
ネタバレします。
其の二十一「愛玩」
天衣無縫な娘の話。
男でも女でもこんなお嬢さんに惹かれてしまうんだろう。
でもそれはほんとに犬猫みたいな可愛さがあるからなのだろう。
そういう風になりたいと思ってもなれるものでもなくその演技をしているのかもしれないけれど。
其の二十二「綿虫」
この作品中、歌川国直が一番良い男として描かれているのではないか。
おおらかでよいなあ。
善次郎もおおらかではある。
善次郎が北斎宅に行くと物凄い煙が。
火事かと慌てると北斎お栄と国直国芳が仲良く焚火をして芋を焼いていた。
国直は芋食いだ。
だが、その焚火は普通の火とは違うという。
昨晩、小石川の辺りで道端にチラチラしていた青い火をそっくり提灯に移しさらに家に帰って行灯に移したのをまた提灯にいれて焚火にしたのだという。
その火はガマが土中より吐く怪火らしい。
それを聞いた善次郎は「気色悪ィ」と芋を放り出す。
北斎は国直たちに「松円寺の化銀杏」の話をする。
銀杏の根方に子どもが立っている。オヤこんな時分にと思うと手元の提灯が消えるという。
またなにもないのにあすこでは突然人が転ぶのだともいう。
ふたりのまえに現れたのは子どもではなく追いはぎだった。
国直たちはふんどし以外は皆脱いで追いはぎに渡す。
「おい待て」
驚いて振り返る追いはぎに国直は「下駄ァ忘れた」と渡した。
受け取った追いはぎは急いで走り出しこけた。
寒空にふんどし一丁のふたりは走り出した。
これ、『メッシュ』思い出すんだけど、関係あるのかなあ。
其の二十三「美女」
萬字堂の主人はお栄の絵を売り出したいと本人を説得するがお栄は「めんどくせえ」というばかり。
だがお栄の新作を見た萬字堂は「あんたの名を入れてほしい」と願った。
お栄は「金になるならソウしてもいいよ」とさらさらと書き入れる。
ある富豪だが気難しい御隠居にその絵を勧めたところいたく気に入られた。
御隠居はその美女とふたりきりになって酒をすすめそこに横になた。
突如寒い風が入ってきたのだがその風は絵の中からっ吹いてきた。
御隠居が絵の中に顔を入れ込むとそこには美女以外なにもない。
御隠居はお栄を呼んで何か景色を描いてほしいと願ったのだった。
望み通り美女の背景は描かれた。
またお栄の新作が描かれた。
が、描いたのは北斎だった。
「北斎と書くよりもうかるんだろ、ヘッ」
其の二十四「因果娘」
また不思議な話である。
善次郎が見かけた御高祖頭巾でお百度参りをする娘は満願なのに叶わなかったと怒りをぶつける。
「お前の顔は縁結びじゃねえか。だったらモウ叶ってらァな」という善次郎の軽口に「ラッキョウくせえ」と逃げ出す娘。
娘は歯磨き売りの妹だった。
歯磨きのダルマ堂の男は娘・いちに良い匂い袋を贈る。
いちには悩みがあった。
ある日仕事を休んで通りかかった法師に加持祈祷を頼む。
いちが十三歳の時病気のおっ母を医者の所へおぶっていったら途中でおッ死んでしまいその手が両肩から離れなくなったという「手のミイラ」がくっついたままなのだ。
が、法師の加持祈祷はまったく役に立たず手はくいこんだまま離れない。
「お父、離してくんろ」
というのはどういうことなんだろう。
いちは仕方なく両肩の手のミイラにまで白粉を塗って化粧した。
「おいよせ、そんなものにまで白粉塗るな、気色悪い」という兄に「いいだろう。わたいのんなんだから」といういち。
ふたりは今日もダルマの歯磨きを売る。
どういうことなんだ?
やはりこれはおっ母を背負ったのではなくかつていちが十三歳の時、裸の娘に父親が背中から抱きついたのだとしか考えられない。
侍らしき兄が狂った父を殺したもしくは両腕を切り落としたのだろう。
なにしろいちは十三歳の体験なのに「離れなくなったとさァ」と後から聞いたことのように答えているのだ。
あまりのショックに記憶がなくなってしまったということなのだろう。
この事件でふたりは家を出る、もしくは家がおとり潰しになった、のではないか。
そしてふたりで歯磨きなどを売るための大道芸などで食いつないでいるのだ。
良い兄ではないか。
そしてそんな過去を背負いながらもあっけらかんと「わたいのんなんだから」といういちの強さよ。
いつかその業がぽろりと落ちる日が来るのを願いたい。