何度か観ていますが何度観ても怖い映画です。
観ているうちに自分自身が取り込まれてしまいそうに思える映画、というのはそうそうないものですが、まさしくこの映画はそれだと言えます。
以下ネタバレです。ご注意を。
おまけに今回は先日観た原田真人『日本でいちばん長い日』の謎が解けたようです。
私には『日本でいちばん長い日』で役所広司の演じた阿南惟幾が精神分裂で理解できない人物に思えたのですけど本作『CURE』を観ると阿南氏はこれだったのではないかと納得できるように思えました。
もちろん阿南惟幾に催眠術をかけたただひとりの間宮がいたわけではないでしょう。いわば【国家】が間宮であった、ということなのでしょう。それはいちいち【大日本帝国】などという大げさな言葉を引っ張り出してこなくても【日本】というだけで充分だと思います。大と帝国がなくなっても充分日本は間宮だからです。
本作は1997年公開映画で20年以上時間は経過しているのですが、描写される社会の感覚はほとんど今現在と変化がないように思えました。
もしかしたら現在のほうがより共感できるのかもしれません。
そしてその20年間日本ではこれ以上に面白く興味深い映画作品は生まれたのでしょうか。
ほんとうに怖ろしい映画ですが、人間はその恐怖を見つめなければ成長していくことができないのです。
黒沢清監督はその後も面白い映画を作っているとは思いますが(いくつか観ただけですが)これほど深く入り込んだ作品は他にないでしょうし、こんな映画を幾つも作っていたらおかしくなりそうです。
先日観た『クリーピー』はさすがでした。
ですので他の日本映画監督に後を続けて欲しいものですがそういう人物はもう現れないのかもしれません。
それにしても腹が立つのは主人公(役所広司)です。『クリーピー』でもそうですが黒沢監督はイケメンで優しいのだけど本当は最低の男、というキャラを作るのが最高に上手い。
「今度休暇を取れたら旅行に行こう」などという「休暇」は永遠に来ない。
『クリーピー』の優しい夫も「こっちへきたら俺が全力でお前を守る」とか凄い台詞を吐く男でしたね。それが最低だというのに気づかないのです。