ガエル記

散策

『蟲たちの家』黒沢清

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画像に出ている通り楳図かずお原作を黒沢清監督が2005年映画化したものです。

俳優たちの下手さも含めかなりチープな感じがしますがそれがかえって面白く感じます。

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

そして昨日観た『降霊』や他の作品との共通点はここにも表現されていて楽しかったです。

表面は善良だけど身勝手な夫、それによって狂わされていく妻、という構図は本作にも『降霊』にも最新作の『スパイの妻』にも描かれています。

『スパイの妻』は他と違って妻からの視点になっていますが善良だけど身勝手な夫vsそれによって狂わされていく妻、という構図は同じなのです。

『CURE』はもっとも明確ですし『クリーピー』もそうですしもしかしたらほぼすべてそうなのかもしれません。今後確かめていきたいものです。

となればこの構図からは何が考えられるでしょうか。

一見「男はわがままで酷いよね」「女性が可哀そうだ」となりそうですが常に男が優位にいるという黒沢監督の男女感がわかるようにも感じられます。

女性はか弱くて守ってあげなければいけないが実際は女性のほうが強かである、というのが黒沢監督の女性描写に思えますがこの感覚は最もクラシックでスタンダードです。

そうした正統派であるからこそホラーやサスペンスが描きやすいのでしょう。

 

本作に描かれる嫉妬深く権威的だが実は弱い夫、その男に惹かれる若い女、夫に翻弄されながらもしぶとく生きる妻、その女に惹かれる若い男、という古典的な物語が展開されていきます。

しかしこれ以外の人物造形には黒澤監督は興味が持てないのではないかと思えます。わがままな男と従順な女という関係性にしか萌えないのでしょう。

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