ガエル記

散策

『三国志』再び 横山光輝 十二巻

物語が曹操パートに入る。

なにしろずーっと曹操様を観ていられるのですぞ。眼福眼福。曹操は小柄だと言う史実というか記録があるので横山先生も意識しておられるようだけど、どうしても好みのためか(氏は好きなキャラをすらりと描きがち)大きめに描かれているように思えます。とにかく際立つ美形だというのは確か。私は壮年期以降の曹操デザインもとても好きです。

 

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

曹操と彼が守護する帝は許昌にいる。その許昌を李傕・郭汜の敗残兵らが狙っていると聞き曹操は討伐軍を考えたが呂布の存在が出陣を迷わせる。都を空にすれば呂布は確実に略奪に動くからだ。

そのため曹操呂布に平東将軍の称号を与えて忠誠を誓わせた。曹操は速攻で南陽宛城へと進軍した。

宛城ではその報がもたらされ戦わずに開城して曹操を受け入れたのだ。だがその心内では曹操討伐の意志が潜んでいた。

 

曹操はこの城で胡弓を引く美しい未亡人を見染めてしまう。名は鄒氏。城主張繍の縁続きの張済の妻だった。

曹操は鄒氏に胡弓を弾かせ酒を飲みすっかり心を奪われてしまう。

張繍はその様子に付け入った。今なら兵を動かしても事は容易いだろう。気になるのは曹操の護衛典韋だけだった。

典韋をおだて酒を飲ませて酔いつぶれさせ武器を奪い取った上で火事を起こした。曹操は鄒氏と優雅なひとときを過ごしていたが火事に気付き「典韋典韋」と呼ばわった。

 

酔いつぶれて眠っていた典韋も火事の煙で目ざめる周囲は燃え盛っている。武器を探したが無い。典韋はそのまま外へ出た。そこには敵兵が集まっていた。

 

典韋の「絶対に曹操様をお守りする」という覚悟に痺れる。

武器の無い典韋はやむなく全身に矢を浴び矢ぶすまとなって立ち往生を遂げる。

曹操はひとり逃げおおせたが背後から矢傷を負い川に身を投げ「もうこれまでか」というところで味方の兵らに出くわした。

典韋が針鼠のようになって死んだことを聞かされた曹操は自分が酒と女にうつつを抜かしている間に忠義の家来を失ったと嘆き悲しんだが

 

この後、曹操は死んだ徐州の太守陶謙の家臣だった陳登父子と手を結ぶ。

陳父子は徐州の太守となってしまった呂布に大きな不満を持っていた。特に父の陳珪は明晰な頭脳を持ち話術を心得ていた。

謀叛を感じて召し捕り首を刎ねようとする呂布の前で落ち着き払って論破する胆力を持っている。

袁術が徐州に攻め入った際にも単身羊一頭だけを連れて敵陣に入り込み韓将軍とさしで話し合いここでも論破してしまう。韓将軍は陳珪老人の口車に乗ってしまった。

 

呂布のいる城に袁術軍が攻めてきた。だが袁術軍は呂布の目の前で同士討ちを始めたのだ。

呂布は陳珪に「敵が反乱を起こすよう御前にその任務を与える」と命じたのを思い出した。呂布軍は打って出、袁術軍に立ち向かった。

そこに現れたのが関羽率いる豫洲軍だった。

関羽の登場で袁術軍は逃走し始める。

 

呂布関羽に感謝し城で祝杯を上げ申そうと招待するが

ひえーこの関羽、めちゃくちゃかっこいいんですが。なぜこんなカッコいい顔が描けるのか意味がわからない。

 

呂布はすっかり気を良くし陳珪登父子を褒めちぎった。味方となった韓将軍たちをどうしようかと問うと陳珪は「山東に置いて地盤を固めさせた方がよろしかろうと」と答える。

この返事に疑問を持った息子に陳珪は「あの将軍たちは性根が卑しい。そういう人物を呂布の側においとけば呂布暗殺の邪魔になる」と答えた。

 

袁術孫策から与かった玉璽を自分のものとしてすっかり皇帝と称していた。その皇帝が思うように呂布を討伐できずにいる。袁術は苛立ち孫策に使者を出したが孫策は「その首を討つ」という返事をかえす。

その孫策に朝廷から「会稽の太守に任命」という旨と「勝手に皇帝を名乗る袁術を討て」という言葉を賜る。孫策はこれを引き受けた。

部下は孫策に「先頭に立って戦わず曹操の援軍をするという形をとってください」という助言をした。

 

袁術のいる淮南は水害に襲われていた。農作物が全滅となり食糧難を案じなければならない。そこへ曹操・玄徳・呂布軍が三十万の兵となって襲ってきた。そこへ孫策軍までが加わったのだ。

 

曹操軍もまた予定になかった水害で食糧不足に困窮していた。やむなく曹操は食糧総官の王垢の首を刎ねて皆の不満を落ち着かせるという策を行う。

また曹操の命令に背いた者の首を刎ねて見せしめとした。

さらに自ら死体の山を踏み越えて城壁にしがみつき兵たちを奮起させた。

曹操はこの戦いの勝利をもぎとった。

 

そして曹操は玄徳に豫洲から小沛に戻ってくれぬかと耳打ちする。

 

曹操呂布暗殺を計画している。

 

今回なんといっても陳珪老人のお手並みに感服しました。人の心を動かす匠の技です。