
本作が杉浦日向子デビュー作という。
なんというデビュー作だい。
ネタバレします。
「虚々実々 通言室の梅」
武士なのにも関わらず商家の若旦那という風情で遊郭を訪れた藤森はすぐに太鼓持ちに見破られてしまう。
それをなんとか誤魔化して中に入ったものの武士の知り合いにまたもやすぐ声をかけられ逃げるように去る。
梅ヶ瀬を選んだものの遊女は突然「胸が差し込んで」と部屋を出て行く。
女が向かったのは浪速に修行に行った若旦那のいる部屋だった。
そこで梅ヶ瀬は久しぶりに会った男と抱き合うのだった。
戻ってこない梅ヶ瀬を心配した藤森は通りかかった童女に問う。
やがて戻ってきた梅ヶ瀬に「あんばいはどうだ」と声をかけ「はやく体をなおしなせへ」と眠らせる。
朝になり梅ヶ瀬は藤森に「近間にはぜひおいでなんし」と告げる。
好い心持となった藤森は帰ろうとして膳を運ぶ下男にぶつかり思わず「ぶれいもの、気をつけさっしゃい」と声をあげた。
「どうぞご勘弁を、お武家様」
化けの皮がおっぱがれ。
うむむ。
すごいなあ。
「ヤ・ク・ソ・ク」
師走半ば、江戸柳原堤。
心を入れ替えた若旦那と心を入れ替えない太鼓持ちの話。
最初台詞ばかりが多いので面食らって読めない気がしたのだけどちゃんと読めばとても面白い。
これはむしろアニメにしてもらって声優さんに頑張ってほしい作品である。
酒の飲みすぎで落ちぶれた太鼓持ちが頼みにする若旦那が心を入れ替え嫁をもらって店を継ごうと決心したことに激しい憤りを感じてしまうのだ。
若旦那は夫婦請文を書いた玉屋の琴浪という花魁がいてその始末を太鼓持ちの彦に頼むのだった。
去っていく若旦那を彦は追ったが外は火事騒ぎで人が走っていく。
三の酉のある年は火事が多いのだという。
同時に「吉原に異変が起こる=男性に吉原に足を向けさせないようにする」という俗信もあるらしい。
「日々悠々」
①②③と話があってとにかく江戸言葉がおもしろい。
それにしても江戸の話というのは男女の色恋沙汰に尽きるのだなと思う。
それも遊郭と遊び人との戯言だからその世界を良しと思えなければ江戸世界に遊ぶことができない。
現在はその真逆のような世界に思える。
私とて遊郭の話をすべて受け入れる気にはなれないのだがそこを楽しめるかどうかだと思えてしまう。
ファンタジーとして読めるのか、ではある。
ひきこもり時代でもある。