1960年4月~6月「週刊朝日」
松本清張全集4「黒い画集」の最後の収録作品となる。
これもここまでの作品とは一味違う建付けであった。
ネタバレします。
本作はまったくの「ベッド・ディテクティブ」かと思いきや実は・・・という作品であった。
実をいうと途中で「うん?」と気づいてしまったのだがこれはもう松本清張が何かやるだろうと思っているからでしかない。
本作品で最も気になるのは重要な役割となっている50歳くらいの女性が任じる「付添婦」である。
書き手であり主人公である「私」=沼田一郎は42歳だがこの「50歳くらいの付添婦」河原タミを「おばさん」と呼んでいる。
今でも「あり得ない」ということもないだろうがあまりないような気もする。
1960年の作品だ。
年齢感覚がすべて現在よりも年かさに感じられる。
それは置いとくとして「付添婦」という仕事は1997年に廃止となった、らしい。
現実的に「付添婦」が廃止になったことに何らかの問題意識を持ったことがないのだがそれまで必要とされてきた職業がある時廃止になるというのは不思議な気もする。
その存在が失われて今日まですでに三十年近く経っているのだが復活されてはいないのだがその「しわ寄せ」はどこにいったのか。
今現在から未来、こういった「自分で自分の世話ができない人間」の介助をする職業こそがもっとも重要なものに思える。
たぶん「ロボット」的なものがそこに加入されるのは見えているが早くそうした介助ロボットの開発を期待している。
そうなると介助ロボットミステリーなるものも書かれるのだろう。
楽しみだ。
さて本作は沼田一郎なる「私」が肝臓を悪くして入院した朝島病院での出来事を「私」が記述していく物語である。
先に書いた付添婦の河原タミが面白おかしく噂話をしてくるのを「私」が聞くことになる。
そして何とある朝、朝島病院院長が看護婦長と駆け落ちしたという噂が流れる。突如二人の姿が消えてしまったのだ。
続いて薬室主任の堀村が首吊り自殺し、その後笠井事務長が飛び降り自殺した。
その騒ぎの中少々の薬品が盗まれてしまう。
そんな時入院患者のひとり金子京太は「入院費の二割引き闘争」を始めた。
騒動の原因は麻薬取引であった。
松本清張作品をここまで読んでくると氏はかなり「麻薬取引」に関して強い興味を持っているように思われる。
日本という国において「麻薬」はそれほど大規模ではないがそれでも廃れることなく密かに使用されて続けている。
清張氏はあれこれと未来を予感しているがこればかりは当たってほしくない。
麻薬以外のなにかにはまろう。