ガエル記

散策

『忍者武芸帳 影丸伝』白土三平 その8

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

 

さてかまいたちに胸を切り裂かれおばばさまからもらったキノコの菌体から発見された物質による薬用療法を経て林崎甚助は肺病が完全治癒してしまった。

甚助は咳も出ず胸いっぱいに空気を吸ったのだった。そして北畠具教の娘・小萩と仲良くなっていく。病が治り甚助は仕官して普通に生きていきたいというこれまでとは違う意識が芽生えていた。

北畠は京に坂上主膳がいることを教え甚助に向かうことを勧めた。早く娘と甚助が幸福になれることを願っていたのだ。

 

北畠具教は娘と甚助を別々に送り出した。その後彼は彼の弟子たちに命を狙われる。彼らはもともと刺客として送り込まれていたのだ。

が、腕はまだ北畠の方が上だった。弟子たちを一掃しそこへ現れた無風道人を茶に誘った。

無風もまた北畠の首を狙う者だった。それで子どもたちに金を用意してあげられるのだ。

北畠は無風に討ちとられた。

 

 

甚助と小萩の旅立ちは何故別々だったのだろうか。ここからふたりで旅立つことができたら小萩は死なずにすんだのに・・・しかし人生というのはそういうものなのだろう。

 

かくして甚助はひとり京へ向かい、小萩はわずかに進んで甚助が追いつくのを待っている間に苔丸たち子ども盗賊団に襲われ殺され身ぐるみはがされてしまうのだ。

その横を甚助は通り過ぎてしまう。

「小萩どのに一目会いたかった」と思いながら。

そこへ影丸がやってくるのを甚助は見る。

甚助の頭に様々な思いがよぎる。信長の声、北畠の声、そして影丸がかつて言った「我々は人々の歩んだ道をさらに進んでいくんだ」という声。「立派な人だ。斬れない」と甚助は迷う。

一方影丸は甚助の迷いを見通していた。勝負は完全に影丸のものだった。

甚助はあしらわれ影丸は遠くへと去っていた。

 

苔丸に率いられた浮浪児たちはさらに多くの仲間が加わり今や巨大な群盗となって各地に出没していた。確実に生き延び大きく強くなりながらも同時に仲間割れが起きている。無風道人が心配した事態だった。

 

肺病が癒えた甚助。すっきりとした二枚目である。

ここで甚助は奇妙な仇討ちを果たす。

新田という人物を経て甚助は念願の仇敵主膳と相対する。新田は主膳の親友だったのだ。

そして新田が問うと主膳自身が甚助との果し合いを望んだというのだ。

甚助は主膳を討ちとった。仇討は終わったのだ。

 

さて奇妙な事態になる。

明智光秀が登場するがどうも影武者の主膳に思われるのだ。

となれば甚助が討ちとった主膳は一体誰だったのか。

 

と、その明智光秀の軍が松明に取り囲まれるのだが鉄砲隊で撃ち続けてもその松明の群れは止まることなく近づいてくるのだ。

「撃たれても死なない。化け物だ」と明智軍の兵士たちは怯え慌てふためき半数以上が逃げ出してしまったのだ。

いくら明智光秀が「目くらましだ。敵の手に乗るな」と叫んでも無駄だった。

が、兵士たちが逃げ延びた先に影丸たちの一隊が待ち構えていた。

兵士たちは度肝を抜かれ今度は逆に引き返した。そのため後ろから逃げてきた者と衝突し大混乱となってしまった。

恐怖は恐怖を生み全軍は狼に襲われた羊の群れのよううに仲間を踏みつけながら反対方向へとばく進した。

そしてそのまま暗さとどうしようもない力のために摺鉢谷へ落下していった。

一瞬にして二万数千騎が消え残った三千ばかりが命からがら逃げていった。

「フフフうまくいきすぎたな」

影丸たちは笑った。

鉄砲で撃っても進んでくる松明は蝋燭を乗せた亀の大群にすぎなかったのだった。

 

かくて各地に一揆の反乱軍は優勢に活動を展開した。

影丸は宗教は信じていない。

 

ここからあの「林崎甚助が主膳と信じて討ち取った男」の打ち明け話となる。

 

男は最上岩代村の百姓だった。永禄初年、村は一揆に敗れ極度の貧困にあえいでいた。

長助という若者は武士になりたいと腕を磨いていた。友は笑ったが本人はまじめに考えていたのだ。

そこへ武士が通りかかり長助に勝負を挑む。ところが長助が勝ってしまったのだ。

それから長助は武士と出会うたびに腕試しをした。ところがすべて勝ち抜いてしまったのだった。

ある日、噂を聞いたという武士が長助に挑み長助を倒すが「ついてこい」と道場へ連れていく。

そして「坂上主膳と名乗るがいい」と言って去っていったのだ。

長助はその時から坂上主膳となり見知らぬ武士の計らいで修業に励みさらに別の道場でも腕を磨き人から怖れられる剣士となっていった。

やがて松永弾正の家人として召し抱えられ妻を娶り子が生まれ幸せな日が過ぎていったのだ。

だがある日ひとりの若者からかたき討ちの挑戦を受け斬り捨てることとなる。さらにふたりの者が現れ同じように斬り捨てた。

しかたがない。長助は坂上主膳なのだ。

そして林崎甚助が現れる。

こうして坂上主膳を名乗った長助は死に主膳自身は生き延びていく。

己の経緯を書いた書状を読んだ影丸は怒る。

 

苔丸の浮浪児集団の結束はまずます危ういものになっていた。

苔丸は分捕り品を平等に分け無風道人が言ったように自分たちの村を作っていくのが夢だった。

しかし集団内で力を持っている男たちはそんな苔丸の主張をこころよく思わない。自分が取ったものは自分のものだと言い張った。

そして苔丸の目が届かないところで子どもたちに金を渡し菊を人質に苔丸を脅した。

乱闘となった。

菊が死に皆が傷つき苔丸も腕を斬られた。そして相手を殺し子どもたちの殺戮が続く間に兵隊が襲ってきたのだ。

 

天正三年。蛍火以下明智十人衆が数度目の影丸暗殺に向かった。

気狂いの女は蛍火である。

十人衆は影一族を根絶やしにしようとしていた。

まず影丸が底なし沼にはまって死んでしまう。

猟師の百蔵が殺される。(が彼は影一族ではない)

がその殺害をした十人衆のひとりが爆死。

 

 

鬼吉こと蔵六を狙った十人衆は伊賀忍法病葉の法を見破られ殺される。

 

クサレを狙いシロアリを放つ。家がシロアリによって倒壊するがクサレ自身は穴を掘って逃げ出していた。

 

ここですでに十人衆は七人か八人死に、影一族は影丸と一族ではない百蔵のみしか倒せていない。

そして逃げ出したクサレを追った十人衆が蛾で襲ったがヤンマ(トンボ)によって全滅されてしまう。(トンボは最強ってほんとだった)

結局クサレは殺せず十人衆がまた一人減った。

アナグマかわいい。

 

シビレは残る十人衆のひとりを自滅させる。

 

そしてここで最初に死んだことになっていた影丸が実は岩魚だったとわかる。

雨が降り出し岩魚は生きかえり仲間の元へ急いだ。

 

さて明智十人衆で生き残っているのは蛍火だけとなった。

蛍火はみそぎをし「重太郎、きっと地獄で会うわね。明美は天国だものね」とつぶやく。

 

蛍火はひとり影一族と相対した。

つぎの瞬間闇一族からの手裏剣を受けた蛍火は体中に傷を負う。「この次動けばもう一つの腕が落ちる」

が蛍火は動いた。

残っていた腕が落ち、両腕のないまま蛍火は飛んだ。

鬼吉の刀を腹に貫き通され走りながらさらに背後からも刀を受けた。

蛍火は駆け通した。崖に寄り片足を斬られさらに背後から刀を受け崖下へと落ちていったのだ。

 

影一族はしばらく普通の飯は食えないぞと鍋を囲んだ。太郎だけが父親の安否を案じていた。

気になる太郎は一人飛び出し父を呼んだ。が答えのないまま仲間のもとへ戻ると仲間は影一族たちは死んでいたのだ。

 

なんと死んだ蛍火はそのつもりで体に猛毒を仕込んでいたのだ。

そして死の間際に影一族の住み家の上流へと駆けたのだ。

水源地に落ちた蛍火の身体から猛毒が流れ出しその水を知らずに影一族が口にしてしまったのだ。

抜け出した太郎だけが生きのびることになってしまった。

 

「死しても術が残れば死なない」といった蛍火の言葉は実行されてしまったのだ。

 

それにしても蛍火の殺され方が明美とまったく同じだったのが気になる。

明美を殺した時に蛍火は涙を流した。

明美の姿を見て蛍火は自分の未来を予測したのかもしれない。