ガエル記

散策

日本映画

『黒い画集 ある遭難』杉江敏男

松本清張原作なので観たかった作品です。 正直言って名作映画ではないのでしょうけどミステリー映画として楽しめました。 ネタバレしますのでご注意を。 少し前に山岳もの登山ものを鑑賞したいと思いながら結局これと言うものに当たらないまま終わったのです…

『復讐するは我にあり』今村昌平

凄い映画であるのは確かなんだけどこれをどう書いたらいいのか、わからずしばらく迷ってしまいました。 他の方のレビューを見ていくうちに自分がなにを書きたいのか少しわかったような気がしました。 ネタバレしますのでご注意を。 いったいこの映画はなにを…

「好きな日本映画三作品」

唐突ですが自分にとって「日本映画三選」を考えてみました。 自分で勝手に考えた三選で条件は「日本を表現していて且つ好きな映画」というものです。では早速 1『八甲田山』 2『鬼龍院花子の生涯』 3『犬神家の一族』(1976年版) 1976年から82年までに固…

『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』大森立嗣

ただただ幸せな映画だった。 だってケンタとジュンは相思相愛でずっと一緒に旅をしているだけなんだから幸せ以外のなにものでもない。 ネタバレしますのでご注意を。 正直カヨちゃんはふたりにとってはちょっと邪魔者で、と思っていたら案外早く置いてけぼり…

『ドッペルゲンガー』黒沢清

面白く鑑賞しました。 ドッペルゲンガーというか普通にもう一つの人格と思えました。 女性の方は弟の厳格を見、主人公は自分の欲望からもう一つの人格を出してしまったというわりにストレートな見方でよろしいのではないでしょうか。 主人公は才能はあるのか…

『MOTHER マザー』大森立嗣

若い頃この映画を観ていたらその内容に物凄く賞賛していたのですがすっかり年を取ったのを感じました。 映画の作り方としてはもうすばらしくて大絶賛です。 昨今の日本映画のていたらくがまったくない優れた才能と技術を感じます。 映画の評価としては満点以…

『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』大森立嗣

こんな幸せな主人公っているのか、と思いました。 何もできず甘えてばかりで許される幸福な人間です。 昨日の『ぼっちゃん』とまったくの真逆に愛に包まれた男です。 『ぼっちゃん』の犯人は母親に虐待を受けていたと書かれていました。 本作の主人公の甘っ…

『ぼっちゃん』大森立嗣

レンタルで鑑賞しました。秋葉原無差別殺傷事件をモチーフにした映画作品です。 記憶に残る事件でした。私でさえも事件にかかわる記事を幾つか目にしてはいたので犯人を描いた本作の主人公がそれをイメージしているのは伝わりました。 ネタバレしますのでご…

『日日是好日』大森立嗣

良い映画でした。 昨日の映画と同じ監督とは思えないかもしれませんが大森監督映画は訴えていることは(今まで観てきたところ)同じだと感じています。 ネタバレしますのでご注意を。 自分を従姉と比べていつもダメだと思い込んでしまう主人公は確かにぱっと…

『グッバイ・クルエル・ワールド』大森立嗣

なんとこれは今年2022年作品でした。期待を裏切らぬ素晴らしい作品でした。 なのに相変わらずの悪評価ぶり。いったいどういうことなのか。 とはいえ大森立嗣監督着実に作品を作ってはおられるので業界では高評価なのだろうと思われるのですが。 ネタバレしま…

『光』大森立嗣

2017年公開映画に対してやや遅いかもしれないけれどあまりにも好みすぎて泣きたいほどの映画でした。 他のレビューを見ると「気持ち悪い」「音がうるさい」「意味が解らない」などの悪評が目立つのですが私にとってはそのどれもが素晴らしいと思えるものです…

『罪の声』土井 裕泰

「グリコ森永事件」を題材にした作品ということで気になり鑑賞しました。 そして作品が訴える方向性にひどくがっかりさせられてしまいました。 いったいこれはなんなのでしょうか。 いったいこの作品を作った人は世界で作られてきた映画を観てきたのでしょう…

『あのこは貴族』岨手由貴子

「とても面白い」「今期最高の映画」という評価を読んだり聞いたりして気になっていたのですが鑑賞一度挫折し今回鑑賞完了しました。 確かに現在日本映画の中では非常に密度のある集中して製作された映画と思いましたが心から絶賛したいかと言われると躊躇し…

『静かな生活』伊丹十三

ちょっと興奮しています。日本にこんな素晴らしい良い映画があったとはそしてその作り手がずっと好きだった伊丹十三監督だったとは、二重の意味でショックです。 この数日伊丹監督作品を観続けていてほとんどが以前観ていたか少なくとも話題になったのを史っ…

『あげまん』伊丹十三

実はこの映画怖くて観る勇気が出なかった。多分未鑑賞だと思います。今回鑑賞しても他作品のように記憶が蘇ることもありませんでしたから。 結果から言うと思い切って観てよかった。そして伊丹十三監督に謝りたい。伊丹監督は私が疑いを持つような人ではなか…

『タンポポ』伊丹十三

これも再鑑賞でした。 とはいえ私は九州人なので昔観た時は醬油ラーメンが美味しそうに思えなかった、というところで引っかかってしまったという記憶があります。 その後も食べたラーメンはほとんど豚骨ばかりですが今回観ていて醤油ラーメンが美味そうで美…

『マルタイの女』伊丹十三

伊丹十三監督の遺作となった映画でした。 先日『マルサの女2』を観たのはカルト教団がらみというのを聞いたからですが(実際は過去鑑賞していた)本作もオウム真理教をモデルとしたカルト教団がらみの作品でした。 「マルタイ」というのは警察用語で護衛の…

『流星課長』庵野秀明

観た、という備忘録。 しりあがり寿氏の原作があまりに好きなのでつい観てしまいました。 私はほとんど庵野秀明という作家に共感ができないのですが同世代オタクなのでどうしても興味の対象が重なってしまう。原作をほぼ忠実に映画化しているとは思いますが…

『八甲田山』森谷司郎

日本人を知るため最も観るべきしかも面白い映画は何かと聞かれたら私は迷わず『八甲田山』と答えます。 今観ると猶更この映画は日本人の特性を描き切っていると感じます。 何度も書いてきた気もしますがネットでタイトルを見かけ再び書きたくなりました。 ネ…

『森蘭丸』小林桂三郎

1955年製作。八住利雄脚本。主人公森蘭丸を演じたのは中村扇雀(四代目・坂田藤十郎)織田信長は山村聡。 観たいと思う作品が何も見つからず、試しに観てもすぐ嫌気がさしてしまう中アマプラで偶然見つけたこのタイトルに「へえ?」と訝しさを感じながら観始…

『新・平家物語』溝口健二

退屈するかと思いきや案外面白く観てしまいました。 なんといっても冒頭の巷を俯瞰する長回しが圧巻なのですがそれだけではなく、というか全編で観られる家屋、風景、衣装、調度品そして立ち居振るまい言葉遣いを追っていくだけでも興味深い。 1955年・昭和3…

『蟲たちの家』黒沢清

画像に出ている通り楳図かずお原作を黒沢清監督が2005年映画化したものです。 俳優たちの下手さも含めかなりチープな感じがしますがそれがかえって面白く感じます。 ネタバレしますのでご注意を。 そして昨日観た『降霊』や他の作品との共通点はここにも表現…

『降霊 KOUREI』黒沢清

こんな恐ろしい映画があるのだろうか。 さんざん言われてきた言葉ですが怖いのは幽霊ではなく生きている人間のほうだ、ということでした。 ネタバレしますのでご注意を。 はっきり言って幽霊の場面は何も怖くはありません。 実際に霊が見える人に証言を得て…

『スパイの妻』黒沢清

TV版は鑑賞後の劇場版です。 とはいえ違いはまったくわからず。続けて観ればわかるのかもです。 とりあえず内容は同じで色調などが違うということなのですが。 再鑑賞で感想はどうかなと思っていたのですがとても面白く感じました。 娯楽映画、というのはこ…

『トキワ荘の青春』市川準 その2

映画を観てからつらつらと考えていました。 市川準監督のプロフィールには聖パウロ学園という高校出身と書かれています。それを見てはっと本木雅弘演じる寺田ヒロオ氏のまっすぐ立った姿を思い出しました。 そして市川監督は寺田ヒロオさんに殉教者の姿を重…

『トキワ荘の青春』市川準

以前にも観ていたのですがTV放送されていたので再鑑賞しました。 トキワ荘の逸話はよく知られていることですが石ノ森章太郎でも赤塚不二夫でも藤子不二雄でもなく現在ではまったくその名を聞くことがない寺田ヒロオ氏を主人公にしたのは監督である市川準氏が…

『桐島、部活やめるってよ』 映画と小説(吉田大八と朝井リョウ) その3

もう少し小言を書いてみます。 ネタバレしますのでご注意を。 小説と映画でもうひとつ違うのが映画部・前田涼也が好きな映画のカテゴリです。 小説では日本映画の恋愛ものや青春ものが好きで特に犬童一心や岩井俊二の名前が挙がっているのに対し映画版では塚…

『帝銀事件 死刑囚』熊井啓

かなり前から観たいと思いながらなかなか機会がなくやっとアマゾンプライムで観ることができました。 熊井監督作品は幾つか観ているのもあって期待はしていましたが想像以上に恐ろしい迫力の映画でした。 事件の推理などはできようもありませんが昭和23年(1…

『ジョゼと虎と魚たち』犬童監督版鑑賞挫折

ちらりと報告。 田辺聖子著『ジョゼと虎と魚たち』に感動しタムラコータロー監督アニメ版にも感激し続いて犬童一心監督版をしばらく見続けたのですがどうしても辛抱できず挫けてしまいました。 比較をするための研究鑑賞と思ったのですが我慢の許容量を超え…

『岸辺の旅』黒沢清 その2『はちどり』

続けて観たこともあってその差異と共通点を感じたのが韓国映画『はちどり』です。 若いキム・ボラ監督第一作のシンプルな構成と比較すると本作は非常に技巧的な熟練を感じさせます。 『岸辺の旅』はタイトルからしても年を経て生きていく悲しさがあり『はち…