2025年3月12日発売「早川書房」
配信日(Audible)2025/7/4
逢坂 冬馬作品初読書(初聴き)です。
ネタバレします。
SNSで見かけて興味を持ちちょうどよくaudible付きだったので聴くことに。
かなり長い小説だったがテンポよく続きが気になる惹きつけられる内容だった。
エンディングも良く凄いと唸る作品だった。
のだが、これが好きになるかとか感動するのかと言えばまた別の話になるのである。
点数をつけよと言われれば技術的に満点であるが感情的にはゼロというのか「点数ならず」という感じなのだ。
これはもう自分自身の好みの問題としか言えないので「おもしろい小説を探しているのだけど」という方にはお勧めできる作品だが「あなたが良いと思う小説は何ですか」という問いなら本作はまったく該当しない。
この感覚を言葉にしたいのだが今の私は表現できないでいる。
思えばそもそも本作を読み始めたのは本作中に「男性同性愛が描かれていてそれが素晴らしい」という示唆があったからなのだ。そして確かに本作の中には男性同性愛が物語の根幹として設定されていた。
私が今まで知ってきた日本の作品として(BL作品とカテゴライズされているものを省けば)ここまでしっかりと組み込まれた作品はなかったのではないかとは思えるのだけどそれが感動という気持ちを起こさせるかといえば恐ろしいほどその感情はなかったのだ。
いや、その描写は上質なものであった。
差別なく、かといって現実味がないわけでもなく「同性愛者であるふたりの男」が育む互いの愛情を描いている。
非常に教科書的に申し分のない高得点小説なのだがここまでなにも訴えてこない、というのも驚きだった。
それは本作が「エンタメ小説」という娯楽作品だからであって難しく考えるな、ということではあるだろうか。
ではそこまでである。
本作は高い技術で書かれた小説である。
現在の問題意識を取り扱う優れたエンターテインメントである。
だけどそこには私が読みたいと思う「何か」はなかった。
その「何か」とはなんなんだろう。
それがなければ人は映画や小説やマンガや音楽を必要としないのである。
ちなみに先日読んだ物凄いエンターテインメントSF『プロジェクト・ヘイル・メアリー』にはその「何か」があった。
感動した。