当時も今もこんな風な日本テレビドラマはまったく観ていないのですが最近松本清張がとても気になる存在になってドラマ化されたものも観てみたくなりました。
1993年(平成5年)28年前の映像は思いきりギラギラに見えるビデオ撮影で特に苦手なのですが我慢して何とか見ていきました。
ストーリーは松本清張なのでとても面白いものですがそれがテレビドラマとなるといろいろな要素が重なり気になるものです。現在製作のものならば単なる批判になっても時代が経つと奇妙な感心になったりします。
ネタバレしますのでご注意を。
まず良かったのは主人公というべきなのか「売れない小説家」という役どころの伊瀬忠隆氏と専業主婦らしいその妻和代さん夫婦がとてもバランスの取れた探偵ぶりであったところです。
「売れない小説家」であるためもあるのか作家伊瀬氏がちっとも威張ってなくて買い物からお茶出しまでやっているのが微笑ましい。津川雅彦氏が演じると上品さにコミカルも加わってシリーズで観たくなる魅力でした。
その妻和代を演じたのがいしだあゆみさんでこちらも飄々とした愛らしさがありしかも事件のツボを次々と押さえていくのが楽しいのです。当時のでっかいパソコンを使っている様も素敵でした。
そこへ入ってくるのが旅行雑誌の若手編集者・浜中くんで当時人気だった野村宏伸氏が演じています。
この彼の存在が実に不可解なのです。
彼の演技は正しいのでしょうか。それとも間違っているのでしょうか。私にはよくつかめないでいます。
彼のこの軽いノリでの演技は一種サイコパスにすら思えてなりません。浜中くんが復讐を思いつめるあまり異常者になってしまった、という設定なのなら野村宏伸演技は間違っていない、といえるのですがそうでもないようで一番不気味な役柄とも言えます。
不気味な役柄といえば坂口みま子という「数字大好き女性」という不思議なキャラが登場して事件をかき回してくれるのですが、真のサイコパスは野村宏伸演じる浜中君、なのです。
明るい編集青年として登場し爽やかで人懐こく気遣いもできる若者であり伊瀬夫婦からも信頼され好意を持たれながらタンタンと復讐計画実行を果たしてしまうのです。しかも犯罪にはならない形で。
もしこのサイコパス演技が狙ったものであるならもう少しそこを強調して彼はこんなに純朴そうだが実はこんな一面を持っているのだーという表現があるのならわかるのですが。
なんとなく明るいだけのチャラい若者と思っていたら実は恐ろしい殺意のある復讐者だったというのはどう咀嚼していいのか、ジョーカーよりも怖い存在でした。
ドラマとしての演出なのか、松本清張原作もこういうノリなのか。
他にも刑事さんの演技がとても奇妙で「なんなのか?」というのがちょこちょこあって不思議でした。
二階のベランダで告白するのを庭にいる伊瀬氏が聞く、という場面があるのですが聞こえると思えないのですが、どうなんだろう。
このドラマに大杉漣さんが出演されていました。これを偶然観られたのは良かった。
とても悲しい役なのですが。
上手い俳優さんたちの演技を観、日本のテレビドラマの不思議さを楽しめました。
『Dの複合』自体にもとても興味が持てたので原作を読んでみようと思います。
松本清張の小説を原作とするテレビドラマはすごく多いのですよね。
やはりとてもドラマ性のある手ごたえある内容だからなのでしょう。
今まで以上に松本清張に興味が出てきました。
観てよかったドラマでした。