ガエル記

散策

松本清張

『発作』松本清張:「桐野夏生オリジナルセレクション”憑かれし者ども”」より

ネタバレします。 『発作』 いつの時代にも通用する話に思える。 主人公男・田杉は苛立ちが常にある。 なにもかもが苛立ちの原因となっている。 給料は前借をし続けているのでわずかしか手に入らずそれでは足りないのでまた前借を要求することになるが断られ…

『赤いくじ』松本清張:「桐野夏生オリジナルセレクション”憑かれし者ども”」より

1955年6月号「オール讀物」(元タイトル:赤い籤) 酒井順子『松本清張の女たち』の中に取り上げられていた作品で収録されていたのがこの本だった。 ネタバレします。 1944年戦中から1945年戦後にかけて朝鮮を舞台にした物語、なのは松本清張自身がちょうど…

『松本清張の「遺言」』原武史 その3

さていこう。 ネタバレします。 第五講 「足利」───中世と反逆 この講の冒頭に書かれている「南北朝正閏論」に今はまっている。 はまっている、というのはおかしいがこれまでこのあたりを学んでこなかったせいでよくわからないのだ。 現在の天皇が北朝である…

『松本清張の「遺言」』原武史 その2

つづけます。 ネタバレします。 第三講 「秩父」───弟とクーデター 小説の舞台となる埼玉県「梅広」という架空の場所を現在の東松山であると推理して語られていく。 ここに謎の信仰宗教組織「月辰会」の本部がある、とされている。 月辰会はアマテラスの弟ツ…

『松本清張の「遺言」』原武史 その1

※本書は、2009年に刊行された『松本清張の「遺言」――『神々の乱心』を読み解く』(文春新書)と、『文藝春秋』2010年4月号に掲載された「『昭和史発掘』を再発掘する」を合わせて一冊にしたものです。 先だって松本清張著『神々の乱心』を読んでみたものの未…

『草』松本清張/松本清張全集4「黒い画集」より

1960年4月~6月「週刊朝日」 松本清張全集4「黒い画集」の最後の収録作品となる。 これもここまでの作品とは一味違う建付けであった。 ネタバレします。 本作はまったくの「ベッド・ディテクティブ」かと思いきや実は・・・という作品であった。 実をいうと…

『濁った陽』松本清張/松本清張全集4「黒い画集」より

1960年1月~4月「週刊朝日」 劇作家・関京太郎が依頼を受けたテレビドラマのシナリオで「汚職事件の遺族」を描こうと構想を練る。 そのために実際に犠牲者となった遺族の住所を調べようとしたがどうしてもわからないということになり石はいっそうこの汚職事…

『凶器』松本清張/松本清張全集4「黒い画集」より

1959年12月「週刊朝日」 さすがにこれは映像化されていないようです。 いや、これも面白い筈です。 ネタバレします。 映像化されていない理由はなんだろうか。 佐賀県の田舎(あとがきによれば清張氏の妻の実家がある神崎町)が舞台で話し言葉がすべて方言で…

『寒流』松本清張/松本清張全集4「黒い画集」より

1959年9月~12月「週刊朝日」 これも五回映像化されているという。 ミステリーというよりもひとりの心弱い男が追い詰められていく話であります。 ネタバレします。 でもおもしろい。 妻と二人の子を持つ主人公沖野一郎は銀行に勤めているため仕事上で割烹料…

『証言』松本清張/松本清張全集4「黒い画集」より

1958年12月「週刊朝日」(画像は別の表紙より) これはほんとに短かった。なのに本作も六回も映像化されているのであった。 ネタバレします。 例によって、である。 主人公の男は四十八歳。会社では課長の座にありさらに出世を望んでいる。 妻がいるが男には…

『天城越え』松本清張/松本清張全集4「黒い画集」より

1959年11月「サンデー毎日」(画像は映画より) 映画&ドラマは以前鑑賞済の有名な作品です。 なんとなくスティーヴン・キングにおける『スタンド・バイ・ミー』のような気がします。 むろんあの作品とはまったく違うのですが「十代に友だちがいなかった」松…

『紐』松本清張/松本清張全集4「黒い画集」より

1959年6月~8月「週刊朝日」 昨日のどろどろ男女妄執劇とは違う本格的なミステリー物というのか。とはいえしっかりどろどろも混入している。 本作もまた六回もTVドラマ化されているという。 日本テレビドラマ界は松本清張なしでは成り立たないといえようか。…

『坂道の家』松本清張/松本清張全集4「黒い画集」より

『坂道の家』1959年1月~4月 六回もTVドラマ化されているというのはやはり本作の題材が「若い女にいれあげる中年男」というものだからでしょう。 松本清張小説は生々しい描写が凄まじく、だからこそ私は以前はまったく読むことができなかったのですがやっと…

『遭難』松本清張/松本清張全集4「黒い画集」より

『遭難』1958年10月~12月「週刊朝日」 以前映画鑑賞した『黒い画集 ある遭難』の原作です。 gaerial.hatenablog.com 私はまったく登山などしないのですが何故か凄く山岳話に興味があります。楽しい方ではなく怖い話に惹かれるのです。登山遭難のyoutubeまで…

『松本清張の昭和』酒井信

2015年「講談社」 酒井順子氏で松本清張の小説の大枠を、この本で彼の生涯の細かなことを知ることができた。 これまでも清張氏の人生は自伝でも他の方の文からも聞いてはいたが本作はそれらになかった詳細なものが書かれていた。かなり調べられたのだろう。 …

『清張が聞く!』1968年の松本清張対談

1968年1月号~12月号「文藝春秋」 1968年(明治100年)1月号から12月号まで、月刊『文藝春秋』で1年間連載された「松本清張対談」。これまで一冊にまとまっていなかった伝説の連載が、2025年(昭和100年)に、新たな脚注を加えて初の書籍化。 1968年=明治百年と…

『半生の記』松本清張

1963年8月号~1965年1月号「文藝」 本書は初めて読むのだがこれまで様々な場所で松本清張の作家以前の話を聞きかじっていたのでさながら復習しているかのような読書となりました。 作家以前、といっても清張氏は四十歳をすぎてからの作家デビューなので八十…

『「スチュワーデス殺し」論』松本清張

1959年(昭和34年)8月「婦人公論臨時増刊「美しき人生読本」」 自分が購入した『黒い福音』には”これ”が収録されていなかったのだがここにあったので小躍り。 さて読む。 ネタバレします。 昭和三十四年六月十一日午後七時半、スチュワーデス殺しの重要参考…

『ハノイで見たこと』松本清張 その4

日記だとわかりやすい。とにかく文章が読みやすい。 ネタバレします。 ハノイ日記 第一帖 戦争に適応する街ハノイ (続き) 三月二十一日(木曜) 松本清張氏はベトナム文学芸術家協会副書記長バオ・ディン・ジアン氏と会見。 ベトナムでは1945年から二十年…

『ハノイで見たこと』松本清張 その3

続けます。 ネタバレします。 松本清張氏と森本哲郎氏はハイフォンへ向かう。 その日は驚くほどの晴天で日が暮れると清張氏は空から照明弾が落ちてくるような気がして空を見上げた。 トンキン湾の海岸に近づき停泊中の外国船の灯が見えると赤い光が輝いて消…

『ハノイで見たこと』松本清張 その2

1958年 読んでいて気づいたのは今更になって私はほとんどアメリカ映画などからの知識でベトナム戦争を見ていたのだということ。 つまり日本人なのにアメリカ人の視点で考えていたのだとここにきて気付いた。 この本を読んでいなければそのままだっただろう。…

『ハノイで見たこと』松本清張 その1

『半生の記』を目的にこの本を選んだのだが同時収録されている『ハノイで見たこと』は単独ではあまり読むことができないようだ。 ネタバレします。 ハノイからの報告(1958年「週刊朝日」) 1968年3月19日、ベトナム戦争のただなか松本清張と当時朝日新聞記…

『美しき闘争』松本清張

1962年「京都新聞社」他(初出) 「マジで松本清張を読んでいこう!」と思い立たなけれ絶対読まなかった作品だろう。 先日の酒井順子著『松本清張と女たち』で酒井氏がなんとなく不満を持っているのが却って気になった。 ネタバレします。 ヒロインは井沢恵…

『熱い空気』松本清張/「別冊黒い画集1」より

1963年「文藝春秋新社」 ここに収録されています『熱い空気』かの有名なTVドラマ『家政婦は見た!』の原作だということを先日記事にした酒井順子著『松本清張と女たち』で初めて知りました。 TVドラマをまったく観ない私ですらタイトルは知っている(主演が…

『松本清張全集34』~エッセイ~より

と画像を出したのだが収録されているがこの表紙にはなぜか記されていない「エッセイ」を読んでの感想です。 ネタバレします。 数多く収録されたエッセイの中に「推理小説の発想」というのがあった。 松本清張は作家活動は40代を過ぎてからではあるが、1951年…

『神と野獣の日』松本清張

1963年「女性自身」光文社 松本清張唯一のSFが「女性自身」に掲載されていたというのがおもしろい。 つまりこれは女性向け作品なのだ。 ネタバレします。 普通におもしろかった。 ごめん、ちょっとだけ侮っていた。 確かに、SFはリアルであればあるほど面白…

『黒い福音』松本清張

1959~60年「週刊コウロン」連載/1961年「中央公論社」 1959年3月実際に起きたBOACスチュワーデス殺人事件を元にフィクションの形で推理した著作である。 ネタバレします。 先日読んだ酒井順子著『松本清張と女たち』の中でも特に気になった本作。 早速読ん…

『松本清張の女たち』酒井順子 その4

ネタバレします。 母と妻と松本清張 15 清張の母、清張が描く母 この項の書き出しは本著で最も不思議な感覚、奇妙というか違和感というか謎めいたものだった。 と言っても作者の酒井順子氏に対してそう思ったわけではなく酒井氏が疑問を持ったことに「それ…

『松本清張の女たち』酒井順子 その3

ネタバレします。 昭和の女と松本清張 9 殺す女、殺される女 ここで紹介されている作品で『声』だけは読んでいた。 これは衝撃的な話であり同時に興味深い作品だった。 新聞社の電話交換手を務めていたヒロインは数多くの声を聴き分けられるという能力を持…

『松本清張の女たち』酒井順子 その2

続けます。 ネタバレします。 5 転落するお嬢さんたち 紹介される小説の中で一作品だけ知っている。『霧の旗』である。 それにしてもこの本は凄まじい企画である。 ひとりの作家を分析していくという評論は数あろうがそれが松本清張のような膨大な作品のもの…