ガエル記

散策

家族

『インターステラー』クリストファー・ノーラン

「お涙頂戴もの」というと「大した中身もないのに泣かせようとするだけの作品」という解釈で軽んじられる傾向にあります。私もとても好きとは言えません。 ところで今「SF」というカテゴリはどういう評価でしょうか。私が子どもの時よりは意義あるものとして…

『復讐するは我にあり』今村昌平

凄い映画であるのは確かなんだけどこれをどう書いたらいいのか、わからずしばらく迷ってしまいました。 他の方のレビューを見ていくうちに自分がなにを書きたいのか少しわかったような気がしました。 ネタバレしますのでご注意を。 いったいこの映画はなにを…

『カモンカモン』マイク・ミルズ

ホアキン・フェニックス主演で観始めたのですが今一番気になっている「疑似家族」ものだったので座りなおして鑑賞しました。 かつて家族映画は多くありその中で「仕事をして稼ぐ強い父親・食事を用意し掃除洗濯をする優しい母親・父を尊敬し母の愛情に感謝す…

『リスペクト』リーズル・トミー

アレサ・フランクリンの生涯を描いた伝記映画といえる映画作品です。 と言っても私は彼女のことを何も知らなったのですが、それだけに観ていていろいろと衝撃を受けました。 ネタバレしますのでご注意を。 ひとつはもちろんアレサの歌唱力と魅力です。本作を…

『MOTHER マザー』大森立嗣

若い頃この映画を観ていたらその内容に物凄く賞賛していたのですがすっかり年を取ったのを感じました。 映画の作り方としてはもうすばらしくて大絶賛です。 昨今の日本映画のていたらくがまったくない優れた才能と技術を感じます。 映画の評価としては満点以…

『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』大森立嗣

こんな幸せな主人公っているのか、と思いました。 何もできず甘えてばかりで許される幸福な人間です。 昨日の『ぼっちゃん』とまったくの真逆に愛に包まれた男です。 『ぼっちゃん』の犯人は母親に虐待を受けていたと書かれていました。 本作の主人公の甘っ…

『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』と『エデンの東』

『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』についてもう少し。 ネタバレしますのでご注意を。 ドタバタ追いかけっこ作品。いわば銭形とルパン三世的なノリを想像していたのですが実際の本作は「父母の愛情を求めた少年が得られず新しい父親と出会えた」という…

『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』スティーヴン・スピルバーグ

長年放置していた本作鑑賞ついにしてしまい呆然となっています。 何故早くこれを観なかったのか。 とはいえもっと早く観ていたら今日観たほどには感動していなかったかもしれません。 私はスピルバーグ苦手なところがあって嫌いというほどではないにしても『…

『家族愛』と『疑似家族』

コンテンツの中の「家族」についてちょっと書いてみたい。 「家族」という漢字を見るとややイメージがわきにくい気もしますがここで言うのは親子兄弟ということです。 かつての作品では家族の強い絆が描かれていて涙を誘ったりしたのですがいつしか「それは…

『コーダ あいのうた』シアン・ヘダー

多くの人がそうかもだが観る前は嫌な緊張感があってすぐ止めてしまうのではと思ってもいました。 そしてたぶん多くの人がそうだろうと思えるのですがそれは杞憂にすぎず私は最後まで止めることはありませんでした。 そしてこの映画を作った監督はそうした観…

『オールド』M・ナイト・シャマラン

wowowでは明日(6月5日)初放送かな。一日早くアマゾンプライムにて鑑賞しました。 ちょい前にシャマラン監督作品を続けて観ていました。 どれもよくある題材のようでいて何故か惹きこまれて観てしまうという魔法使いのような演出法を持つシャマラン監督とは…

『タコピーの原罪』タイザン5(ファイブ)

「衝撃の・・・」とか「最高に面白い」とかの称賛で試しに読んでみてもなかなか読み進むことができなくなってしまったのは私がすっかり年老いてしまったからなのでしょうか、と思わされるこの頃。 この作品は珍しく現在公開されている第9話までしかも止まら…

『コンフェッション ある振付師の過ち』スティーヴン・ベルバー

画像が示すとおり原題は『match』です。そしてそのタイトルが示す通りの素晴らしい内容だと思います。 『match』という言葉の意味は様々にあります。 火をつけるマッチをはじめ対決する・配偶者・ライバル・結婚・調和するなどなど。 たぶんこの一つの言葉に…

『セメタリー・ジャンクション』 リッキー・ジャーヴェイス/スティーヴン・マーチャント

ネットフリックス、さんざん掘りまくってもなかなかこれというのが見つからない中でのチョイス。 悪くないイギリス映画でした。 70年代イギリスの田舎町の若者を描いた映画。どうしようもない男三人組のよくある田舎者話ですがついつい観てしまう内容でした…

『アメリカン・ビューティー』サム・メンデス

初めての鑑賞のつもりでしたが以前観たような気もします。 そしてこの映画がゲーテの『ファウスト』だということに今回気づきました。 この映画は一度観ていたのでしょう。なんとなくそんな気もします。たぶんあまりにも気持ち悪く記憶から抹消してしまった…

『はちどり』キム・ボラ

昨日観た『サニー永遠の仲間たち』で珍しく韓国映画に失望してしまったのですが巷で高評価だっただけにかなり残念でした。 これも評判の高い本作『はちどり』を観てどう思うか不安もありながら本作のすばらしさにため息でした。 ネタバレしますのでご注意を…

『フィールド・オブ・ドリームス』フィル・アルデン・ロビンソン その1

『フィールド・オブ・ドリームス』がNHK・BSプレミアムで8月30日放送されるのですが急に観たくなってアマプラで先に観てみました。 とはいえ私は昔観てはいるし特段本作に思い入れがあるわけでもありません。例によって『SonnyBoy』につながりがあるような感…

『ババドック 暗闇の魔物』ジェニファー・ケント

これも「デブ・フロムショー」でデイブさんお留守の際にアリさん司会で角由紀子氏が「一番怖いホラームービー」と言われていたので気になって鑑賞しました。 先日角氏お勧め『ゼム』が納得の面白さだったので。 そしてこちらも納得の恐怖でした。 そして本作…

萩尾望都ー親に見捨てられたこどもたちー

ここ数日楳図かずお『漂流教室』を読み、そのなかに萩尾望都は他の誰よりも楳図氏の影響を受けているのではないかと感じてしまいました。 萩尾氏は影響を受けたマンガ家好きなマンガ家としていつもまず手塚治虫をあげていますし次に横山光輝、わたなべまさこ…

『これでいいのだ』赤塚不二夫自叙伝 その3

書きたいことが多く遅々として進みませんが少しずつ。 さて満州から引き揚げてきた赤塚少年は今度は日本で「引き揚げ者」として苦労します。 こういうことはどこの国でもあるのか、やはり鎖国時期が長かった日本独特の性格なのか、外国で生活した人に対して…

『これでいいのだ』赤塚不二夫自叙伝 その2

上の画像は読んではいない『おそ松くん』の拾い画像です。 当たり前ですがこうして見ると『おそ松さん』の可愛さは『おそ松くん』からちゃんと抽出されたものであるのが解ります。 何も知らなかった以前は赤塚不二夫氏がなぜ「六つ子」なんていう描くのが大…

『戦火のナージャ』ニキータ・ミハルコフ

前作『太陽に灼かれて』は未見ですが引き込まれて観てしまいました。 あまり観る機会のなかった独ソ戦作品です。 冒頭のスターリンエピソードからして奇妙に怖ろしくぞわぞわしました。この共産圏独特の恐怖は耐え難いですがそれを弾圧する派も恐ろしいです…

『ずっとお城で暮らしてる』ステイシー・パッソン、そして『ミーシア』吉野マト

日本未公開でwowowにて初放送という映画作品です。 以下ネタバレしますのでご注意を。 「暴力」を描いた作品です。 感想を書こうとしてなかなか書けずにいた時に別のマンガ作品を読みました。 shonenjumpplus.com とても魅力のあるマンガですがかなり粗削り…

『タリーと私の秘密の時間』ジェイソン・ライトマン

とても巧く作られた映画でした。テーマがありアイディアがあり主演のシャーリーズ・セロンは相変わらずの素晴らしい役作りと演技でした。観始めたら引き込まれて観てしまう映画だと思います。 ネタバレしますのでご注意を。 かつてはメリー・ポピンズが魔法…

『マダム (Madame)』ステファン・リトゼール

場所はスイス。裕福な家庭に生まれ育った青年が恵まれた幸福な成長期の中で自分がゲイであることに気づきながらも皆が言う「普通の男性」であろうとしながらついにゲイであることを確認し家族に告白する過程を追っていったドキュメンタリー作品です。 なんと…

『ダーク・プレイス』ジル・パケ=ブランネール

以前にもこの映画を観て「良い」という記事を書いたのですがその頃は集中力が欠けていていまいちよくわかっていませんでした。 今回観なおしてすばらしい映画だと再認識しなおしました。 以下ネタバレしますのでご注意を。 この作品のテーマは「赦し」である…

『あいつの声』パク・ジンピョ

アマプラで何気なく選んだらソル・ギョング主演だったのでそのまま鑑賞しました。 この映画は創作映画として評価されるものではなく実際に起きた出来事を扱った記録映画として分類されるという判断でいいのではないでしょうか。 ソル・ギョングは本作の6年後…

『キリング・ストーキング』クギ その5 『残酷な神が支配する』萩尾望都

さて本腰で『キリング・ストーキング』を語らねばと思ってはいるのですがなかなか難しいのです。 今日の比較相手は萩尾望都『残酷な神が支配する』を選んでみました。 以下両方のネタバレになります。ご注意を。 萩尾望都『残酷な神が支配する』と『キリング…

『嘆きのピエタ』キム・ギドク 『どろろ』

もともとクギ作『キリング・ストーキング』の批評として選んだ『嘆きのピエタ』(未見だったにも関わらず)でしたがこちらのほうだけもう少し。 以下ネタバレしますのでご注意を。 お前を捨てた母親だと言ってイ・ガンドの前に現れた女性ミソンでしたが実は…

『キリング・ストーキング』クギ その4 『嘆きのピエタ』キム・ギドク 

前回の説明どおりかつて心酔していた映画作家キム・ギドク作品でしたが『うつせみ』(私は『空き家』となっていた頃観ましたが)を最後に次第に離れギドク氏の人格にも疑問を抱いてこの作品『嘆きのピエタ』は観ないままでした。 『キリング・ストーキング』…