何度目かの鑑賞です。
華やかに美しく簡潔で解りやすい作品でもあるのでつい観てしまう。
いかにもヘンリー八世を思わせる横幅たっぷりの豪華な衣装にも見惚れます。
本作はタイトル通りブーリン姉妹の物語なので王はむしろ狂言回しとも言えます。
王と言うアイコンとしてふたりの姉妹の差異を表す役割です。
ヘンリー八世はドラマでも観ましたがまさに「王」のイメージそのものです。体も大きく自信もあるはずで尊大です。
女王も認められるイギリスなのに継承者は息子でなくてはならないと譲らない。
女好きで後に大食漢として生命を縮めてしまう。
王様の役として申し分ない。
ヘンリー王と関係を持ちたかったのはアンとメアリーの父親だ。
権力を欲した彼はなんとしてでも王と自分の娘のどちらかを「お相手」にしたいと画策する。
そしてアンは父親の願い以上のものを手に入れる。
アンは王に言う。
「もっとも偉大な男は心の広く他人を許す人だ」と。
王はその言葉を自分への賛辞と喜ぶがその言葉は後に皮肉として突き刺さる。
男児だけを後継者として望んだヘンリー八世は結局エドワードだけを得るが彼は15歳で死亡し本作で魔女と罵られたアン・ブーリンが産んだエリザベスが女王となってイギリスの最も繁栄した時期を治めることになるのも皮肉だ。
しかもヘンリーの子どもたちは誰も次世代を産まなかったので彼の血統は途切れてしまうのだ。
最も偉大な男は寛大な心を持つ者、というアンの言葉はいわば予言となってしまったのだ。
ともあれ映像が美しく魅力的で何度観ても楽しめる。それぞれの人物の顔を見ているだけでも面白いのだ。
高貴で気品あるキャサリン王妃も見ごたえある。野望の女アン・ブーリン、そして誠実で静かな女メアリーもまた。
誠実であるというのはもっとも強いのだと思わされる。