ガエル記

散策

日本近代史

『シュマリ』手塚治虫 その5 完結

最終巻です。 この内容でたった四巻というのは現在のマンガでは考えられない。 ずしっと重い四巻です。 まったくの未読の初読みでした。こんなすごい話とは思わなかったしこんなに読みやすいとも思ってなかった。やはり手塚マンガは(少なくとも私には)めち…

『シュマリ』手塚治虫 その4

あけましておめでとうございます。 2025年が良い年でありますように! いつも通りやっていきます。 ネタバレします。 第十七章「脱出行」 シュマリ、十兵衛(土方歳三)太財弥十、なつめの四人は地震による落盤で炭坑内に閉じ込められてしまうがシュマリの執…

『シュマリ』手塚治虫 その3

すみません。がまんできずに最後まで読んでしまいました。 あまりの感動に言葉もありません。手塚治虫の最高傑作なのではと思えました。 しかしここでは地道に続けていきます。 ネタバレします。 ちょうど二巻から。 第九章「お峯」 1875年石狩幌内熊尻 太財…

『シュマリ』手塚治虫 その2

開拓督務補佐役、島義勇とシュマリ ネタバレします。 第三章「刺青」 明治二年(1869年)12月札幌でシュマリは暴れ投獄される。 と言っても獄中にいたのはふたりだけ。 それは極寒の夜を迎えれば囚人たちは次々と死んでしまうからだった。 シュマリの目の前…

『シュマリ』手塚治虫 その1

さて続けて手塚治虫先生の明治時代もの。 こちらはまったくの初読みです。 知らなかったのですが本作はあの(私も大好きな)『ゴールデンカムイ』の元ネタであると書かれていて「なにィ」となってしまいました。 まだやっと読みだしたばかりですが最初からな…

横山光輝『飛猿斬り』からの幕末の歴史を辿り、手塚治虫『陽だまりの樹』へ

横山光輝『飛猿斬り』この作品を読んで以来、山田一郎(表紙のお人)が頭から離れずこの半年間幕末に入れ込んできました。 以前の記事はこちらです。 gaerial.hatenablog.com これを読んだ時は「天狗党」のなんたるかも知らず山田一郎の苦しみを理解してあげ…

『陽だまりの樹』手塚治虫 十一巻「維新の章」

最終巻です。 ネタバレです。 ついに最終章となった。 伊武谷万二郎は頑固一徹のまま突き進んできた。 おせき殿を一筋に思い続けていた彼はもう少しのところでその糸はちぎれてしまい彼女は手の届かない場所に行ってしまう。 入れ替わるように現れた綾は万二…

『陽だまりの樹』手塚治虫 十巻「桑海の章」

ネタバレします。 緒方洪庵は慣れ親しんだ大坂適塾を出て江戸城の奥医師そして医学所頭取となるため江戸に住むこととなる。 これは体の弱い洪庵にはむしろ有難迷惑であったらしい。 特に大奥での仕事は神経の疲れるものであった。 さて緒方洪庵を通して良庵…

『陽だまりの樹』手塚治虫 九巻「落花の章」その2

ネタバレします。 後半は画像にあげた場面、万二郎が平助を伴って登城するところから始まる。 母上の前では乗馬で出たが途中で下馬し平助に馬を引かせて猛然と走っていく。 門前に行くと以前とはまったく違う礼を以て案内され、二の丸お留守居役の勝海舟に迎…

『陽だまりの樹』手塚治虫 九巻「落花の章」その1

ネタバレします。 万二郎がおせき殿の異変を知るのは三日後だった。 ふたりの仲人をしようとしておせき殿の寺を訪ねた良庵が彼女がすでに尼寺に入って髪をおろしてしまったと聞いたのである。 良庵の知らせを聞き万二郎は善福寺へ走ったが住職とも会えず出て…

『陽だまりの樹』手塚治虫 八巻「万延の章」その2

一番左=勝海舟、左上=ハリス、左下=手塚良庵 真ん中上=ヒュースケン、真ん中真ん中おせき、真ん中下=福沢諭吉 右上=伊武谷万二郎、その下=平助、その下の左=大槻俊斎、その右=お紺、 俊斎の下=手塚良仙、一番右端=丑久保陶兵衛 ネタバレします。 …

『陽だまりの樹』手塚治虫 八巻「万延の章」その1

幕末から明治維新。 よく日本人は江戸城無血開城で平和的だと自慢する向きがありますが事実はそんな生易しいものではないのですよねえ。 ネタバレします。 安政六年の秋から冬にかけて大獄の嵐が吹きすさんだ。 頼三樹三郎、鵜飼吉左衛門、吉田松陰は斬首。…

『陽だまりの樹』手塚治虫 七巻「大獄の章」

まさかここまで望んだとおりのものだとは思ってもいませんでした。 ネタバレします。 伊武谷万二郎は橋本佐内・西郷吉之助の名で送られてきた手紙に誘われ雨の中向かった屋敷で捕らえられてしまう。 その首謀者は井伊直弼の謀臣、長野主膳だったが万二郎は知…

『陽だまりの樹』手塚治虫 六巻「虎狼痢の章」

いっそうおもしろくなっていきます。 ネタバレします。 上様の口の中の黒いシミを調べたい良庵はイギリスの医書の中にその症例が書いているのではないかと考えるが英語が読めない為どうしようもない。 そこで思いついたのが伊武谷万二郎に頼めば来日している…

『陽だまりの樹』手塚治虫 四巻「竜胆の章」

ネタバレします。 最初は比較的良い人だったヒュースケンが一転嫌な感じに。 よくわからんハリス氏は良い人になったかと思ったらやっぱりよくわからん人に。 しかし伊武谷はヒュースケンの一言から興味を抱き韮山の反射炉を見ることになる。 そこで福井藩校…

『陽だまりの樹』手塚治虫 三巻「下田の章」

幕末・維新にはまり中の今。 注目すべきは薩長土肥よりも水戸藩なのではなかろうかと思っています。 本作ではあまり出てこないかもしれませんが、水戸藩の浪人牛久保が登場しています。 ネタバレします。 緒方洪庵の適塾で手塚良庵はダメ人間ながらもなんと…

『陽だまりの樹』手塚治虫 二巻「鳴動の章」

ネタバレします。 冒頭の丑久保陶兵衛とその妻のエピソードが怖くて一番記憶に残ってしまった。 本書の熊菱という蘭方医に臨月の妻を診せたところ「すぐに産ませた方が良い」と言って薬を飲ませたが生まれる気配はなく妻は苦しみだした。 慌ててその医者は陰…

『陽だまりの樹』手塚治虫 一巻「双鯉の章」

幕末から明治維新にかけての読書を希望しているのですが手塚治虫作品ではこれを外すわけにはいかないだろうと思い再読&感想を書いてみます。 何度も読んだ作品ですがこの思いで読めばまた一味違うかもしれません。 もともと手持ちの本なのでこのための散財…

『合葬』杉浦日向子 その4

ネタバレします。 (了) 「維新は実質上維新(これあらた)なる事はなく末期幕府が総力を挙げて改革した近代軍備と内閣的政務機関を明治新政府がそのまま引き継いだにすぎない。 革命(revolution)ではなく復位(restoration)である」 雨降る夜分、腕に傷…

『合葬』杉浦日向子 その3

続きます。 ネタバレします。 (五) 悌二郎の妹砂世は別の人に嫁ぐこととなった。 その前に一目、極に会いたいという。妹の頼みを悌二郎は極に伝えに行く。 極はその頼みを断る。その時に「山は官軍に取り囲まれている」と報がはいった。 即刻戦闘準備がな…

『合葬』杉浦日向子 その2

さて続きです。 ネタバレします。 (参) 彰義隊はすでに三千名を越え存在そのものが巨大な反政府勢力とみなされていたが、彼らには新政府を倒し幕府の再建を謀るという所思はなくしいて言えば「義憤」が彼らの原動力にすぎなかった。 しかし数度の解放勧告…

『合葬』杉浦日向子 その1

初めての杉浦日向子作品読です。 今幕末から昭和初期までの歴史にはまっており本作に巡り合いました。 私はとりあえず生まれた場所的に官軍側の人間なのですが、だからといってこれまで大した幸運はなかったよなと思っていました。しかしよくよく考えれば歴…

『「坊っちゃん」の時代』第五部「不機嫌亭漱石」 関川夏央・谷口ジロー 

第四部までを総括する一巻となっています。 また幻想的な文学作品とも言えます。 ネタバレします。 夏目漱石の胃の痛みがますますひどくなる。 漱石は伊豆修善寺の菊屋旅館で転地療養することにした。 しかし雨が降り続く上に旅館は部屋の用意をしておらず漱…

『「坊っちゃん」の時代』第四部「明治流星雨」 関川夏央・谷口ジロー 

関川夏央氏による「あとがき」に第三部から三年半の時日を経て関興できた、とされています。 そのせいもあってかかなり絵柄が変わった感があります。 しかしこの内容にはこの筆致が適切だったのではないでしょうか。 ネタバレします。 「坊っちゃん」の時代…

『「坊っちゃん」の時代』第三部「啄木日録 かの蒼空に」 関川夏央・谷口ジロー 

読み込むのに時間と努力が必要だった前回の森鴎外編とは違い本編石川啄木は初読で入り込んでしまった。 ネタバレします。 貧乏なダメ男の話を読むほど辛いことがあるだろうか。 しかも才能はあり自尊心も高い。 が才能はあってもそれがすぐに認められること…

『「坊っちゃん」の時代』第二部「秋の舞姫」 関川夏央・谷口ジロー 

この第二巻は冒頭を除けば森鴎外の『舞姫』で描かれたそのモデルとなるエリスバイゲルトと森鴎外の物語となっています。 ネタバレします。 この物語をどのように受け止めていいのか迷ってしまう。 正直今の自分には本作を良しとしていいのか否定すべきなのか…

『「坊っちゃん」の時代』第一部 関川夏央・谷口ジロー その2

続きます。 ネタバレします。 第六章 マドンナと清 「坊ちゃん」を思い出し、そうかーとなった。 しかし清は印象深いがマドンナのことはさっぱり覚えていない。 坊ちゃんは清から物凄く褒められおだてられて大きくなった。すごく幸福な少年なのだ。 誰もが自…

『「坊っちゃん」の時代』第一部 関川夏央・谷口ジロー その1

「漫画アクション(双葉社)」1987年~1996年 作者名は原作・作画に分けず共著という形であるということです。 最近、幕末から明治そして昭和初期まで、つまり日本近代史に凝っています。 ところがその辺が舞台のマンガ作品は極端に少なく、且つ興味が抱ける…