1960年1月~4月「週刊朝日」
劇作家・関京太郎が依頼を受けたテレビドラマのシナリオで「汚職事件の遺族」を描こうと構想を練る。
そのために実際に犠牲者となった遺族の住所を調べようとしたがどうしてもわからないということになり石はいっそうこの汚職事件に興味を持つ。
ネタバレします。
ここまではいかにも松本清張ミステリーらしい流れだがここから少し様相が変わってくる。
自宅を一向出ようとはせず電話で様々に聞き込みをする関京太郎の調査に二十七歳独身で才気煥発な女性・森沢真佐子が参加するのである。
彼女は裕福な家のお嬢さんが洋裁でも習いに来ているくらいの気持ちで関宅に「シナリオの書き方」を教えてもらいに来ているという。
初老の関氏の足となって駆けずり回る真佐子は興味津々で明るく生き生きした活躍をしていく。
こうしたスタイルはジョセフィン・ティ『時の娘』をはじめ様々なバリエーションで存在するものだろうけど清張氏を思わせる劇作家のいわゆる「こんなかわいい女性が相棒だったらいいなあ」というファンタジーにもなっているのだろう。
今でいえばちょっと毛色は違うが『岸辺露伴は動かない』の露伴と泉京香のような関係でもあろうか。
主題は「汚職事件の遺族」という現在でも思い当たる事件が様々にある重苦しい辛いものであるのに真佐子の軽い「こうなったらとことん調べちゃいましょう」というノリで楽しく読んでしまうのである。
関京太郎氏が時々やる気をなくしてしまうのもちょっとおもしろい。
こうした軽い作風の時も松本清張はすごく上手い。
清張さんがもう一人いてこっちの軽いノリでシリーズものを書いてくれてたらなあ、とつい思ってしまうのだ。