ガエル記

散策

『殷周伝説』太公望伝奇 その6 横山光輝

七巻突入です。

聞仲太師、『封神演義』でもめちゃくちゃカッコいい人でしたがこちらでも最高のイケおじです。

 

 

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

 

聞仲太師が12年ぶりに戻りさすがの紂王も彼の前ではすくみ上った子どものようになってしまう。他の者が刑罰を怖れて言えなかったことを聞仲太師は紂王につきつけていく。だが妲己を廃し費仲らを死刑にし鹿台を破壊することだけは紂王も即決できずにいた。

このままいてくれたらもしかしたらという気もしたのですがそれじゃあ話が進みませんよね。残念ながら今度は東海で反乱がおこり聞仲太師は平定に赴くこととなる。聞仲太師が出陣してしまうと紂王は元の木阿弥になってしまった。

 

一方、文王と太公望らも東海の反乱を聞き文王を総大将として崇侯虎を討ちとる決意をする。

武吉は戦を嫌がったが太公望は「腐ったリンゴを取り除くことで他のリンゴを守るのが法だ」と教え官職を軽んじた罪で武吉を三日間画牢に入れる。

武吉は話し合いの中で太公望に「身内だ」と言われて感動し太公望のためには命を捨ててもいいと思い雨が降っても画牢から出なかったのである。

 

崇侯虎の崇城は主が朝歌にいるため息子崇応彪が主となっていた。文王はこれまで戦をせず話し合いで何事も解決してきたために西岐軍は戦いを知らない。崇応彪はそのため西岐軍を侮っていたが太公望が軍師となった西岐軍は違っていた。次々と将軍を討ち取られた崇応彪は籠城を決めた。

籠城されてしまうと戦は長引く。太公望は崇侯虎の弟崇黒虎を味方に引き入れるために南宮适将軍を使者にした。

崇黒虎は太公望の手紙を読み理解はしたが身内である兄を裏切ることは不義であると悩んだ。しかし一晩悩み抜いた崇黒虎は太公望の協力をして家門の汚名をそそぐのが使命だと決意した。

とはいえ兄の崇城へ向かう道では崇黒虎はまだ揺らいでいた。

 

ところが甥である崇応彪に迎え入れられ目もくらむような御殿を見て「侯の身分で造れるものではない。大勢の人民を泣かせたのであろうな」と感じる。

ねぎらいの宴で出された山海の珍味と器の豪華さに崇黒虎も「心の中のわだかまりも消えた」のであった。

 

崇黒虎は味方をあざむくためにあえて南宮适と一騎打ちをして見せ兄を連れて行くと約束する。

そして未だ父に報告していない崇応彪に進言して彼には紂王に対し自分は兄の崇侯虎に書をしたためた。

 

崇侯虎は弟が助けてくれていると信じて太公望の罠にあっさりとはまってしまった。文王は弟が兄を裏切ったと聞いて驚き崇侯虎父子の処刑を止めようとしたが太公望は処刑を急いだ。

崇侯虎の城の後始末は弟の崇黒虎にゆだねられた。

 

西岐軍は初戦で勝利した。が、文王は体調を崩し寝込んでしまう。崇侯虎の処刑が優しい人柄に衝撃を与えてしまった。

文王は後継者姫発に「太公望を我が父として敬い仕えよ」と言って一礼させた。「これで後顧の憂いがなくなった。周王朝を誕生させよ」と言い残し笑みを浮かべて亡くなったのである。

太公望は「文王に廻り合うまでなんと長かったことか。そして回り合ってなんと短かったことか」と涙した。

 

国中が文王の死を悲しんだ。

そして息子の姫発が即位し武王を名乗ったのである。

 

このことは上大夫の耳に入り上大夫は急いで紂王の異母兄・微子に伝えるが微子は「惜しいお方を失った」という。上大夫は「息子の姫発が紂王の許可なしに勝手に武王を名乗ったことは一大事です。すぐにご報告せねば」と進言したが微子は「紂王は正月の準備で大忙しだ。やめておけ。相手にされぬ」と答えた。上大夫は仕方なく自分で報告に行くと紂王は「姫昌が死んだ」というところだけを聞き取って大喜びだった。

「これは正月前に縁起のいい話だ」

周囲の者もこれに「おめでとうございます」と頭を下げる。

紂王は喜色満面で上大夫を下がらせたのだった。

 

「息子の姫発が勝手に武王を名乗っている」という報告はすっかり無視されてしまった。紂王の笑い声を背にしながら上大夫は「いやな予感がする。殷を滅ぼすのはこの姫発ではあるまいか」と考えるのであった。

 

ほんとうに「いやな予感」をするねえ上大夫。いやいや良い予感ですぞ。

 

さて八巻。冒頭から悲しい話。

新年の朝賀に文武百官が朝廷に訪れる。黄飛虎夫人である賈氏もまたその一人だったが儀礼の後に黄飛虎の妹である黄貴妃と語らうのを楽しみに来ていた。

賈氏は妲己に目をつけられてしまい姉妹の契りをしたいと言われ受ける羽目になる。

しかも妲己は殷の禁制である「君主は臣の妻にまみえず」という礼法を紂王に破らせ無理に会わせてしまう。

すると紂王は賈氏を酔わせ手籠めにしてしまうのだ。

賈氏は摘星楼から身を投げて死んでしまった。

黄貴妃がいっこうに現れない賈氏を案じていると「賈氏様が摘星楼で墜落死されました」という報告がなされ驚いて紂王の元へ駆けつける。

黄貴妃は紂王の態度に疑惑を持ち王が賈氏に手を出したのだと悟る。

詰め寄る黄貴妃に激昂した紂王は黄貴妃もまた摘星楼から突き落としたのだ。

 

新年の宴会を催していた黄飛虎のところへこの報はもたらされた。あまりのことに黄飛虎は怒り狂う。

息子たちは嘆き兄弟たちももう忠義を尽くす必要はないと言い立てた。

「君主が正しくなければ臣は君主を見捨てることができる。これは不忠にあらず」

黄飛虎は殷を見捨てると決意する。黄飛虎は一族で話し合いかつて助けた西伯侯姫昌の西岐へ逃げることにした。

その大行列が出ていくのをなぜか城兵は問いたださず見て見ぬふりをした。

黄飛虎は出ていく前にせめて紂王に一太刀浴びせ妹妻の無念を晴らしたいと紂王に迫った。

紂王は若い頃は武芸に秀でていたが今は不摂生のため体力がなくなりすぐに逃げ出した。家来たちはこれを追おうとしたが黄飛虎はもうよいとして朝歌を出ることにした。

 

 

武成王黄飛虎がついに紂王に対し反乱を起こした。