ガエル記

散策

『マルタイの女』伊丹十三

 

 

伊丹十三監督の遺作となった映画でした。

 

先日『マルサの女2』を観たのはカルト教団がらみというのを聞いたからですが(実際は過去鑑賞していた)本作もオウム真理教をモデルとしたカルト教団がらみの作品でした。

「マルタイ」というのは警察用語で護衛の対象となる人間を表すのですがそれにカルト教団が加わりどうしても先日の安倍元首相とその護衛そして山上氏の一連の事件を思い起こさせます。

 

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

 

レビューにかなり「他作品と違ってだらけている」「つまらない」「駄作」とまで書かれていたのでそうなのか?と思いつつ観たのですがとんでもなく面白かったです。

三谷幸喜氏が脚本を書いていて結局伊丹氏が書いたというエピソードが記されていましたが確かに三谷脚本とは違う味わいがあると思えます。

 

そして思うのは伊丹十三氏の揺るがない正義感です。

これは時代もあるのでしょうか。

現在ならここまで明確な正義感を表現できない気がしてしまう。

とはいえ時代のせい、とは言えない気もします。

伊丹氏が強い正義感を持っていて結局そのせいで自身が追い込まれていきもしかしたら最期の謎にも関わっているのかもしれません。

 

しかし最近の日本映画を観ると苛立つのが本作にはない。それはあまりにも潔いからなのだけど。

 

ラストの激しい悪との戦い。

ビワコの心意気。そしてビワコを守るため命をなげうった恋人。それは伊丹十三そのものなのです。

伊丹十三監督の死を思わずにはいられません。