ガエル記

散策

2020-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『ミス・メドウズ』カレン・リー・ホプキンス

とても面白い映画でした。 ところがレビューを見てみるとかなり低評価でしかも呆れ果てたという感じが多くてちょっと驚きました。 ネタバレになります。ご注意を。 実にアメリカ的な女性のアメリカ的な物語、と私は思いました。 自分の個性を隠すことなく正…

『ねじの回転』ティム・ファイウェル

ヘンリー・ジェイムズ原作小説はいかにも私が好きそうなカテゴリなのにもかかわらずなぜかこれまで縁が無くて読まないままできました。 今回BBC製作の本作を観て今更ながら「これは!」とはまり込んでいますw とりあえず小説を読まねばと思いamazonを除くと…

三島由紀夫を考える

Huge Nihility: The World View of Yukio Mishima 三島由紀夫の考えが好きではない、どころか嫌いなのにもかかわらず三島についての話があるとつい見入ってしまうのはどうしてなのでしょうか。 若い頃は軍服ごっこをして自衛隊員の前で大演説して割腹自殺し…

『戦ふ兵隊』亀井文夫

Fighting Soldiers(1939) 一月万冊、安冨教授から『戦ふ兵隊』の映画を教えていただきました。 昭和14年製作。日中戦争のなか戦意高揚のためのドキュメンタリーとして作られました。しかしその内容が戦争で家を焼かれ立ち尽くす中国人や日本兵士の悲惨な…

パコ・デ・ルシア 灼熱のギタリスト

パコ・デ・ルシア、素晴らしい音楽でした。 スペインの映像を観ているだけでも気持ちが良くなってくるのはどういうわけでしょうか。いいなあ。 映画『パコ・デ・ルシア 灼熱のギタリスト』予告編 しかしフラメンコ奏者が憧れる歌手はやはりロマなのですね。 …

『親という名の暴力』小石川真実 その2

本著の書き手・小石川氏が生まれてすぐから母親そして父親からも精神を病んでしまうほどの抑圧を受け続け、成人してその異常性を非難し続けても彼らの考えをまったくかえることができず自らもその抑圧から逃れることができなかったことは恐ろしいとしか言え…

『親という名の暴力』小石川真実

両親から精神的抑圧を受け続けるとどういう人格になりどういう人生を歩むことになるのか、ということを教えてくれる一冊でした。 タイトルの「暴力」は肉体的性的なものではなく精神的暴力なのですが精神的暴力というのは子供にも周囲の人にもわかりにくく、…

『ジャック・ドゥミの少年期』アニエス・ヴァルダ

なんて幸福な映画なのでしょうか。 監督のアニエス・ヴァルダがドゥミの伴侶だったと後で知りました。 夫の少年時代をこんなに愛らしい夢のように描き出すことができるなんて奇跡のような夫婦に思えます。 特に始まりの子供期の少年がとても可愛らしい。 優…

『カリスマ』黒沢清

はまりました。 難解で一つ一つの場面に何らかの意味があるとかどうでもいいと思うほどにおもしろかったです。 なんですか、この奇妙な感じ。 登場人物は非常にごくあたりまえの日本人 としか見えませんがあたりまえであればあるほど奇妙で不気味でおかしい…

『私はあなたの二グロではない』ラウル・ペック

(I Am Not Your Negro)は、ジェイムズ・ボールドウィンの未完成原稿『Remember This House』を基にしたラウル・ペック監督による2016年のドキュメンタリー映画である。サミュエル・L・ジャクソンがナレーションを務めるこの映画は、ボールドウィンによる公…

『リチャード・ジュエル』クリント・イーストウッド その2

とはいえリチャードが痛々しいのは「さえない男」だからではなくて「立派なアメリカ市民の鑑」だからなんですよね。 彼はいわゆる保守の人ですね。アメリカ魂を持った男性なわけです。 正義を愛し、銃を信じ、アメリカ政府を尊敬している人物です。お母さん…

『リチャード・ジュエル』クリント・イーストウッド

クリント・イーストウッド映画の見本のように面白く楽しめる一作でした。 正義とは何かを見つめ人生の価値を考えさせられるのがイーストウッド映画だと思います。その表現は芸術とかマニアックなものではなくて誰が見てもとてもわかりやすく退屈せずに楽しめ…

「バカ」の研究 ジャン=フランソワ・マルミオン

表紙に書かれている Connerie というのがフランス語でバカという意味らしい。 インターネットが普及してから私たち以前よりもっと多くの「他人の意見」を知るようになりました。 私のように田舎町に住み他人とのかかわりが極端に少ない人間でもネットを覗き…

『マイ・チャイルド・レーベンスボルン 』

戦後のノルウェーで、ドイツ兵との混血児を養子として育てるゲーム『my child lebensborn』。自分の子供が売国奴として学校で虐められ、周囲の住人にさえ差別され、何もかも辛すぎるゲーム。だが何より辛いのは、これが本当にあった歴史ということ。一人でも…

『複雑さを生きる』安冨歩

複雑な世界をやわらかに生き抜く方法〜東京大学教授安冨さんと一月万冊の清水有高〜年収1億円を稼ぐマインドや真の知的思考をするための思考法 れいわ新選組で安冨歩氏を知りYouTube「一月万冊」で清水有高氏との対談でその考えを学ぶという奇跡のようなすば…

学校をなくそう

いつの頃からか「学校、という仕組みはもう無くしたほうがいいのではないか」と考えるようになりました。 生徒同士だけでなく教師から生徒、あるいは生徒から教師、そして教師対教師のいじめ虐待、暴力、ハラスメント、様々な言葉で表現される怖ろしい関係は…

『複雑さを生きる』安冨歩 第4章 動的な戦略 一 無形

いきなり第4章ですがどうしてもここを書きたかったのです。 つまりネタバレになりますのでご注意を。 この「無形」という言葉については以前安冨教授ご自身がれいわ新選組の山本太郎氏について語られていた時に説明されていたのを聞きました。 安冨氏は孫氏…

『贖罪』黒沢清 その2

第四話と最終話を観終わりました。 小泉今日子さんがとても素晴らしく見ごたえありました。 しかしこれは俳優の魅力と言うのは結局監督の演出力であるという証明でそれは当たり前ですね。 ネタバレになりますのでご注意を。 第四話、小川由佳。池脇千鶴が演…

『贖罪』黒沢清 その1

ネットフリックスにて鑑賞。原作は未読です。 全部観終えてからだと忘れそうなので途中で書き留めておきます。 ネタバレしますのでご注意を。 「いかにも現代日本らしい幕の内」弁当的物語となっています。 冒頭小学校で遊んでいた数人の女児たちに声をかけ…

『エヴァ』ブノワ・ジャコー

最近の日本の観客は簡単に答えが見つからない作品を酷く嫌う。以前はまだ難解な映画を有難がる一派もいたのですが1990年頃を境に答えがすぐに見える作品でないと罵声を浴びせるようになってしまいました。 この映画作品などはその最たるものかもしれませ…

『新世紀エヴァンゲリオン』庵野秀明

ネットフリックスにて鑑賞。再鑑賞の部分もあります。 『エヴァ』をリアルタイムでは観ていませんし、後日観る機会があった時ちらりと見て反感があったためかなり長い間観ずにいました。さらに後日ある程度観ることができましたがやはり最初に感じた嫌悪感に…

『POSE』Netflix

以前といってもかなり昔になってしまいましたけど、いわゆるLGBT系の映画小説マンガなどに浸りこんでいました。その頃はLGBTと言う言葉はなかったしBLという言葉すらありませんでした。 物語は主人公の目覚めから自分を認めてくれない世間や家族との葛藤差別…

『マイケル・ジャクソンの思想』安冨歩 その2「ウィズ」

ダイアナ・ロスがドロシーを演じる黒人版『オズの魔法使い』である『ウィズ』でマイケル・ジャクソンはかかしを演じています。 安冨歩著『マイケル・ジャクソンの思想』は昨日書いたように主に『ライブ・イン・ブカレスト』に基づいて分析されているために『…

『マイケル・ジャクソンの思想』安冨歩

マイケル・ジャクソンが1992年10月に行ったブカレストのライブを中心に収録されたライブDVDからの考察でありました。 急遽このDVDを購入して読みました。 以下ネタバレになりますのでご注意を。 購入する際amazonでのレビューが目に入りました。もとも…

まだまだ続くコロナライフ

コロナはまだまだ収まる気配はなく冬を迎えた時にどうなっていくのかの不安もあります。 長かった安倍政権がポンポン痛いであっけなく終わりを告げ菅政権となってから微妙にいろいろなことが動き出した気がします。 経済は落ち込み引きずられるように人間性…

『ネバーランドにさよならを』ダン・リード

大好きだったマイケル・ジャクソンを偲び安冨歩著『マイケル・ジャクソンの思想』を読んで彼の解析を学ぼうとしている時にこのドキュメンタリーを観るのはどうなのだろうかという迷いはありました。 ネタバレしますのでご注意を。 この映像は二人の白人男性…