1959年9月~12月「週刊朝日」
これも五回映像化されているという。
ミステリーというよりもひとりの心弱い男が追い詰められていく話であります。
ネタバレします。
でもおもしろい。
妻と二人の子を持つ主人公沖野一郎は銀行に勤めているため仕事上で割烹料理屋の女将・前川奈美と知り合い恋人関係になる。
美しい奈美に夢中になっていく沖野だったが大学時代の同期でありながら今は上司となっている桑山から請われて奈美と会わせてから彼の人生は大きく崩れていく。
と説明されているからつい書いたが壊れていったのは妻子がいるのに奈美に溺れていったことから始まっているので桑山のせいではないのだ。
だがとにかく小心者の男の心理を描くのが清張は物凄くうまい。
病弱な妻を自殺に追い込み彼女が助かってからもただ邪魔に思うだけで奈美だけをひたすら思い続ける沖野。
やり直す機会は幾度もあったが沖野は自分から自分の首をしめていくのだ。
むろん最初の失敗は桑山を疎んじながらそのまま彼の銀行に入社してしまったことなのだ。
流されるままに沖野は流れていきついにどうしようもなくなっていく。
あとがきによると本作は沖野が絶望の中に佇むところで終わるはずが「あまりにも救いがない」という編集部の意向で違った結末になってしまったらしい。
清張さんもそういうところもあるのだ。
まあこれはこれで窮鼠猫を食むというのでいいのではないだろうか。
突如現れる伊牟田博助の風貌が気になる。