ガエル記

散策

『昭和天皇物語』能條 純一 その24

ネタバレします。

 

 

第142話◎関 行男

特攻に向かった関行男が戻ってきたのは天候の悪化と燃料状況により攻撃を断念したためだった。

落ち込む関を上官は励ます。

が、関行男の敷島隊は23、24日の出撃も悪天候に阻まれる。

が、25日関行男は特攻を果たす。

 

 

第143話◎次なる特攻

「関行男大尉率いる敷島隊は10月25日10時40分にレイテ島タクロバン東85度90浬の地点で体当たりを」

海軍軍令総部長及川古志郎は天皇に報告。

天皇は「そのようなことまでせねばならなかったのか」といった後「よく、やった」と伝えた。

 

前首東條英機は陸軍参謀総長梅津美治郎に「陸軍も早く特攻に踏み切れ」と急がせた。

 

梅津は天皇にそれを報告し天皇は鈴木貫太郎を呼び心中を吐露した。

鈴木は申し上げる。

「そろそろ腹を括る時期かと」

 

第144話◎栗田ターン

この頃天皇裕仁は執務室を従来の宮殿にある御学問所から防空壕兼用である「御文庫」に移した。

 

ここで天皇は栗田艦隊がアメリカ艦隊を撃退する作戦の中で「逆戻り」の進路変更をした、という報告を受ける。

そのため帝国海軍は壊滅的な結果となる。

その後、連合艦隊司令長官豊田副武は栗田健男に理由を問いただした。

栗田の答えは「あのまま作戦通りにレイテ湾に突入すればなにもかもうまくいったのか。間違いなく待っているのは全滅だ。軍人としてのメンツは保たれる。ただしそれだけの理由でレイテ湾に突入していいのか」であった。

 

昭和20年1月9日 連合国軍ルソン島・リンガエン湾上陸

 

1月10日栗田健男、参内。

天皇は栗田を労った。

 

退出しようとした栗田を天皇は呼び止め問うた。

「レイテ沖、艦橋で”北進(ターン)”を指示した時、隊員皆の表情を教えてほしい」

これに対する栗田の返答は「皆、安堵の表情をしていたと。この作戦は特攻同様玉砕ありきの作戦でしたから」であった。

天皇は無言であった。

 

天皇に出された食事の側に置かれた紙に「これが連日のごとく出撃している特攻隊員に対しその壮途にはなむけて出す料理でございます」と書かれていた。

 

 

第145話◎素直な本心

硫黄島の摺鉢山山頂に星条旗が掲げられた。

陸軍参謀総長梅津美治郎そして海軍軍令部総長及川古志郎は参内し「栗林師団長率いる300名の守備隊が敵に総攻撃を。それ如何ではひょっとして」と伝える。

天皇は「玉砕覚悟の総攻撃に何を期待する」と応えた。

 

昭和20年3月10日東京大空襲。

天皇と皇后は防空壕へと入る。

硫黄島、次に米国が狙うのは沖縄か、そして次は本土、と天皇は考えた。

 

皇太后・節子は鈴木貫太郎を呼び寄せた。

「あの子は小さな頃から沢山の大人に囲まれ自分の本心を素直に言う術を知らない。母の頼みです。どうか親代わりになってあの子の胸中の苦悩を払拭してほしい。また多数の国民を耐えがたい激しい苦痛から一緒になって救ってほしい」

鈴木はその言葉を「首相になれ」と解釈した。

 

宮城では陸軍参謀総長梅津美治郎が参内。

硫黄島で栗林守備隊総勢300名が総攻撃を決行し結果健闘空しく全滅、と相成りました、と報告した。

 

このマンガ作品をどう評価できるんだろう。

あまりにも空しく悲しい。

この話がフィクションであるなら「こんな愚かなことを誰がする?」という作戦を繰り返し頂点であるはずの天皇は無表情で睨み続けるだけ。

「日本人ならその裏を読めよ」というだけのマンガなのである。

むろんこれはそうした「日本人らしい日本人」を描くという究極の日本人マンガ作品なのだ。

この間では天皇の母である皇太后が「あの子は小さな時から本心を言う術を知らない」と鈴木貫太郎に伝え「親代わりとなってほしい」と願う。「あの子の苦痛を払拭してあげて」と。

自分で自分の考えを発することができないのである。

いやこう書いてても「それができないのが日本人特に日本人男性なのだとわからないのか」という声が聞こえてくる。

やれやれ、やっかいな国だよ。

 

しかし私は当然だが戦後生まれで戦後の教育で育った。

自分の考えははっきり述べないとわかってもらえないのだ。

それでも日本人は「わかるだろ、日本人なら。わからないなら日本人ではない」という相変わらずの主張を続けている。

いやもしかしたら世界中同じような人間がいるのかもしれないが。

 

ここでも「プロジェクト・ヘイル・メアリー」が思い起こされる。

自分の思いを伝えるのは対話でしかない。

それをグレースとロッキーは教えてくれる。

それなくしては互いをわかりあえることはないんだと。