1962年「松竹」
田中絹代が監督として手掛けた六作品の最後の映画作品であります。
私としては『乳房よ永遠なれ』『月は上りぬ』に続いて三作目の鑑賞です。
ネタバレします。
前に観た二作品同様「女性の生き方」を徹底的に描いた作品だった。
最後の作品だけにその思いも濃厚に込められている。
主人公は千利休の娘である”吟”
wikiで見る分には利休の数人いる娘を合わせて作り上げた女性像のように思える。
その女性像を描いた今東光原作の映画化である。
”吟”は美しいだけでなく自我を持った女性である。
キリシタン大名で妻帯者の高山右近を恋い慕っているのだがその思いは一途に激しいものでありしかも彼女はその思いを率直に打ち明けぶつけていく。
しかし当時権力を恣にしていた豊臣秀吉とその家来石田三成によって吟の思いは踏みにじられついには自害するしかなくなるのだ。
その前に吟はやはり権力のためにその身を弄ばれる運命に抗うために命令を拒否し磔になることを選んだ女性の表情を見る。
吟もまた権力者の傲慢に逆らうために自らの自死を選ぶ。
物語としては力なき女性でしかない吟が踏みつけられていくとしか見えないのだが田中絹代監督はその中でも精一杯抵抗していく女性を描いているのである。
戦国時代の後、鎖国状態となってしまう江戸時代の以前の安土桃山時代は42年ほどの短い期間であるが日本史上でも独特の雰囲気を持っている。
南蛮貿易そしてキリスト教布教が浸透していった。
吟が恋する高山右近がキリシタン大名だというのも吟の好みを思わせる。吟自身はキリスト教徒にはなりたくないのもちょっとおもしろい。
とにかく豊臣秀吉がゲスの権化として描かれ女性の生き方を妨げる。
田中絹代の時代にもそういう思いがあったのだろう。
やはり観るべき映画だった。
田中絹代監督作品がもっと人の目に触れる機会が多くなることを願う。