。
それに気づいた八造は買ったばっかりの下駄をあげ、着ている上着をかけてやる。
これを見た善次郎は怪しいと睨んだりする。
これを聞かされた北斎は意外にも気にしていたようだ。
またしても火事で飛び起きたお栄が男と戻ってきたのをみて「女房持ちの男が」とくってかかる。
お栄は親父の勘違いを叱咤する。
八造はそれを知ってお栄にかわいい猫柳をあげた。
猫柳はほんとにかわいいんだよね。
其の十七「女罰」
空から降ってきた女ものの下駄に驚く善次郎。
下駄は橋の上にいた女のものだった。
乗っていた船を止めさせ下駄を女に返すと女は「オヤ善さんじゃないかえ」という。
が善次郎は思い出せない。
女は善次郎とともに船に乗ってきて「まァイイヨそのうち思い出してもらうから」という。
そして川のなかほどで船を止めさせ骨壺を取り出して骨を川に投げ込みだした。
妹分のお鈴だという。
どうしても思い出せない善次郎に「そりゃおめえ女罰の始まりだ」という北斎。
善次郎はひとりになって持ってきた骨壺の骨を見て考える。
「形はアバラだけど小さすぎる」
お鈴は猫だった。
そして飼い主の名はお香。
善次郎とは二年前深川の祭礼で会ったきりだった。
「でもマァ思い出したんだから、ドウゾ無罪放免と願いたいネ」
「さあどうだか」
其の十六「酔」
深川中浜屋の遊女滝山は生の焼酎を一升呑んでも素面だと言われた女である。
善次郎は酒に強い国直を使って滝山と戦わせる算段をするが国直の弟子・国芳が善次郎の狙いを悟って国直を止める。
滝山は量じゃなく勝負には舌のただれるような強い酒を使うらしい。
焼酎より三倍も強いアラキ(ウォッカの類)とかいう渡来物だという。
国直は豊国と禁酒の誓いをしていると善次郎の誘いを断るが国芳を連れて滝夜叉姫のところへと赴く。
滝山と国直の酒比べが始まった。
さしもの滝夜叉もふっとふところを仰ぐほどになったが国直は瞼がくっついて離れなくなる。
歌って眠気を払ったもののもう一口飲もうとするとぐーぐーと眠ってしまう。
滝山は帰ってしまった。
だがその夜、ぐーぐーと眠りこける国直と眠れぬ国芳の部屋を滝山が訪れ「お前方の望みは何だったのだえ」と聞いてきた。「背中の刺青を見せてもらいたくってサ」
滝山は「ふふ」と笑って帯を解く。
国芳は慌てて国直を叩くが酔った国直は起きなかった。
その背中には酒呑童子の首が頼光のかぶとに喰らいついているものだった。
翌日、滝山が新川の酒問屋に身請けされた。刺青はもう見られない。
其の十九「色情」
絵の技術はお栄が上だが女の色気があるのは善次郎だと言われてしまう。
お栄はむしゃくしゃして陰間茶屋へと行くが馴れないお栄はうまくやれない。
吉弥という陰間に袖を引かれて入ったものの吉弥は坊主に呼ばれて出て行った。
呼びに来た艶之が代わりにお栄と話をする。
吉弥が見た夢は部屋に飾っている仏画のようなデカい仏様が山の向こうに現れて皆がありがたいと拝んでいたら仏は山を乗り越えて拝んでいる人も家もいっしょくたに踏んずけて行ったらしい。
吉弥は坊主にやられて戻ってきた。約束の銀の猫はムクじゃなくてがらんどうだったと怒りながらもお栄に「やろうやろう」と襲ってくるが途中でぐーぐーと眠ってしまう。
お栄は仏に踏みつぶされる思いがした。
其の二十「離魂病」
花魁小夜衣は明け方に首がニューっと伸びるという。
それは魂が離れる病気なのだと北斎は睨んだ。
北斎は八造ととも小夜衣のもとへ行き自分の経験譚を話す。
自分の手から手が生えてきてアレヨと思う間もなく窓から外へと飛び出した。
はじめは驚いたが慣れてみるとおもしろい。
だがあの手がうっかりちぎれたらどうなるのかと恐れて坊主に相談し両腕に経を書き数珠を巻いた。
はじめは怒った花魁もその話を聞いて「鈴の音が聞こえたら隣の部屋へお出なんし」と納得してくれたのだった。
果たして北斎と八造が碁を打って長い夜を過ごしているとやがて鈴の音がする。
隣を見ると小夜衣の頭がガクガクと揺れ魂が抜け出たのである。
だが蚊帳が結界となっているのかその中でぐるぐると回っていた。
やがてそれは小夜衣の本体に戻った。
忠告する北斎に小夜衣は「その時はその時でござんしょう」と笑う。
「それにしても先生の一件、初耳でしたなァ」という八造に北斎は「俺だって初耳だ」と返す。
「ああでも言わなきゃあんなイイもの見られなかったじゃねえか」
離魂病の話は多いようだ。
やはりストレスがそうした事態を生むのだろう。
それにしても「なるようにしかならない」といった花魁の生きざまはかっこいいものではある。
女性作家が花魁の話を描きがちなのも解るのだ。