ガエル記

散策

増殖するシャーマン

『増殖するシャーマン』島村一平 その12 完

ネタバレします 終章 解き放たれる「想像の共同体」、紡ぎだされるネットワーク ついに終章まで辿りついた。 本書におけるまとめがされている終章である。 「シャーマンの増殖」という現象の謎を解きながらシャーマニズムによるルーツ探求を通してモンゴル・…

『増殖するシャーマン』島村一平 その11

ネタバレします。 6章 国境を越えるシャーマニズム 2 ロシア・ブリヤート人たちのモンゴルへの旅 ロシア・ブリヤートの人々は一般的にはモンゴル・ブリヤートをブリヤート人とはみなさず「モンゴル人」と呼びならわす。そんなモンゴル・ブリヤートのところ…

『増殖するシャーマン』島村一平 その10

ネタバレします。 5章 「女性」として想像されるルーツ ____________粛清の記憶と「ホイモルの女房」信仰 3 語り手としてのシャーマン 「ホイモルの女房」を巡る不可解な「伝承」の裏側では帝政ロシア支配下にあったブリヤートの人々に実際に降りかかった「…

『増殖するシャーマン』島村一平 その9

ネタバレします。 5章 「女性」として想像されるルーツ ____________粛清の記憶と「ホイモルの女房」信仰 1 ホイモルの女房を巡る信仰 ホイモルの女房は、モンゴルブリヤートのシャーマニズムにおける諸精霊の中でほぼ唯一神像として形象化されている精霊で…

『増殖するシャーマン』島村一平 その8

ネタバレします。 4章 創り出されるルーツ 1 ルーツの断絶したシャーマンたち まず紹介されるのはツェレン・ザイランと呼ばれる最高位のシャーマンである。 1999年夏、モンゴル国ドルイド県で筆者はザイランに会った。 彼は社会主義時代に秘密裏にシャーマ…

『増殖するシャーマン』島村一平 その7

ネタバレします。 3章 シャーマン誕生とルーツ探求運動 2 モンゴル世界における父系系譜の意義とその忘却 ブリヤートの人々は系譜とクラン名をよく記憶していると言われている。 これに対しモンゴル国の多数派集団ハルハ人はこれが忘れ去られている、という…

『増殖するシャーマン』島村一平 その6

ネタバレします。 2章 ルーツ信仰としてのシャーマニズム 4 ルーツ化する精霊たち モンゴル世界において神とは神格化した天空そのものであった。 現在、アガ・ブリヤートのシャーマンたちに共通して信仰される神として”オイホン13公”が上げられる。この神…

『増殖するシャーマン』島村一平 その5

ネタバレします。 2章 ルーツ信仰としてのシャーマニズム 3 イニシエーション、あるいはブリヤート文化の再学習 「カッコウが鳴くと、ボーの季節が始まるのだ」 シャーマンの儀礼の多くは夏から秋にかけて5月~8月にとり行われる。 (9月は冬なのか) 一番…

『増殖するシャーマン』島村一平 その4

ネタバレします。 2章 ルーツ信仰としてのシャーマニズム 1 シャーマンとシャーマニズム ここで我々にはすっかりなじみとなった「シャーマン」という言葉が19世紀ブリヤート人学者ドルジ・バンザロフによるとトゥングース語の「サマン」に由来するというの…

『増殖するシャーマン』島村一平 その3

ネタバレします。 1章 ポスト社会主義期における宗教とエスニシティ 3 モンゴル研究・ブリヤート研究におけるエスニック集団論 本節は役者に光を当てるスポットライトである。 多国家に居住するモンゴル系集団。これはもう小さな島国の中で多数派として居住…

『増殖するシャーマン』島村一平 その2

昨日、いつものようにここの記事リンクをXにポストしたらなんと本作の著者である島村一平氏に「いいね」&「引用」いただいてしまいました。 喜びと共に恥ずかしさでいっぱいです。 さらに引用にまでツェベクマさんの話を書いてくださり感謝するばかりです。…

『増殖するシャーマン』島村一平 その1

序章 「増殖するシャーマン」 1 モンゴル・ブリヤートという悲劇 「国民国家(ネーションステート)とは近代が生み出した最大の《呪術》だった。 という文章から始まる。 近代そして現代でもその呪術は解けてはいない。むしろそれは複雑に執拗にからみつい…