「衝撃の・・・」とか「最高に面白い」とかの称賛で試しに読んでみてもなかなか読み進むことができなくなってしまったのは私がすっかり年老いてしまったからなのでしょうか、と思わされるこの頃。
この作品は珍しく現在公開されている第9話までしかも止まらずに読めてしまいました。
以下ネタバレしますのでご注意を。
ツイッターではちょい前から頻繁にトレンドに上がるほど話題になっていて気づいてはいたものの「どーせまた」という意識が働いて動かずにいたのですが今回山田玲司ヤンサンで取り上げられて感想を聞いて「それなら」とやっと重い腰を上げた次第でした。
山田先生から説明と解釈を聞いていたからこそ読み進められた部分もありますが確かにこの作品はそれ以上に読みたくなる何かがありました。
(ヤンサンで賞賛されていても自分には合わない時もありますので)
絵柄はなんというのかかっちりとしたものではない遊び描き的なタッチで私はとても好きな感じです。
とはいえ小学生が虐待やいじめを受ける話はさすがに食傷気味過ぎるし辛いので読みたくはないしそれを描くことで興味関心を惹こうという手立てと思ってしまう時もあるのですが本作の目的はそこではなく別のところにあると感じます。
いったいそれはなんなのでしょうか。
タイザン5(ファイブ)という不思議な名前の作者氏はほかにもいくつか短編を公開されています。
そのうちのひとつが『キスしたい男』です。
ここに描かれているものも題材はほぼ同じです。
どうしていいかわからない状態の主人公はその家族(母親)から虐待を受けていてそこに彼を助けたいと思う第三者が登場する、という筋書きは『タコピー』と同じです。
この作品では主人公は第三者である彼女の愛情で呪いが解けて救われる、という筋書きになっています。
しかし、ということはほぼ同じ題材をさらに膨らませ描いている『タコピーの原罪』が同じようなハッピーラストになるとは思いにくい。
しかも主人公は第三者であるタコピーです。
実は『キスしたい男』はあり得ない話なのです。
学校へ行かなくなったしょぼい少年を気にかけてくれる可愛い少女は存在するはずがない。しかしその存在がいないとこの話は成り立たない。
そこで本作はその「可愛い少女」の立ち位置に「ハッピー星から来た宇宙人タコピー」というあり得ない存在を立たせたのです。それくらい「救ってくれる可愛い少女」はあり得ないのです。
作者氏はそこが気になったはずです。
あり得ない立ち位置に立ってくれるのは宇宙人くらいなのではないか。
しかも脳天気なハッピー気質の宇宙人です。
自分の力で他人を必ずハッピーにできると信じ切っている宇宙人、でもなければ虐待に苦悩する少年少女を救えるなんて思わない。
それほどあり得ないのです。
さてタイザン5氏は今回この物語をどのように決着するのでしょうか。
こんな凄いマンガを描いてくれる人がいること、そしてそれを評価してくれる人たちがこんなに多いことがとても嬉しくハッピーです。すでに。