ガエル記

散策

『三国志』横山光輝 第二十六巻 その2ー敗走ー

超有名ネットミーム「げえっ関羽」です。しかしこの関羽かっこいいな。

 

 

ネタバレしますのでご注意を。

ずっと思い続けていたのですが横山先生は馬の描き方が美しい。なんとなく少女マンガ的な馬に思えますwシャープな感じ。(ご本人も馬がお好きだったとか)というか少女マンガ家が横山お馬を参考にしたのか。

特に影絵になった時にその美しさが際立ちます。

 

曹操はこれまでにも何度も大きな敗戦を体験してきて凡人ならばそれですべて嫌になってしまいそうなものなのに屈せず何度も立ち上がってきた男です。

とはいえこの度の敗戦は比較にならないのではないでしょうか。

揺るぎない帝王となった自覚もあり且つどれほど巨額をつぎ込んだかわからない艦隊を一瞬にして焼き尽くし失ったのです。

そこで亡くした兵たちの数三十万余。莫大な損失、自尊心を傷つけられ疲弊しきった体と心。曹操の今回の敗走の過酷さはぞっとします。

そしてそれらを計画したのは孔明なのです。

 

艦隊を失い陸地に上がって命拾いをし部下によって進路を決めていくしかない曹操をさらに呉軍が追いつめていく。

命からがら逃げのびた先が烏林の西・宜都の北だった。しんとした光景を見て曹操は大笑する。「自分ならここに伏兵を置いて敵を全滅させるだろう。こんな手抜かりをやるようでは赤壁の一戦も偶然の勝利と見た」

そこに現れたのが趙雲だった。

ひーっと逃げ出す曹操

部下たちは曹操を逃がすため我が身を犠牲にして守り曹操は抜け出した。

逃げ延びた部下の数は三十ほど。無情なことに雨が降り始め豪雨となった。

しばらく進むと民家があり曹操は食べ物の徴収を命じた。さらにここで許褚と李典に出会い合流となる。

さらに進むと兵士たちが疲労と空腹で倒れるのを見て曹操は休憩を命じる。

やっと人心地がついたと安息する曹操の前に現れたのが張飛だった。

孔明が言った通り雨が降り曹操が食休みを取ったのだ)

張飛がその首をもらい受ける」

曹操は慌てた。

いやさすがにここまで惨めな曹操を描くとは。横山先生もお人が悪い。いやうまいなあ。張飛に会ったらこうなるだろ誰だって。

がんばれお馬さん。

やがておいおいと散り散りになっていた部下が集まり始めた(みんなまじめだな)

だが誰を見ても傷を負っていない者はなかった。

曹操は疲れ果てた兵をまとめ再び進み始めた。

まさに敗走に次ぐ敗走であった。

 

曹操は華容道にたどり着いた。

孔明の言った通り曹操孔明の裏をかくつもりで山道を進む。しかしその先は山崩れで進めず凍てつく寒さの中回り道をすることになる。

その先は水がたまりそのままでは進めなかった。前日の豪雨で溜まったのだ。

曹操は部下たちに急ぎ橋を作らせる。降雪の中、疲弊しきった兵たちは水中で橋を作り始めるが遅々として進まない。

焦る曹操は動きの鈍い兵を斬らせた。

すでに死相が現れている。

力尽きて死んでいく兵士たちを横目に曹操は出来上がった橋を渡りさらに進み兵士たち

は倒れていった。

将のひとりが兵も馬も疲労の極に達しています少し休ませてはと提言するが曹操は許さない。それにしても、と曹操は続けた。

「この辺に伏兵を置けば我らは残らず公さんのほかはあるまいに」

(なんでいうかなあ)

(フラグですよフラグ)

その時一矢が曹操の行く手にドスッと刺さる。

そこへ現れたのが関羽だった。

へなへなと崩れ落ちる兵士たちに曹操は声を上げる。

「ええい。こうなれば最後の決戦だ」

しかしもう誰ひとり立つ気力もなかった。

ここで将は続ける。

関羽は奢る者に強く弱き者は助ける任侠の人物です。節義の士たることは定評がございます」

そんなことはわかってるという曹操に将は「かつて曹操様は関羽の行動を許し潔く見送られました。関羽とてその恩は忘れてがいますまい」

「ここは関羽に頼み見逃してもらっては」

とんでもないことを言い出したが曹操も力尽きていたのかそれともこれこそが曹操が生き残ってきた所以なのでもあろうか。

そして曹操は「関羽久しぶりだのう」と語りかける。

関羽は「潔くそれがしにお首を授けたまえ」

「昔おまえにかけた恩にすがってみたい」

「たしかに。だがその恩は白馬の戦いでいささか報いたはず」

関羽はここで昔を思い出してしまう。

曹操は約束を守り自分を玄徳の元へ帰るのを許し奥方のためにと路銀まで贈ってくれた。さらに関羽には旅の衣服まで用意してくれたあの出来事である。

その時関羽は確かに「曹操様おさらば。このご恩は忘れぬ」と言ったのだ。

複雑な表情の関羽。そんなに悩まずすぱっと斬っちゃえばあ。

これは無理ですね。完全に萎えてしまった。

しかも関羽は自分に向かって平伏し祈る兵士たちを見てしまう。

ここまで曹操にひどい目にあわせられながらまだ主人の命乞いをするか。

「哀れかな主従の情」

わしにこの者たちは討てぬ、と関羽は目を伏せる。

関羽はだまったまま背を向けた。

これを見た曹操は「今のうちに逃げよということか」と察し兵を急がせた。

(察しが良くてよかった)

関羽はその様子を見て敗軍の将の無残さを感じ自らの兵を引き上げた。

 

曹操軍はついに曹仁のいる南郡の城にたどり着いた。

惨めな我が軍を省み「この恨み必ず晴らす」と曹操は誓う。

 

休息した曹操は力を取り戻した。ほんとうに強い人である。

そして将たちの前で「必ずやこの仇は討つ」と言って各武将たちにこれからの指示を与えていくのだった。

 

その頃夏口では玄徳の元へ各武将が戻り勝利を祝って沸きかえっていた。

そこへ関羽が戻ってきた。

孔明は「曹操の首をあげたのはおそらくあなたであろうな」と言う。

関羽は「拙者は功を述べるためではなく罪を負うためにここに参った」と告げる。

拙者が無能なるため討ちもらしましたと関羽が言うのを孔明はあの疲れ果てた敗残兵がそこまで戦ったのかとかぶせる。

関羽は「でもござらぬがつい取り逃がし」と首を垂れる。

さらにあげたる首は一個もないと言うしかなかった。

孔明は「あなたは曹操より受けた恩で故意に見逃しましたな」カッと睨みつける。

関羽は「潔く罪に服します」と返す。

孔明はそれですべて済むのか。この大事な時に私情をはさまれ任務をはたさなかったのでござるかと突き詰めた。

「この罪は重い死罪に値する」

ごめんあまりに良いので保存した。

 

孔明は「関羽の首をはねい」と言い放つ。

これに張飛趙雲は驚き、玄徳は「軍師待ってくれ」と声を上げた。

わたしたちには桃園の誓いがある。関羽の死はわしの死を意味する。

わしに免じてわしにその罪をしばしあずけてくれぬかと玄徳は孔明に頭を下げたのだった。

孔明は「許すことはできません。軍紀はあくまで軍紀です」と毅然として言いながら「だが我が君のお言葉です。責任持って我が君があずかってくださるならおあずけいたしましょう」

孔明の言葉に玄徳は「関羽行くがよい」と言い関羽は頭を下げた。

 

宴が終わり玄徳と孔明は散策しながらふたりきりで語らっていた。

玄徳は孔明がすべてを見通しながら関羽に対して死罪はきついのではと愚痴る。

わああああっ。泣いた。

この名場面、良すぎる。良すぎるっっっ

しかもこの孔明の眼差しが・・・泣

どこまでもどこまでも孔明よ。

そして関羽はまたよりいっそう玄徳を敬愛してしまうではないかあ。

いつまでも(´;ω;`)ウゥゥ