ガエル記

散策

『流転の王妃』田中絹代

1960年「大映」

映画やドラマは数えきれないほどあるのになかなか観たいものが見つからない中で「アマゾンプライム「KADOKAWA」にて鑑賞。

 

ネタバレします。

 

 

この年代の歴史物語にものすごく興味があるのだけど作品自体がそれほどない上に興味を持てるもの、充実しているもの、となるとなかなか出会えない。

その中で本作はかなりの価値があると思えた。

 

何度も書くけど田中絹代は女優として有名だが監督だったというのは最近まで知らずにいた。

ここに至って続けて鑑賞したがどれも上質な映画作品でなぜもっと話題にならないのかと思うのだ。

田中絹代作品はどれも「女性の生き方」について描いている。

本作は侯爵家の令嬢として大切に育てられてきたひとりの女性がある日突然「満州国皇帝の弟との結婚」を命じられる、ところから始まる。

皇室の血統を引く身分であるところからの婚姻で関東軍の計略であった。

絵画の勉強をしていた龍子(嵯峨浩)は否応もなく満州での結婚生活を強いられる。

その生活は皇帝の弟との新居というにはあまりにも貧相で経済的にも苦しいものだった。

 

描写のひとつひとつに疑問を投じていたらきりがないのでこの映画のとおりとして感想を書く。

愛新覚羅溥傑と嵯峨浩の話は初めて知ったわけではなく満州国の物語に興味を持っていた者としては当然知っていたものだがほんとうに「愛があれば生きていける」という証明のような物語だ。

あからさまな政略結婚以外のなにものでもないが偶然にも救いだったのは溥傑と浩の相性が良かったことだったとしか言いようがない。

皇帝の溥儀は問題ありの人格だが本作ではその溥儀でさえやがては浩への嫌疑を晴らし謝罪するという優しさがあった。

とはいえ皇后の婉容の悲惨さはそのままであった。

 

この当時の日本、というか関東軍という恐ろしい組織構造に強い興味を持つ。

それは今もなおこの国の中に蠢いているナニカに思えてならない。

松本清張『神々の乱心』を読むためにもこの映画は一つの参考になると思う。