ガエル記

散策

『三国志』再び 横山光輝 二十六巻

やっぱり曹操様はステキだ。

 

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

総勢百万の曹軍の出陣。威容の艦隊を見て周瑜は慄いた。

折しも強風で「帥」旗が折れ、曹操はこの日は引き揚げた。

が、周の旗もまた同じように折れてしまい周瑜はその下敷きとなって倒れてしまう。

孔明が見舞った時も周瑜はまだ起きれずにいた。が、怪我はなかったのだ。

孔明周瑜に会うなり「なにがそれほど不安なのです」と問う。

周瑜は「不安など何もない」と答える。孔明は「それは気の病です」と言い「良い薬を差し上げましょう」と続けた。

人払いをして孔明が紙に字を書き周瑜に手渡す。「これが薬でござる」

そこには「ただ東風を欠く」と書かれていた。

周瑜は身を起こし魏の大水軍を見てぞっとしたと告白する。「東風が吹かなければ火計を用いることもできない」そのため胸が痛くなってしまったのだ。

ここで孔明は昔異人から伝授された秘法を持って風を祈りましょうと言い出す。

「十一月二十日にかけて祭りをすれば三日三晩のうちに東南の風が起こりましょう」

魯粛はそれまでに祭壇を造らせた。

しかし孔明は知っていたのだ。彼は子供の時より気象を観測していて毎年十一月になると二三日だけ東南の風が吹くことに気づいていたのだ。孔明は造られた祭壇の上で祈りを始める。

黄蓋は干し草枯れ葉を積み込み曹軍へ向かう準備を整えた。

 

果たして東南の風が吹き始めた。

三国志』ほんとうにカッコいい言葉が多いのだ。

ここで周瑜は真っ先に曹軍へ向かうのではなく孔明暗殺の指示を出した。

周瑜の心を察し慌てる魯粛に「玄徳の元に帰すわけにはいかん」と言い放つ。

しかし孔明の姿はすでに祭壇から消えていた。

周瑜の部下がその姿を探し回る。孔明はもう船に乗り上流へ向かって漕ぎ出したという。

部下は孔明の船に追いつき「周提督よりおことづけがござる」と叫ぶ。孔明は「周提督のおことづけはわかっておる」

こんなかっこいいシーンある?

これで惚れてしまわないヤツなどおらんだろう。

しかしなおも追い詰める周瑜の部下の前に現れたのが趙雲だった。趙雲はすらりと追っ手の帆を射落とした。

ここで「孔明趙雲は我らの歯が立つ相手ではない」と声をあげ「それよりも一大決戦に向かおう」と諫めた者がいた。

戻る呉の船を見て趙雲孔明も安堵した。

 

報告を受けた周瑜は帰りの船まで用意していた孔明にさらに恐怖を増す。そして曹操と手を組んでまず玄徳・孔明を討つべきではないかとさえ言いだした。

これを魯粛は制す。まず叩いておかねばならないのは曹操。そしてその曹操を叩けるのはこの東南の風が吹いている間のみなのだ。

 

一方、玄徳たちは

なんか玄徳の顔見たらほっとした。この人はそういう人なのか。

関羽が帰りたくなるはずだ。

なんだろう。この能天気さwww

 

あっさりー

 

良いコンビだなあ。

孔明趙雲をはじめきびきびと命令を下す。

表情だけで張飛の心がわかるねえ。

 

ここ、すごく泣けちゃうの。病弱な劉琦様にもちゃんと仕事を割り当ててくれる。孔明心遣いの人なんだよなあ。

 

しかしここで何の命令もなかった関羽は怒りの声をあげる。

孔明は「お主は昔曹操に気に入られ大切にされた。今でもその恩は感じているはずだ」

関羽はすでに報いていると返す。

「敗戦で無残な姿をさらした曹操をお主は斬れるかな」とさらに問うと「斬れまする。私心に動かされたならば潔く軍法に服す」と答える。

玄徳もここで関羽の立場がなくなると口添えする。

孔明関羽に「軍命を怠ればいかなる罪にも服すと誓紙を差し出されい」とした。

それでやっと孔明関羽に命令を伝えたのだった。

 

様子を見ていて玄徳は急に不安になる。「関羽は人一倍情に厚く義を重んじる。やはり曹操は討てないかもしれぬ」

「討てないでしょう」と孔明

この思いやりが孔明の魅力なのだよ。ほんとに優しい人なのだよお。

 

さて呉軍は(孔明がいなくなり)才能あふれる周瑜提督の指揮で巨大な曹軍を相手に堂々と渡り合う。

蔡和の首を儀式に捧げ周瑜は勝利へと進む。

曹軍に降ると偽る黄蓋が向けた枯草を乗せた船は曹陣の湾内に入り火矢でもって燃え上がる。

その火はあっという間に曹軍大艦隊に飛び火していく。やむなく曹操は小舟を出して陸地へと上がった。

東南の強風は瞬く間に大艦隊を火の海にしていく。その様は火炎地獄となる。さらに火の粉は陸地の陣にも降り注ぎ天幕が焼けその火の粉が林や森にも飛び火した。

 

この時、曹軍は焼死者溺死者あわせて三十万を数えた。歴史に残る赤壁の戦いである。

 

命からがら陸へと這い上がった曹操の一軍は敗走した。だがそこへ呉の甘寧が走りこんできた。

曹軍の兵が防御するうちに曹操は走り抜けていく。

 

曹操軍は烏林の西・宜都の北に出た。

ここで曹操は大笑する。「もしこの曹操が奴らの立場ならここに伏兵を置おいて全滅させる」

そう言った途端目の前に趙雲が現れた。かつて曹軍の中を一騎で駆け抜けたあの豪傑と曹操は慌てふためく。

曹操の周りの部下も三十ほどになっていた。

無情なことにこの時豪雨が彼らを襲う。曹操は近隣の村で食べ物を奪い取らせ逃げようとするところに許褚と李典が追いついてきた。

合流しさらに進むうち兵が倒れる。曹操はここで休み食をとることにした。

あの孔明張飛に予言した状況である。

無論ここに張飛が現れ

曹操のこの逃げっぷり。さすがと感心してしまう。逃げる時はカッコなんかつけずこうでなければいかんのだ。

でもちょっと逃げてると

ハンサムに戻ってる、さすが。

強い人間はこうなんだなあと思う見本。

 

追いついてくる者は皆傷を負っていないものはいなかった。曹操は再び進み始める。

まさに敗走に次ぐ敗走であった。

 

しかし皆ついてきているんだからな。えらい。

曹操孔明が言ったとおり裏の裏をかいて山路へと進む。やれやれ。

許褚と同じこと言ってる。曹操も疲れて何も考えてないな。

 

進めば崖崩れ避ければ泥沼が行先を阻む。雪の降る中曹操は兵たちに水の中で橋を造らせる。寒さと疲労と空腹で兵たちは動けなかった。しかし休めば将に斬り殺される。

残兵の三分の一を失いながら橋を架けさせた。

更に山越えで三分の一が倒れ曹操に付く兵は三百人ほどになってしまう。

 

ここで曹操はまたもや「ここに伏兵を置いておけば我らは降参するしかないのに」とうそぶく。

その前に現れたのは関羽だった。

はい名場面。

 

こうして関羽は無残なほどにやつれた曹操軍とまみえる。

部下は曹操関羽の人柄を告げ許褚は「関羽に見逃してもらっては」とささやいたのだ。

あれほど孔明の前では強気を顕した関羽曹操を目の前にしてかつての恩義を思い出してしまう。でもこれ「玄徳よ、お前は良い家来を持った。うらやましいぞ」という一言が関羽のプライドをくすぐったってことかな。関羽は「ふーっ」とため息をつくほどその言葉に酔いしれてるってこと?一途な玄徳愛を褒めたたえられるのがなにより嬉しい関羽てことなのか。

そして関羽は目の前で跪き主君の命乞いをする兵士たちを見て背を向ける。

曹操関羽の行動をいち早く察して急いで逃げ出した。

曹操はなんとか我が城へとたどり着いたのだ。

 

関羽は陣へもどり「曹操をつい取り逃がし討ちもらした」と告げる。孔明は「故意に曹操を見逃されましたな」と言い放ち「この罪は重い。死罪に値する。関羽の首をはねい」と指さした。

これに一同は驚き玄徳は真っ先に「待ってくれ」と叫ぶ。「関羽の死はわしの死を意味する。今日の罪は許しがたいがわしに免じてしばしあずけてくれぬか」と頭を下げた。

孔明は「軍紀はあくまで軍紀です」としながらも「だが我が君のお言葉です」として関羽を去らせた。

三国志』でいちばん良い場面じゃない?

(ってばっかり言ってる気もするが)そしてやはり孔明の優しさに打たれてしまうのだ。こんな良い場面どうして描けるのか。

この時の玄徳軍の人柄とつながりがあまりにも泣けるのだよ。