ガエル記

散策

『アドルフに告ぐ』手塚治虫 その4

 

ネタバレします。

 

 

第8章

ただひとりで大きなカウフマン邸に住む由季江。

ドイツのAHSに入学した息子からの手紙は検閲が入っていたが由季江は嬉しかった。

 

貸してもらった1円を返しに行くことで峠と由季江は再会する。

峠よりも由季江の方が峠の様子、背が高いスポーツマンで明るく開けっぴろげな感じだと好意を持ってしまうのだ。

 

再開後カウフマン邸を出た峠はすぐに特高に捕まる。

赤羽は峠を痛めつけた。

が、本多大佐が保証人になるという連絡が入り拷問は中断される。

外で待っていたのは由季江だった。

由季江は本多大佐の友人で頼み込んだのだった。

それ以上に本多大佐は由季江に思いを寄せていたのである。

 

こうして峠はもう一度由季江宅で滞在することとなるが多国籍の幾人もの人物から秘密文書を渡してほしいと接触され、峠は由季江のもとを去る。

 

第9章

協合通信社に戻った峠は首になってしまう。

彼が特高に狙われているということが会社の損失となるからだった。

さらに下宿先も追い出され誰のことも信じられなくなり峠は路頭に迷う。

 

昭和14年となる。

峠は秘密文書をゴミ捨て場の標識である立て札の裏に隠していた。

土木作業中、本多大佐から「金をやるからここから出ていけ」と忠告されるが峠は言うことを聞かない。

しかし大佐の差し金で峠はまったく仕事にありつけず、やむなく砂糖の密輸の通訳をする羽目になる。

ところが密輸の船長がユダヤ人で峠がナチス・ランプから拷問を受けた話を聞くと「友だちだ」と言い出し延々とユダヤ人の苦労を話し出す。

 

 

第10章

浮浪者となりながら赤羽刑事につけ狙われる峠。

その峠を探し出そうとする由季江と諦めさせようとする本多大佐。

由季江は大佐の運転士に頼み込み釜田地区を捜しまわり峠らしき人物を見かけるが降りることは許されなかった。

 

峠は赤羽に付きまとわれたあげく降りしきる雨の中ゴミ捨て場で格闘することになる。

ゴミを喰わされた赤羽は峠を前に最後の手段に出た。

ゴミの山に火を点けたのだ。

やむなく峠は文書を隠し場所の立て札から取り出した。

赤羽はすかさずピストルをつきつけその文書を奪った。

だが雨のせいかゴミに足を滑らせた赤羽は飛び出した釘に後頭部を打ちつけた。

燃え盛るゴミの山を前に叫び続ける峠を駆け付けた警察が逮捕した。

 

第11章

1939年8月 ドイツ

アドルフ・ヒットラー・シューレ(AHS)はヒットラー・ユーゲントのエリート校でありナチス幹部を養成するものだった。

そこでアドルフ・カウフマンは優秀模範生として他二人と表彰されることとなる。

だが彼には唯一の欠点があった。

それはユダヤ人を弁護するという性分である。

彼はヒットラーの「我が闘争」を読みかえしながら親友アドルフ・カミルに「なぜ君はユダヤ人なんだ」と問いかけた。

 

アドルフはヒットラー総統から直に勲章をつけてもらえた感動を母への手紙に書く。

そして母が日本人男性に好意を持っているという話に嫌悪感を持つと書いた。

アドルフにとってはもう日本人は二流民族であり自分自身はドイツ人でありたいと願っていた。

母は日本人でもドイツ人でもない特別な存在として愛していた。

9月1日、ドイツ軍は空と陸からポーランドへ殺到した。

第二次世界大戦の勃発である。

9月3日、英仏はポーランドを助けようとドイツに宣戦布告。

しかし一か月でワルシャワは陥落。ドイツはソ連と共にポーランドを分割占領してしまったのだ。

 

第12章

その年、その後の日本の運命を象徴するかのように零戦の機影が初めて本土の空に飛んだ。

ノモンハンではソ連軍と日本軍が衝突していたがそれを数か月の間、峠草平は膚で受け止めることはできずにいた。

彼はゴミ捨て場の放火を疑われずっと獄中にいたのだ。

そんな峠の担当になった仁川警部は峠から事実を聞き出そうとしていた。

警部はW大学の陸上部の先輩後輩の間柄でもあった。

しかし文書を失った今、峠にとってすべてはどうでもよくなっていたのだ。

 

ランプは峠を追って神戸のトアロードホテルに泊まることになる。

カウフマン邸にひとり住む由季江は寂しい日々を送っていた。

そこへランプを連れたクランツ氏が訪れたのだ。彼らの目的は由季江から峠の話を聞き出すためだった。

突然出会った峠に対し過剰な保護をした由季江に疑問を持っていたのだ。

 

獄中の峠はとうとう仁川警部にすべてを打ち明ける覚悟になった。

が、遅かった。

赤羽刑事は昏睡状態から覚め、文書を持って行方不明になったというのだ。

 

仁川警部は峠の話を聞いて赤羽刑事がゴミ捨て場に放火する目撃者を見つけ彼の無罪を立証した。

尚且つ警部は峠を自宅に招いたのである。

その様子をランプたちが目撃した。

 

峠は仁川警部の家で休む。家には仁川の末娘・三重子がおり彼女は峠を好きになってしまう。

峠は少しでも早く赤羽を追いかけたかった。

すぐに仁川をせきたて赤羽が以前見張っていた小城先生の家を訪ねることにした。

が、小城先生はどうやら赤羽と共に「くにに帰る」と大家に言い残していったのだ。

峠と仁川は小城先生のふるさとである若狭の道が浜へ赴くことにする。

三重子は峠を心配するが峠はそれどころではなかった。

 

第13章

道が浜に向かう列車の中で仁川は娘が峠を気に入っていることを話し「考えといてくれ」と伝える。

列車が停車した時に水を飲もうと下車した峠はランプ一味に襲われ肩を撃たれてしまい走り出した列車に乗りそこない追いかける。

峠は必死で列車に追いつき仁川はそこで降りてけがの手当てをさせる。

峠の傷は深く神経を切られていた。

一旦捜索を中止しようとする仁川に反抗し峠はひとり飛び出してバスに乗って赤羽の後を追いかける。

その途中、彼はいるはずのないランプの姿を目撃した。ランプの車は走り去る。

 

峠はランプを巻くために途中で下車にさらにやってきた列車に飛び乗り目的地の道が浜に到着する。

小城先生の家を探し出すとそこに彼女の姿はなく彼女の兄と老いた母がいるだけだった。

小城先生の兄は妹も連れの男も殺して海に沈めたという。

そして峠とともに船を出したが小城兄は途中で峠を殴り海に突き落とした。

 

溺れる峠を助けたのは仁川だった。

ふたりはそのまま小さな島へと渡る。

その島には小城兄が食糧を持っていっていたというのだ。

 

そしてさらにその後をランプが追っていた。

 

 

 

第14章

 

果たしてその小島には小城先生と狂った赤羽がいた。

文書は小城先生が預かっているという。

そこに現れたのは小城兄だったがその背中にはナイフが深く刺さっており彼は死んだ。

どこからか銃声がして小城先生が撃たれさらに仁川警部が撃たれ死んだ。

 

撃ったのはランプだった。文書をよこせという。

峠は文書の入った袋から重要な文書を抜き取り袋を赤羽に持たせて歩かせた。

ランプがその男に気を取られている間に峠は死んだ仁川警部からピストルを奪い形勢を逆転した。

だがランプもまた峠の後ろに回り脅した。峠は抜き取った重要文書を渡すしかない。

その時、峠は跳び上がってランプを撃ち抜く。

 

が、そのはずみでランプが持っていた重要文書が海へと散ったのだ。

通りかかった小船に峠は助けられた。

海に散った文書を探そうとして峠は気を失った。