なぜかこの作品のポスターに関しては海外のものより日本のほうがよかったのです。
さっと言葉にしてしまえないほど興味深い映画でした。
まず感じたのは異常者として登場しているザビーナは現在の人間の目からはむしろまともに見えるのではないでしょうか。
何があっても表情を変えない他の人々、特にユングとその妻そしてフロイトのほうが明らかにヘンテコな人間に見えるはずです。
詳しく知っているわけではないのですがユングの妻エマさんは本人も学者で本も執筆されている才媛のかたのようです。なので本作に登場する従順でしおらしい何もしていない様子の妻、という役は本作での設定なのではないでしょうか。ちょっと気の毒ですがクローネンバーグ監督としてはそのほうが描きやすかったのですかね。
とにかく映画の中の妻エマは金持ちの令嬢でありながら夫ユングに控えめに寄り添い尽くし続けるという役割で「男子を産めなかった」と言っては謝り「また妊娠して太ってしまった」と言っては謝り、夫の不貞を知りながら許しさらにはその相手に夫を助けてほしいと頼む日本女性も驚くほどの良妻ですが心の中はどろどろとしてモノがあるようで面白い存在です。
当のユング氏は本作で最も奇妙でヘンテコで変態で奇天烈な感じがする紳士でやはりとても興味深いかたです。
知性深く理性高く愛妻家でありザビーネとの仲を解消しようとしてどうしてもできず逆にはまりこんでしまう紳士顔がとても楽しいです。
師匠であるフロイトとの仲も絶妙です。
ともに船で遊ぶ光景があまりにもホモセクシャルで頬が赤らむようでした。
それどころか本作はいたるところに性的な構図が仕掛けてあります。
つまり映画作品自体が性的解釈になっているわけです。
クローネンバーグ恐ろしく楽しい監督です。