1960年「大映」
船場の話を知りたくて鑑賞しました。
ネタバレします。
これはとんでもない良作品だった。
などという評価はおこがましかもしれないが先日同じく市川崑監督作品『細雪』を観た時はかなりがっかりしたのだけどこちらはまったく違う趣があった。
23年後(1983年)製作の『細雪』よりもこちらのほうが断然素晴らしいと思う。
やはりあの作品は和田夏十脚本が出来なかったからなのだろう。
そしてなんといっても市川雷蔵の喜久ぼんが良い。
船場という商家町の女系家族の中で跡取り息子として生まれ育った喜久ぼんは大事にされてはいるものの祖母と母に「女だったらよかったのに」という捻じれた圧力を受けて生活している。
本来なら申し分ない身分なのにこの奇妙な劣等感を彼は持ちながらも撥ねつける強さを持っているのが良い。
愛情を持っていた本妻を祖母と母の嫁いびりで失う羽目になり幾人もの妾を持つ男だが女達にはとても優しくこういうのを甲斐性ある男というのだろう、と感心してしまう。
五代目足袋問屋河内屋を背負う彼が戦災で蔵一つと腹巻に巻いた金だけになっても挫けず女たちに金を渡し足袋問屋を再建しようと志す。
そして時が流れ年老いて子供たちに養われる身になっても彼は船場で商いを新しく始めようとしていた。
怒鳴ったり暴力を振るったりすることなく辛抱強く生きて行く男の姿。
といってもやっぱりこの映画では女たちの強かさが豊かに描かれていた。
お時さんにしても一生を好きな男に寄り添ったというのではないんだろうか。