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『王妃マルゴ』萩尾望都 その8

最終巻です。 ネタバレします。 美しく気高いマルゴは最期までアイデンティティを失わなかった。 自我を持ち続けた女性だった。 彼女は母后カトリーヌに厳しく躾けられ母を怖れ続けた女性で、だからこそ萩尾望都はマルゴを描いたと思われるのだが作者自身の…

『王妃マルゴ』萩尾望都 その7

うるわしい『王妃マルゴ』もついに七巻となってしまいました。 ネタバレします。 マルゴはナヴァルのアンリをベアルンに残しひとりフランスに戻る。 そしてサパン、今はジャックと呼ばれている我が子とついに再会する。 ジャックは父親かと思っていたアンリ…

『王妃マルゴ』萩尾望都 その6

さすがに表紙になることはないがやはり歴史的に一番のヒロインはなんといってもカトリーヌ・ド・メディシスでしょう。 彼女の表紙は・・・・無理ですかねえ。 ネタバレします。 シャルルが24歳で死去。 アンジュー公アンリはポーランド女王に言い寄り宝石類…

『王妃マルゴ』萩尾望都 その5

ではマルゴ自身をどう思うのかと言えば強く惹かれます。 一般的な歴史としては派手な男性遍歴と謳われてしまう彼女ですがこうして萩尾望都のマンガとして描かれれば純粋に愛を求めた女性として共感できるし魅了されます。 ネタバレします。 五巻の冒頭は萩尾…

『王妃マルゴ』萩尾望都 その4

アンジュー公アンリ。なんやこいつ。むかつくヤツ。 しかし物語には絶対必要なヤツなんよな。 ネタバレします。 そんなアンリに対しマルゴは嫌悪を激しくぶつける。 マルゴがはっきり文句を言う女性なのが良いのだなあ。 一方、シャルルはコリニーに上手く言…

『王妃マルゴ』萩尾望都 その3

なぜシャルルが一番好きなんだろう。よくわからん。 ネタバレします。 マルゴの美しさは輝くばかりとなっていく。 ギーズとの恋は秘められたものだったがふたりの間でより強くなっていた。 母后カトリーヌへの怖れは変わらないがスペイン語やラテン語が得意…

『王妃マルゴ』萩尾望都 その2

アンリ・ド・ギーズ。 亡き父の仇を討つために自らの顔に向こう傷をつける。 そんな豪放磊落な男にマルゴは強く惹きつけられる。 ネタバレします。 マルゴたちは母后カトリーヌに従いフランス一周の旅に出る。 ところで私はアンリ・ド・ギーズよりシャルルが…

『王妃マルゴ』萩尾望都 その1

「月刊YOU」2012年9月号~2018年11月号→「Cocohana」2019年1月号~2020年2月号 16世紀フランス。 後に王妃マルゴとなるマルグリット・ド・ヴァロワの一生が描かれる。 カソリックとプロテスタントの対立が軸となる。 ネタバレします。 王妃マルゴ。マルグリ…

『陽だまりの樹』手塚治虫 二巻「鳴動の章」

ネタバレします。 冒頭の丑久保陶兵衛とその妻のエピソードが怖くて一番記憶に残ってしまった。 本書の熊菱という蘭方医に臨月の妻を診せたところ「すぐに産ませた方が良い」と言って薬を飲ませたが生まれる気配はなく妻は苦しみだした。 慌ててその医者は陰…

『昭和天皇物語』能條 純一 その18

ネタバレします。 裕仁は良子に話す。 「日本人とドイツ人は似ていると言われている。堅実で勤勉で几帳面で頑固で組織愛に満ちている。形式を重んじあまり外交的でないところも似ているらしい」 良子は「だから日本はドイツと手を組んだのですか」 「だから…

『昭和天皇物語』能條 純一 その17

泥沼に入っていく。 ネタバレします。 昭和13年1月 近衛文麿首相が「爾後国民政府を対手とせず」という声明を出す。 後に裕仁はこの声明をどういうつもりで発したのか、と問うが近衛は「私自身南京陥落で浮かれていたのでしょうか。自分でもよくわからず悔や…

『昭和天皇物語』能條 純一 その16

ネタバレします。 昭和12年1月25日午前1時40分宮城 宇垣一成参内。天皇に内閣組閣を命じられる。 これを聞いた石原莞爾は大いに嫌うが梅津美治郎は「軍部大臣現役武官制を使えばいいじゃないか」とあっけなく言う。軍部大臣は現役の軍人に限定する制…

『昭和天皇物語』能條 純一 その15

おかわいそうです。 ネタバレします。 2月27日午前3時50分戒厳令公布。 満洲国を創った石原莞爾が急遽戒厳司令部の責任者に任命される。 まずは天皇陛下に奉勅命令を出していただく。反乱部隊は直ちに原隊に戻れの奉勅命令だ。 午前8時45分。杉山元参謀次…

『昭和天皇物語』能條 純一 その14

この点目の陛下が大好きです。 右の方が鈴木貫太郎さん。 ネタバレします。 安藤輝三が歩3に帰ると村中孝次が来ており「眞崎甚三郎閣下が教育総監を更迭された」と知らせた。「これは間違いなく永田鉄山軍務局長を中心よして統制派による我ら皇道派弾圧の陰…

『昭和天皇物語』能條 純一 その13

つらい。 ネタバレします。 昭和7年12月8日スイス・ジュネーブ国際連盟本部 国際連盟総会。 日本全権の松岡洋右は最初「日本国の軍事行動には一片の非もありません」として「我が国民の大多数は今なお連盟の味方であると。これまでのようになお忠実に国際連…

『昭和天皇物語』能條 純一 その12

ネタバレします。 白川大将が指揮した上海派遣軍は中国軍を撃退し上海を元通りにすると停戦命令を出した、という報が成される。 裕仁は安堵した。 満洲長春では板垣・石原もこの報を聞きあきれていた。 しかし「それより」と石原は言う。「板垣さん、リット…

『昭和天皇物語』能條 純一 その11

幸せそうな天皇のひととき。 ほんとうに大変なんだよ天皇って。 ネタバレします。 節子(さだこ)皇太后、やっぱキシリア・ザビにしか見えん。 日本でこういう女性の描写が少ないからなんだろうけど。 本作のキャラクター(っていうのもおかしいが)で屈指の…

『昭和天皇物語』能條 純一 その10

ネタバレします。 昭和4年9月 皇后、内親王(女子)出産。 元・宮内大臣田中光顕が側室候補の写真を携えて宮内省を訪れる。 雍仁、節子(あれ、勢津子になってないのね)をつれて参内。節子妃は流産をして髪を切っていた。 (出産が女性を苦しめる世界はおぞ…

『昭和天皇物語』能條 純一 その9

鈴木貫太郎氏とその妻タカ。 タカは昭和天皇の幼少期迪宮様と呼ばれた時期の御用掛だった女性で裕仁はずっと彼女を母のように思っていたと語っている。 ネタバレします。 4月の枢密院本会議に疲れる昭和天皇。 そして陸軍歩兵第三聯隊では秩父宮が初めて永…

『昭和天皇物語』能條 純一 その8

安藤輝三です。 ネタバレします。 上の画像の上段コマの人物が裕仁の弟・秩父宮雍仁。雍仁は陸軍に所属しており安藤輝三から慕われていた。 安藤輝三は後に2・26事件に大きく関与する。 節子(さだこ)皇后は再び女子学習院に赴き松平節子(せつこ)を呼…

『昭和天皇物語』能條 純一 その7

本作、一番のイケメンが裕仁親王である。 ネタバレします。 宮城では摂政の宮に山本権兵衛が加藤総理急死のご報告に参上していた。 次の総理は山本自身だと聞き裕仁は「総理についたあかつきには陛下のもとにいの一番でご挨拶に参内してほしい」と頼んだ。 …

『昭和天皇物語』能條 純一 その6

前回のイーペル戦場跡に行った場面です。 ネタバレします。 さて 日本、東京では期待されていた‶普通選挙”が設立されなかったという国民の怒りの声が原敬総理に投げられていた。 また帝国陸軍からは‶シベリア撤退”が不満を噴出させていた。 原総理は「本格的…

『昭和天皇物語』能條 純一 その5

『ローマの休日』のような、かな?? 皇子様の大冒険。 ネタバレします。 原敬総理の後押しで裕仁皇太子はついに欧州へ旅立つ。 お召し艦「香取」に乗って。 しかしお供は年配者ばかりで・・・気の毒と言うか、そういうものと思っておられるものか、せめて同…

『昭和天皇物語』能條 純一 その4

カッコいいとこ見せる皇太子です。 ネタバレします。 母方から薩摩の血統を継ぐ久邇宮良子を絶対に皇太子妃にさせたくない長州の山縣有朋に「良子の兄弟に色弱の疑いがある」と報告が入る。 おそらく島津家に色弱の遺伝子を持つ疑いがあるとしてならば良子女…

『昭和天皇物語』能條 純一 その3

ネタバレします。 大正4年3月 この頃、裕仁皇太子は学友5人と共に各地の天皇陵、火葬塚などを行啓している。 東宮御学問所歴史御用掛、白鳥庫吉の教育方針だった。 足立タカは裕仁殿下の10年間の養育日誌を記していた。それは御側日誌とは別の記録だった。 …

『昭和天皇物語』能條 純一 その2

この顔見せたいよね。 ネタバレします。 明治38年、5月。 東京女子高等師範学校附属幼稚園の先生をしていた若き女性・足立タカは「迪宮様にも鶴の折り方をおしえてもらえないか」という誘い文句で昭和天皇が4歳で迪宮(みちのみや)の養育掛となる。 この養…

『昭和天皇物語』能條 純一/原作:半藤一利/脚本:永福一成(9巻まで)/監修:志波秀宇 その1

この作品の感想を書ける気がしないのですがここ最近あまりにもはまり込んでしまったので思い切って書いてみます。 ネタバレします。 紙の本とデジタル本の両方で現在出版されている15巻までを読み終えた。 なのでまず全体の感想をざっくり書いてみる。 最…

『史記』横山光輝 ⑮ 再読 最終話「禍の男」

第2話は割愛して最終話「禍の男」に行きます。 ネタバレします。 前140年、漢朝は七代皇帝が即位した。十六歳の武帝である。 『史記』の筆者司馬遷の現役の時代である。 武帝は歴代の皇帝の政策を受け継ぎ国境を犯す匈奴には今までより多大の贈り物をして和…

『史記』横山光輝 ⑮ 再読 第1話「呉楚七国の乱 前後編」

ついに最後の巻になります。 ネタバレします。 前話で死んだ晁錯の物語。 漢が呂氏を討滅し文帝の時代に入った頃、晁錯は法家の学問を学んでいた。 文帝は古代からの政道を記した尚書(書経)を求めていた。ところがそれを知る伏生は済南に住み九十歳を超え…

『史記』横山光輝 ⑭ 再読

ちょいと駆け足で参ります。 ネタバレします。 前181年に起こった日食は呂后の心に大きな不安を与えた。 呂后は灞睢のほとりに祭壇を作り厄払いを行ったその帰りに青い犬に咬まれるという奇妙な夢を見た。占い師によるとそれは如意様の祟りと出た。 如意は戚…