ガエル記

散策

『レディ・バード』グレタ・ガーウィグ

2017年「ユニバーサル・ピクチャーズ」

本作品名を知ったのはかなり以前で気になってはいたのですが自分の好みがどうしてもこういう「普通の女の子の青春」的なものを選ばないのでそのままになっていました。

先日ライアン・ゴズリング目的で『バービー』を観て感激し「それまでのゴズリング映画で最高なのではないか」とさえ思えました。主役でもないのに。

そこまで思わせてくれたので監督のガーウィグ作品を追おうと思いつつまたしても躊躇しながら観終えました。

素晴らしい青春映画でした。

 

 

ネタバレします。

 

 

仕方ない。これまで映画界で「女性監督」はほんのわずかであった。

監督が男性か女性かで作品の印象は大きく変わる。

 

これまでもヒロインの青春物語映画作品は数えきれないほどあったはずだ。

だがそれはたとえ原作が女性のものであっても脚本が女性のものであっても最終的に男性監督の身体を通して作られてしまう。製作者も影響するだろう。

本作は脚本&監督が女性(というかどちらもガーウィグ)で製作の三者の中にひとり女性の名がある。

私のかなり長い映画鑑賞期間でやっとついにここに至ったのかという思いである。

 

じゃあ、早く観ろよということでもあるが。申し訳ない。

 

本作はグレタ・ガーウィグ監督自身の自伝的映画でもあるという。

「『大人は判ってくれない』の女性版のような映画にしたい」というコメントは大きく頷ける。まさにそういう印象でしかも現代的である。

 

本作のヒロインは模範生ではない。だが同時に極端な異端児でもない。

かなり自意識が強く偏執的でもあり自己中心のようにも見え時には思いやりに欠ける気もするが繊細でもある。

家族を愛し友人もいるのにその重要性がまだわかっていない。

 

もし若い頃にこの映画を観ていたらやっぱり好きにはなれず途中でやめていたのではないだろうか。

今なら彼女の未熟さがむしろ微笑ましくも思える。

そして成長していく彼女に素直に共感できるのだ。

 

本作に関しては無理に誰かを説得することはできない。

この映画を観て素直にどう感じるのか、ということだろう。

それにしても本作品がアメリカで大ヒットし女性監督としては史上最高の数字を出したというのはやはり意義があると思う。

というのは女性として肉体的に全裸になるのではなく魂を露わに表現したことで大きな共感を得たのだから。

もしかしたら時が経てばその評価は謎になるかもしれないが現時点ではこの映画は衝撃であったのだ。

 

いつもイライラし常に不平を言い立てるヒロイン。

顔には吹き出物があらわでスタイルもセクシーとは言い難い。

自己主張ばかりするが一切努力はしない。勉強もしない。部屋も片付けない。母親の手伝いもしない。

だが姑息な策略には余念がない。

こんなヒロインは今までいなかったのではないか。

しかしデブの親友ジュリーを裏切りイケてる女子と仲良しになるくだりは業田良家『自虐の詩』の幸江さんと熊本さんを重ねてしまう。

なんならその後にジュリーと仲直りするところもそっくりである。

 

グレタ・ガーウィグ監督作品『レディ・バード』と『バービー』の評価はこれまで「女性の映画監督がなかなか生まれなかった」ということが大きく影響しているはずだ。

女性映画監督はやっとここまで来たがこれからどうなっていくのかはよくわからない。

映画製作は大金を動かすことになるから。

小説やマンガを産むことと同じように女性映画監督が映画を産むようになれたら、と願っている。

 

作品中、レディ・バードが養子である兄がアジア系(?)であることから「兄さんはいいわね(アジア系だから特別枠で)」と皮肉をいうのもおもしろい。

色んな嫉妬がある。日本人もよく言ってる。非日本人である人に対して。