ガエル記

散策

『松吉伝』───風雲児外外伝─── みなもと太郎

2003年~2004年「斬鬼」/番外編2008年描き下ろし

 

寄り道です。

今朝、偶然Xポストで知った本作『松吉伝』

ここで『松吉伝』と書かれてなければ知り得なかった。

ありがとうございます、ムゲンホンダナさん!感謝です。

 

この本の内容、実は初めて知ったわけじゃなく以前岡田斗司夫氏の配信でこの松吉さんの話を聞いていたのですがその時は岡田氏がタイトルを言わなかったのか、それとも当時単行本になっていなかったのか、みなもと太郎氏のこの本だとわからずに(私が聞きそこなっただけかもしれないが)気になりつつそのままに。

まさか偶然Xでめぐり逢うとは。

うれしい。

 

 

さてネタバレします。

 

 

日本近代史を彷徨っている現在の私にとってやはりこの本は大切な一冊であった。

あまりにも凄いエピソードの数々で驚く。

みなもと太郎さんが「眉唾眉唾」などと抑えつつ描かれるのであるが却ってその冷静さが真実味を増す気がしてしまう。

 

で、岡田氏の話というのが『スターウォーズ/ローグ・ワン』を語る中の一つの鍵が『松吉伝』の松吉の秘められた活動だったのだった。

みなもと氏は自分の祖父の活躍を直接ではなく父や母からの又聞きで知りそれをマンガ作品にしているのだが、そのマンガ自体が途中で打ち切りになっていたうえほったらかしになっているのだ。

「こんな貴重な話を」と思ってはしまうが、そもそも松吉自身が律儀に一切言い残さずに墓の中に持っていったのだからやむを得ない。

確かに世界は『ローグ・ワン』でできているのだろう。

名もなき行動者、記録に残らない者の言動で世界は変化していくのだ。

 

「かつての日本は凄かった」話でもあるのだが、莫大な金で世界を動かす意義などないのだと思う。

その金を作るのに国民がどれほどの血を流したのかと思う。

とにかく明治は死に急ぎすぎたのだ。

私には夏休みの間ボーッと過ごしていきなり焦って無茶苦茶に宿題をやる勢に思えてならない。

引きこもったツケは大きかったのだ。

むろん開き直っていればよかったのだとも思うが世界情勢がそれを許さなかったかもしれない。

 

今回、私が『松吉伝』で一番興味を持ったのは松吉氏が日本占領下の朝鮮に警察署長として赴任した時の話だ。

有能な松吉氏が赴任するとその場所が非常に改善されていくので次々と危険な奥地へと送り込まれてしまうのだ。

むろんその当時のこと、立派な官舎が与えられる。新築の場合もあるがその地方の両班(リャンバン)の屋敷を接収した場合もあるという。

そこでの松吉氏のような警察署長の権限は「江戸時代の町奉行と同じ」ものだったというのがなるほどと納得した。

みなもと氏は「せめて遠山金四郎のようであったと思いたい」と描く。

この地での松吉氏の思いやりある堂々たる姿は誇張されているのかもしれないが、と思いながらも凄まじい。

この話が朝鮮側から証言されるようなことはあるのだろうか。