神山健治の名前は私にとっては攻殻機動隊なのでこれも当然かなりの期待を持っての鑑賞だったのですが最初から最後まで一部の隙もないほどの酷い内容だったので逆に驚いてしまいました。
wowowで前哨戦として攻殻機動隊の放送もされ「やはりおもしろい」と再確認しただけに衝撃ともいえる残念さでした。いったいこれはどういうことなのでしょうか。
結局神山監督による『攻殻機動隊』の面白さは士郎正宗原作と押井守監督の基盤があったからこそだったのでしょう。
しかしそれにしても本作『永遠の831』のクオリティの低さには悲しみすら感じます。
ネタバレしますのでご注意を。
正直この作品には何一つ良いものがない。
キャラクターもアニメーションもストーリーも演出もいつの時代に作られたのかとがっくりでした。神山監督は少なくとも『攻殻機動隊』で何も学ばなかったのでしょうか。
キャラクター造形には目新しさがないどころか特に女性は昭和感が丸出しで恥ずかしくなります。
内気そうなもじもじ少女と真逆に露出狂勘違い女を出してくるあたり神山監督はかなりのミソジニーなのです。
勘違い正義漢の主人公、まったくカッコよくないのにイケメン風こちらも勘違い野郎テロリスト、というちぐはぐ頓珍漢勢ぞろいのキャラクターたちに共感する人がいると思えない。
そしてあからさまな「良い人」と「悪い人」の描き分け。
神山氏は一度『タコピーの原罪』を読んで勉強していただきたい。人格というのはそんな簡単な浅いものではないのです。
というような基礎の基礎を話していることが虚しい。
つまりそれほどにキャラクターを作る世界を作る、というのは難しいことでありその基盤があれば様々な面白い物語が作れるのだということです。
いえば神山監督の『攻殻機動隊』は面白い二次創作のようなものだったのです。
とても面白い二次創作作者のオリジナルがしょぼい、というのはよくあることでした。
『永遠の831』はそれを思い知らされる作品でした。