ガエル記

散策

三島由紀夫を考える


Huge Nihility: The World View of Yukio Mishima

 

三島由紀夫の考えが好きではない、どころか嫌いなのにもかかわらず三島についての話があるとつい見入ってしまうのはどうしてなのでしょうか。

 

若い頃は軍服ごっこをして自衛隊員の前で大演説して割腹自殺した奇妙な小説家、という印象しかなくて読むこともしなければ調べることもなかったのですが、年を取ってきてから、なのか三島由紀夫という人が気になって仕方ありません。

 

三島が亡くなった時の日本は経済成長の中にあって彼は日本が「日本人の心を無くした経済大国」になることを憂いていましたが現在の日本はすっかり落ちぶれ果てています。三島死後いくらもしないうちに日本の経済がここまで零落してしまうことは彼も予測していなかったのかもしれません。その上日本人の思考能力と精神は三島が予感した通り順調に低下していったと言えるでしょう。

 

とは言え私は三島由紀夫が理想としていた日本の伝統というものには(私が彼の理想を少しでも把握したとして、ですが)不気味さしか感じません。

三島自身も自分の「理想の日本」はもう葬るべきなのだろうと考えてもろともに死のうとしたのだろうと思います。

それでも生きて欲しかった、とも思いますがそれが彼の理想だったのでしょうね。

 

彼の小説は僅かに読んだだけですがそこに描かれた人物や考え方には反感しかありません。この動画の中で紹介される彼の小説と世界観にも反感しかありません。

それなのに三島由紀夫という人物と思想を覗き見ずにはいられないのはどういうことでしょうか。

彼はやはり日本の理想そのものだったようにも思えます。

小さくて弱い体で見栄を張り、奇妙に歪んだ思考を美しいと思い、大人になりきれない幼児性を持つ、彼は日本人のカリカチュアなのです。

彼自身それを自覚しそれはもう葬るべきだと考えたのではないのでしょうか。

 

時が過ぎ三島はいませんが彼には到底届くこともかなわない惨めに悲しい日本万歳者たちが最期の呻きをしているように感じます。

三島が考えた通り日本という国と日本人はもう地球上からなくなってしまうのかもしれません。

そこに住む人々が幸福に暮らしていけるのならばそれでいいんじゃないかと私は思っています。