確かにこう切り取ると意味深だ。
『三国志』再読します。まあ最初もかなりじっくり読んだのですが。
横山作品ほぼ長編を読んでしまい、と言ってもまだ『伊賀の影丸』や幾つもの作品があるのですが主作品がなくなってしまった感に襲われ(いわばロス状態なのでしょうか)寂しくなって今ここで『三国志』に戻ってみたくなりました。
ネタバレしますのでご注意を。
一巻、まだ何者でもない劉備玄徳。一仕事を終え久しぶりに会う故郷の母に当時貴重品だったお茶を買い求め大事に持って帰る、というエピソードから始まる。
しかしそのお茶を守るために張飛に助けられお礼に宝剣を渡してしまう。その宝剣は玄徳の由緒を示す大事なものだった。
それを知った母親は嘆き悲しみもらった茶を投げ捨て息子玄徳を𠮟りつけるのだが、ここで玄徳と張飛の出会いがある。
玄徳のは母は息子が立ち上がるのを知って桃園に宴席を作り若者たちの門出を祝う。
こうして三人は義兄弟の契りを結び世のため人のために戦うことを誓うのだ。
が、その後の三人の戦いの日々は虚しいものであった。命懸けで戦っても何の地位も後ろ盾もない彼らはあらゆる場所で軽んじられ都合よく扱われる。
後に関羽は曹操から寵愛され自分の配下にならないかと請われるが関羽が「玄徳様とは辛苦を共にしたのです」と断るのはここを読み返せばうなずける。
そしてその曹操ともこの時点で出会うことになる。
流浪者でしかない玄徳たちとは違い曹操は毅然とした司令官であった。
がその曹操自身もまた彼の中ではまだ何者でもないじれったさがあったに違いない。
黄巾の乱討伐に大きな貢献をした劉備軍には何の褒賞もなく僅かに劉備が地方の警察署長に任じられたのみだった。
そこで督郵から賄賂を求められ怒り狂った張飛がその男を気に吊るして叩きのめしその惨めな姿を尻目に三人が新たな旅立ちを誓い合う場面はおかしくもあり爽快だ。
そして三人は張飛の知り合いである屋敷に居候するのだが玄徳は以前一目惚れをした芙蓉姫と再会し恋をする。
これを見た関羽は失望し折よく屋敷の主人から立ち退きをほのめかせられたのを機に玄徳の尻を叩くようにして出立を急かすのが笑える。
他のフィクションならばこの芙蓉姫が後々関わってくるのは定石だけど横山マンガは恋路が短い。
が母親にはしっかり会いに行きまたもや叱り飛ばされてしまう。
その頃朝廷では宦官の十常侍が権力を恣にし霊帝は失意の中で崩御する。
そうした混乱の中で密かにほくそ笑むのが曹操だった。「こtれはきっと天下が乱れに乱れる」
乱れた天下になってこそ曹操は大きくなっていけるのだ。
ううんかっこいい。
そして董卓がここで突出していく。
新帝の弟・陳留王に王者の威厳を感じた董卓は陳留王こそ新帝にふさわしいと掲げて皆の前でこれを宣言するがこの言葉を聞きとがめたのが丁原だった。
董卓は丁原を煙たく思い暗殺を命じるが丁原の側には養子の呂布がいたのだ。
ふー『三国志』の出だしは読み返しても、というか読み返すと物凄い勢いなのが解る。
次々と綺羅星の如き豪傑が登場してくる。
世の中の腐敗とそれと戦おうとする玄徳たち、また違う思いで登っていこうとする曹操そして呂布、凄まじい物語である。