ガエル記

散策

『漫画版 徳川家康』横山光輝 原作:山岡荘八 第二巻

家康の幼少期。数えで六歳の竹千代が生まれ育った岡崎城から今川義元駿府城へ人質として送られていく途中で熊の若宮・波太郎の指揮で奪われ尾張織田信秀のもとに送られていく場面から始まる。

ここで竹千代を届ける役目をに任じられた金田与左衛門が任務が果たせず切腹するというくだりがある。この考え方が愚かしい。

いわばこの松平家の生き様がいかにも弱者の生き様で忍耐と犠牲なのがあまりにも虚しくてげんなりするのだがそこへ登場してくるのが織田信長で対照的に陰がなく生き様が明確で面白い。

 

例えば女性に対しての接し方において松平広忠の歪んだ愛情の経緯はおぞましい。信長は濃を愛しているが子供が出来なかったため側室を作るとはっきり濃に告げ見染めた女性たちにも無理強いはしないと明言する。

こんな風にあっさりと生きることができたらストレスも少ないだろう。

家康は明るい性根ではあるようだけどやはりそもそもが松平であるために単純に生きることができない。

 

さて『三国志』直後としてはどうしても比較してしまうけどどう見ても織田信長曹操であり徳川家康劉備玄徳であります。かといって今川義元孫権ではないのでやはり『三国志』にはならないのは当たりまえ。

 

そして最も違うのは女性たちの活躍です。

竹千代の母・於大は自ら足を運び信長に我が子の命乞いをする。

この場面はとても良い。

 

一方竹千代の父・広忠はこうした於大の行動を嫌い「於大を斬る」と言い出す。それは醜い自分自身を忠義の家来八弥に斬らせるための言葉だったのだがどこまでもねじくれているこの男である。

家康がこのふたりの因子を持つ子どもであると覚えておかねばならない。

それにしても家康が幼少期を他家で過ごしたのはむしろ彼のために良かったのではないのだろうか。

 

そして松平竹千代は織田信弘と交換されることとなり今度は駿府城今川家で人質となる。