ガエル記

散策

『三国志』再び 横山光輝 十一巻

孫策小覇王と呼ばれるだけあって頼もしい。周瑜との関係も描かれて居たらなあと思ったりもする。

 

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

冒頭、孫策太史慈の一騎打ちで互いに相手への敬意が生じたふたりが主従になっていくまでが描かれる。

孫策は劉繇を討たんとし太史慈は劉繇の家来ではあったがその劉繇の了見の狭さに失望してしまう。

さらに太史慈は劉繇が戦意を失って逃げ落ちてからも古城に立てこもって孫策軍と戦い続けた。孫策太史慈を罠にはめ生け捕る。「早く首を刎ねろ」と言い続ける太史慈を説得し孫策は彼を部下とした。

太史慈は「三日の自由をくだされば優れた大将と兵を三千集めて精兵を作ってみせましょう」と言い出し孫権はこれを信じた。

翌朝太史慈がいなくなったと知った他の部下たちは孫策に呆れたが三日後太史慈は約束どおり三千の精兵を引き連れて戻ってきたのだった。

 

孫策の活躍は留まらず勢力は確実に増大していく。新しい時代の人物となった。

江南・江東八十一州は孫策の治める土地となる。兵は強く土地は肥え文化は栄えた。

小覇王孫策の地位は確固たるものとなったのだ。

 

そして呂布登場。

本作読んでなかった頃は「呂布って最強の戦士で赤兎馬っていう凄い馬に乗ってる」ってことだけは知って「かっこいいなあ」と思っていたのに読んでみると想像と違った。

さて、袁術孫策から「玉璽を返してほしい」と言われる。部下たちは懲らしめるべきと怒りの声をあげるが「その前に北方の憂いを取り除くべき」との声があがる。

「北方の憂い」とは「徐州の呂布と小沛にいる劉備玄徳」のことだった。

特に呂布は国を空けてしまうとここぞと襲ってくる恐れがある。

その呂布を倒すためにまず劉備玄徳を倒さねばならない。袁術はかつて呂布に約束していた莫大な贈り物を今届けた。劉備への攻撃を阻止しないよう封じ込めたつもりだったが呂布にそうした配慮は無駄だった。

呂布袁術からの贈り物は昔の約束として受け取り玄徳は守るつもりだった。自分のために。

玄徳のこのセリフはいくらなんでも間違いだろうなあ。「うむ。招待状だ」で良いはず。しかし玄徳のことだからこれくらい言ってしまいそうな気もしておかしいw

やはり関羽張飛は良い。

そしてこの一幕が好き。

そしてこの後の一幕も面白い。

呂布は玄徳だけでなく袁術軍の総指揮者紀霊将軍も招待していた。

敵対する両軍を一堂に招待し呂布は双方の和睦を勧める。

怒る張飛と紀霊将軍の前で呂布は悠然と遠くに槍を突き立たせ

誰もその槍に矢が当たるとは思えなかった。ゆえに紀霊将軍は承知した。

呂布は酒をお替りして飲み干し矢をつがえて射る。その矢は見事に槍に命中したのだ。

呂布の機転で両者の和睦が成立してしまった。

紀霊将軍が呂布に機智に驚くが私も驚いた。

 

呂布の素晴らしいと言えるこの采配を張飛だけは納得できなかった。

張飛呂布の部下が買い求めた馬を盗み出したのだ。

呂布は怒りすぐさま玄徳のいる小沛へ出陣した。やはり呂布呂布であるとしか言えない。

玄徳は突然の呂布の攻撃に驚く。「なぜ」と問うと呂布は「張飛にわしの軍馬を盗ませたではないか」と答える。この答えに張飛は「当然のことをしたまで」と言い放つ。

ここであっさり潔く戦おうと言い出す玄徳アニキ。張飛の嬉しそうな顔。

しかし関羽は玄徳を止め「張飛とふたりで呂布軍をくい止めますので許昌に落ちのびてくだされ」というのだ。

許昌。どうしてここで曹操の国が出て来たんだろう。帝がいるからなのか。

とにかく関羽はここで玄徳を曹操の胸元へと送り出すのだ。

運命か。

それともなるべくしてなったものなのか。

 

関羽張飛はここぞと暴れまわり呂布軍をなぎ倒していくが呂布自身には届かずそのまま玄徳が向かった許昌へと追いかけた。

 

許昌へ落ちのびた玄徳一行を曹操は歓迎する。

曹操✖玄徳として『三国志』を読む者にとってこの再会ほど嬉しいものはないがふたりの逢瀬はあっというまに終わる。

玄徳を除くべきという部下に対し暗殺などもってのほかと進言する部下もいた。

曹操はその意見に賛成し「玄徳に恩を恵むべき」とした。

曹操は玄徳を豫洲の長官に任命し兵三千と米一万石を贈ったのだった。

玄徳は豫洲へ赴任した。